物流DX|今後の課題と企業の動き ~物流改善を進めるための実践ノウハウ(7)~

船井総研ロジ

Pen Iconこの記事の執筆者

船井総研ロジ株式会社

船井総研ロジ株式会社

物流DX・AIの展望
物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ|船井総研ロジ株式会社


ロジスティクス最適化のコンサルティング事業を展開する船井総研ロジ株式会社の物流コンサルタント7名で『物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ』を執筆しました。

運送コスト増大、コロナ禍、DX。ますます需要が高まる物流の効率化。改善のためにまず何をしたらよいのか。物流改善の具体的方策を集約しています。

本稿では、同書から一部を抜粋しお届けします。



1.   DX・AI・IOTとは

(1)  DXとは

 近年、DX(Digital Transformation:デジタル・トランスフォーメーション)という言葉を頻繁に見かけるようになりました。

DXの意味とは、

  • デジタル技術を浸透させることで人々の生活をよりよいものへと変革すること
  • 既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすこと

日本国内では、近年DXに向けた動きが活発になってきています。デジタル技術の進化に伴い、これまでにない新しい製品やサービス、ビジネスモデルを展開する新規参入企業が続々と登場しています。

(2)  AIとは

 DXと一緒に使われる言葉として“AI(Artificial Intelligence:人工知能)”があります。日本国内でAIを説明している多くの専門家や文献があるが、世間での言葉の使われ方は様々です。

AIはDXを実現するために活用されているデジタルテクノロジーの代表格のひとつであると考えられます。

(3)  IoTとは

 DXを推進していく中でAIと同様に重要な要素を有しているひとつとして、IoT(Internet of Things)があります。

IoTとは「モノのインターネット化」と呼ばれ、スマートスピーカーやスマートホーム、自動運転車など、近年急速に実用化が進んでいる先端テクノロジーのことです。言い換えると、モノがインターネットを経由して通信することです。

モノ同士で通信する機能の活用で、物流業界においても注目を集めているのが自動運転車になります。信号機からのデータを自動車が受信することで自動的に速度を落とす、信号側で道路の混雑具合をリアルタイムに察知することで待ち時間を調整し、交通渋滞の緩和につなげるなどの取り組みなどが進められています。

人の判断をはさまずにモノ同士で通信を行って自動的に判断・動作するため、特に自動化という観点で期待を高めている技術であり、AIと連動する点が多いのが特徴です。

(4)  DX・AIの活用

ユーザーの行動データを蓄積できるようになると、ビッグデータの活用が実現します。そのビッグデータをAIが解析することにより、消費者ニーズや行動予測を正確に把握できるようになります。

2.   DX・AI活用で物流業界はこう変わる

 DXを推進する障害として「企業が保有している既存システムのブラックボックス化が進み、膨大なデータを活用できない」といった現象が物流業界でも起きています。物流は製品が入荷してから出荷するまで一連のモノの流れです。モノの流れとともに、情報の流れも連動して起きており、その情報の流れがアナログ的に生じている現場もいまだに数多くあります。物流業界においては、アナログ的な管理が属人化しており、システムに反映できていないといったことが悩みの種でした。その解決策としてDX・AI・IoTの活用が考えられたのです。

現在進行している物流業界でのDX・AIの活用法は下記のとおりです。

  • 物流事務業務の自動化
  • 棚卸業務の簡素化
  • アプリで行う求貨求車
  • 倉庫のスポット利用
  • 精緻な入荷予定の連携による待機時間の削減
  • 需要予測に応じた人員および配車計画
  • 自動運転車・ドローンの応用した活用方法
  • AIを保持したマテハン

 すでに導入されて成果を上げている活用法もあります。一方で法改定が必要な活用法もあるため、今後は管轄する行政機関と一体となって考えていかなければならない問題です。とはいえ、物流業界においてDX・AIの活用が非常に有益であるということは言うまでもありません。なぜなら、物流業界ではアナログかつ属人化している業務が莫大にあり、その業務の見直しをせず今まで放置してきたためです。

①   物流事務業務の自動化

 DXの導入によりまず初めに効果を得られるのは、物流事務業務の自動化でしょう。物流業界に限らず、事務業務にはアナログ的な業務が多いのが日本での商習慣です。

その事務業務の効率化を可能としたのが、RPA(Robotic Process Automation)です。今まで人で行っていた事務業務をプログラミングされた仕組みで自動的に行うため、事務工数が大幅に削減できるのです。

②   棚卸管理の効率化

 在庫管理を効率化できる方法として、RFID(Radio Frequency Identification)による管理があります。RFIDとは電波を用いてRFタグのデータを非接触で読み取るシステムのことです。従来のアナログな在庫管理では業務工数が多く、棚卸作業に数日かかることがあります。RFIDを物品につけてスキャナで読み取ることによって、正確な情報を収集し、業務効率を向上することが可能となります。

