物流SLAとは?~物流SLAの特徴と活用術~

船井総研ロジ

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SLA(サービスレベルアグリーメント)の定義と特徴

SLAとは、顧客と物流企業との間で締結する物流サービスレベルについての合意書である。

顧客(荷主企業)は、物流サービスを提供する物流事業者に対して、委託する物流業務の内容・範囲及び前提条件などを明確にし、サービスレベルに対する要求事項を明文化する。

物流業務とは、入出庫などの荷役業務・在庫管理業務・運送・事務作業などである。

物流SLAは、物流サービスのひとつひとつの項目について、その定義を明らかにすることで、業務開始後のトラブルを防止し、両社のリスクを回避する役割を果たす。

物流SLAの特徴として、各サービスの可視化(数値化)が挙げられる。

例えば、輸入貨物を取り扱う物流センターでは、海上コンテナーの受入能力が評価の対象となる。

荷主企業としては、1日当りの入荷制限は無い方が望ましいが、デバンニング作業を行う物流企業としては、人員計画や作業手順を考慮すると一定の作業工数目安が必要となる。

そこで、SLAのなかに「海上コンテナデバンニング数量」といった項目を設定し、1日当り対応可能な最大本数の取り決めを記述する。

取決め項目の記述例: 海上コンテナデバンニング数量 20F40F共通 5本/日

この取り決めによって、荷主企業はこの数量以上が想定された段階で、前後の日程と併せて着車調整を行なうこととなる。

物流企業の立場では、最大の作業内容が想定可能となるため、人員計画を立て易く、作業平準化が実践される。

一方、物流SLAにはもうひとつ、先進的な特徴がある。

荷主企業と物流企業のパートナーシップ関係が良好な場合、改善によって得られた果実(成果)を、両社でシェアすることが可能となる。

こうしたゲインシェアリングの関係を構築するには、成果配分が適切に実行可能となる契約書が必要となり、その契約書の一部としてSLAを活用する。

ゲインシェアリングのシクミは極めて有効な手法だが、日本における実際の荷主企業と物流企業の取引形態では、実践事例はけっして多くはない。

その理由は明白で、荷主企業と物流企業が、利益相反関係を構成しているためである。

実態としては、ゲインシェアリングの実践・浸透についてはハードルが高いといえよう。

業務委託契約の課題

例えば、配送センターの輸送業務を一括で請け負っている物流企業が、自社で最適な配車分析をしたと仮定する。

分析の結果、1台(1コース)の減便が可能と判明したとしても、自ら荷主企業へ減便提案をする企業は希有な存在であろう。

この検証結果を、そのまま荷主企業へ提案すれば、即減便・減収減益は避けられないからである。

日本における一般的な業務委託契約のもとでは、業務委託者・受託者間に利益相反関係が前提となり、最適な業務計画、改善プランが想定されているにも関わらず実行に移せない、という上述の様なケースが常態化している。

しかしながら、改善によって得られた成果を分配するルールやシクミがあれば、こうしたボトルネックの解決が期待できるのである。

物流企業から改善提案があり、荷主企業も合意のうえそれを実践した結果、コストダウンが実現できた方策については、当事者間で分配をすれば良い。

改善によって得られた成果をシェアするシクミがあれば、両社の関係も一方的な『委託→受託』関係ではなく、パートナーシップへと変革する。

このシクミの実践こそ、物流SLAの最大活用術である。

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