物流管理の在り方 ~物流改善を進めるための実践ノウハウ(1)~

船井総研ロジ

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物流コンサルの船井総研ロジ

   
国内最大級の物流コンサルティングファーム。物流・ロジスティクス領域において、戦略・戦術の策定から実行までを一貫してサポートする日本最大級の総合物流コンサルティング企業です。

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物流管理の在り方(物流改革大全 第1章 コロナ禍で変革する物流)|船井総研ロジ株式会社
物流管理部門は、CLOの設置やSCM部門の創設など、全社最適が実行可能な組織体制への転換が求められています。(写真:PIXTA)
物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ|船井総研ロジ株式会社


ロジスティクス最適化のコンサルティング事業を展開する船井総研ロジ株式会社の物流コンサルタント7名で『物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ』(2021年3⽉刊、中央経済社発行)を執筆しました。

運送コスト増大、コロナ禍、DX。ますます需要が高まる物流の効率化。改善のためにまず何をしたらよいのか。物流改善の具体的方策を集約しています。

本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。

物流業界は第三次大競争時代へと突入している

2020年の物流業界時流は、物流DX化へ向けて大改革を実行すべき元年ではありましたが、世界的な感染症コロナウイルスの蔓延により、われわれの取り巻く生活・社会・経済の環境が一変しました。今、物流業界は第三次大競争時代へと突入しています。

第一次は1973年と1979年のオイルショック時代。第二次は1986年からのバブル期そして今2017年以降はドライバー不足時代となり、物流事業者はいかに安定的に荷主へ物流オペレーション(在庫保管・荷役・輸配送)を提供できるかの大競争です。荷主にとっては、物流ディスラプションが起きて長年優位な立場であった取引関係が攻守逆転となっています。

物流管理の在り方

現況は、2017年からの運賃値上げトレンドが一服し、2021年はスタートから荷量低迷に喘いでいます。解決の糸口が見えないドライバー不足問題や、国をあげての働き方改革は、物流事業者にとって経営を揺るがすレベルの課題です。その影響は、当然荷主へ値上げ・条件変更・サービスレベル低下といった看過できない問題として降りかかってきます。 この状況下における物流管理部門の在り方を5つの項目で整理してお伝えします。

①物流戦略策定

転換期における時流を見据えて自社の将来物流をどう計画していくのか。今後の物流戦略を策定する上うえで押さえておくべき物流環境と重要な5つのキーワードは以下の通りです。

  1. ・安定的な物流オペレーション体制の構築
  2. ・省人化を実現する為のIT・ロジスティクスへの資源配分
  3. 物流DXによるデジタル・ロジスティクス改革
  4. ・災害リスクを回避するための物流BCP策定
  5. ・共生共創環境の構築

物流戦略に関連するコンテンツ
・コラム「躍進する荷主企業の物流戦略
・コラム「物流戦略の組み立て方
・セミナーレポート「物流戦略再構築

②オペレーション管理

物流管理を実行するうえで、日々の業務に直結しているのがオペレーション管理です。ここでいうオペレーション管理とは、物流センターの稼働・品質管理を指します。物流センターのオペレーション管理指標とは、入出荷予定計画、入出荷計上完了、ピッキング生産性などを指します。荷主は、委託している物流会社に対し、これらの数値をもって評価することで、主観での判断を避け、センターの品質向上に務めていかなければなりません。

オペレーション、品質管理に関連するコンテンツ
・コラム「物流品質はPPMだけで判断できるのか?
・コラム「商品を破損させてばかりいる物流事業者
・セミナーレポート「物流品質マネジメント

③物流コスト管理

荷主が管理すべき物流コストはその部門の管理領域によって異なります。調達物流費・社内物流・販売物流費の3つに分けることが一般的です。最近の流行りで物流コスト管理に、ERP(Enterprise Resources Planning:統合基幹業務システム)を導入する企業が多くみられます。ERPは、製品によって特長は異なりますが、総じてグローバルな見地での会計管理を効率的に行うことを主眼としたものが多くあります。ERPの導入によって、これまでの粗々の按分方式ではなく、製品ごと、顧客ごと、営業担当者ごとに物流費の詳細が把握可能です。物流管理部門が、これらで把握した各コストを営業部門や生産部門へ共有することで、全社的な物流コストの課題が認識されるようになります。

物流コストに関連するコンテンツ
・コラム「物流コスト削減の視点
・コラム「物流コスト削減手法
・セミナーレポート「物流コストマネジメント

④物流事業者管理

物流事業者を管理するには、取引基準をガイドラインとして定めておく必要があります。取引前、取引中、取引停止理由など、担当者の判断ではなく、ガイドラインに沿って誰でも平等に判断できる仕組みを構築しましょう。特に、業務品質に関しては、SLA(Service Level Agreement)やKPI(重要業績評価指標)などを事前に取り決めておき、毎月・四半期・年間の3軸で評価します。

物流事業者管理・SLA・KPIに関連するコンテンツ
・コラム「物流SLAとは?
・コラム「KPI設定根拠の見直し
・セミナーレポート「物流SLA・PDCA

⑤物流改善活動

荷主と物流事業者の取引関係は、同じベクトルではありません。荷主はコストを下げたいと考え、物流事業者は売上や利益率を高めたいと考えています。この関係は利益相反ともいえ、このことを正しく理解していないと、荷主と物流事業者が一体となった物流改善は進みません。そもそも、物流の業務改善には2種類の性質があります。その性質を踏まえたうえで、物流会社からの改善提案を実行して、得られた成果を分配することが望ましいパートナーシップです。目指すべきベクトルが一致する、本来あるべき契約手法をとらなくてはなりません。

物流改善活動に関連するコンテンツ
・コラム「物流企業との付き合い方
・コラム「LSPは市場の段階に合わせて選択する
・コラム「物流現場との定例会の重要性

物流管理の機能拡大

物流からロジスティクスへの進化

物流は調達物流・社内物流・製品物流に分かれます。わが国では、調達物流は資材・購買部門が、製品物流は物流管理部門が、社内物流は製造工場が管理している企業が多く存在します。そのため、「在庫責任はどこの部門ですか?」と質問すると、「営業部」「製造部」と、このいずれかの回答が返ってくることが大半です。また、営業部や製造部は組織上、横並びの同レベルですが、物流部は本社管理部門内の一段下層に位置していることが多いのが実状です。日本企業も欧米のように、CLO(チーフ・ロジスティクス・オフィサー:最高ロジスティクス責任者)のポストの設置やSCM統括部門の創設など、全社最適が実行可能な組織環境を整えなければなりません。

デジタル・ロジスティクスの将来像

今、日本社会へ急速にデジタル化の波が押し寄せてきています。それは物流業界も例外ではなく、「デジタル・ロジスティクス」が急加速しています。これまで単一の機械でしかなかったマテハン(マテリアル・ハンドリングの略。物流拠点内の原材料、仕掛品、完成品のすべての移動に関わる全般)機器が、物流コアシステムにデジタル連携し、統制されるようになりました。入庫バースには無人のフォークリフトが構え、その先に自動倉庫、AGVなどが並ぶ。10年後の物流センターに、人の姿はないのかもしれません。

自動化に関連するコンテンツ
・コラム「物流ロボットの導入効果
・コラム「物流自動化の必要性
・ダウンロード「物流ロボット導入の基本ステップ

さいごに

『物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ』の出版を記念したセミナーを開催いたします。経済環境の変化が激しい中、経営戦略から物流戦略にどのように落とし込んでいけばいいのか? 自社の物流コスト水準に応じた、物流戦略策定の方向性を解説するセミナーです。

これからの物流戦略(物流改革大全 出版記念セミナー)|船井総研ロジ株式会社

2021年上期の振り返りと下期に向けた注力ポイント、市場相場との比較とコストに影響する物流委託業務の実態から、コスト競争力を高めるためのヒントを船井総研ロジの物流コンサルタントが解説します。

ご興味ある方は、ぜひご参加ください。

物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ

物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ|船井総研ロジ株式会社

運送コスト増大、コロナ禍、DX。ますます需要が高まる物流の効率化。改善のためにまず何をしたらよいのか。物流改善の具体的方策を集約した物流管理者必携の一冊。

当社の現役コンサルタント総勢7名が、昨年夏、通常のコンサルティング業務にに励みながら、約1カ月という短期間で執筆しました。

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