③   アプリで行う求貨求車

 アプリで行う求貨求車もデジタル化が生んだサービスのひとつでしょう。過去から求貨求車の仕組みは存在していました。しかし、アプリで行う求貨求車は、荷主と運送会社が第三者を仲介することなく直接つながっています。求貨求車専用の掲示板も、運送会社と荷主が直接やり取りを行えるのだが、それともまた少し異なります。アプリではトラックの運転手自身が、貨物を運んで欲しい荷主を簡単に探せるような設計が施されています。つまりはUberのトラック版なのです。

④   倉庫のスポット利用

 物流施設・倉庫などの空きスペースを所有している企業と、倉庫を借りたい企業とのマッチングサービスも物流業界のデジタル化されたものです。物流事業者は、閑散期には余剰スペースの貸出先の確保、繁忙期には短期で借りられるスペース確保が課題です。従来、倉庫の賃貸借契約は契約期間が3~5年程度と長い期間が一般的でした。そのため、短期で必要なスペース分の空きスペースを借りたいという荷主のニーズに応えられずにいました。その契約概念を覆し、借りたいときに借りたい期間だけ提供する情報プラットフォームが構築されたのです。

⑤   精緻な入荷予定の連携による待機時間の削減

 物流倉庫に到着したトラックが、バース(荷物の積卸しのためにトラックを停車する場所)が空くのを待つ待機時間は、ドライバーや運送会社だけではなく、物流倉庫、近隣住民にとっても大きな負担になっていました。その問題を解決するために、予約受付システム、すなわちバース管理システムの導入が進められたのです。

 これまでは、トラックが到着した順で待機をするのが一般的であったが、事前に予約を行うことで計画的なバース誘導を行うことができるようになるのです。そのため構内作業の効率化、結果として待機時間の削減を実現が可能となるのです。また、荷量や予約企業を事前に登録することで、自動的に予約枠をバースに割り当てることが可能なシステムもあります。

⑥   需要予測に応じた人員配置および配車業務

 需要予測とは会社の商品がどれくらい売れるかを、さまざまな手法で予測することを指します。その目的は、企業収益の最大化です。

需要予測の精度が高ければ、販売機会損失による売上減少を回避し、過剰在庫による管理コストの増大を防ぐことが可能となります。

⑦   自動運転・ドローンの応用活用

 自動運転車とドローン利用に関して、わが国において導入障壁は依然として高い状態です。道路交通法や航空法といった法的制限はもちろんのこと、安全性の面でもまだ試験的な段階であるのが実態です。そのような状況を危惧してか、最近では配送と異なった視点で、自動運転車とドローンの活用方法について検討されています。

 自動運転車については道路交通法の問題があるため、公道ではなく、工場内の工程間搬送や敷地内輸送での利用法が進められています。ドローンに関しては、配送ではなく、倉庫内の棚卸や在庫管理に活用するといった方法が考えられています。倉庫敷地内や倉庫構内の限定的な範囲内では、道路交通法や航空法に違反することはほぼありません。

この2つの機器は今まで配送で利用していくことを念頭におかれていました。しかし、活用方法を見直すことで、物流での導入領域に広がりを見せています。

⑧   AIを保持したマテハン

 従来のマテハンは、人が作業指示を出し、それに順じて動いていました。DX・AIの伸長により、マテハン自体にその機能を包含させ、指示をせずとも効率化する機器が出てきています。

 例えば、ロケーションの最適化は、出荷頻度や物量の分析を人やWMSで行ってきました。商品別にABC分析(集荷物量または出荷頻度の分析)をすることで、倉庫作業に適したロケーション設定をしてきたのです。それを、出荷頻度を分析し、独自の判断で最適なロケーション配置を行うマテハンが出てきているのです。  倉庫作業の自動化は、指示をせずともマテハン自身が最適化することに変化しています。

さいごに

『物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ』の出版を記念したセミナーを開催いたします。経済環境の変化が激しい中、経営戦略から物流戦略にどのように落とし込んでいけばいいのか? 自社の物流コスト水準に応じた、物流戦略策定の方向性を解説するセミナーです。

これからの物流戦略(物流改革大全 出版記念セミナー)|船井総研ロジ株式会社

2021年上期の振り返りと下期に向けた注力ポイント、市場相場との比較とコストに影響する物流委託業務の実態から、コスト競争力を高めるためのヒントを船井総研ロジの物流コンサルタントが解説します。

ご興味ある方は、ぜひご参加ください。

物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ

物流改革大全 改善を進めるための実践ノウハウ|船井総研ロジ株式会社

運送コスト増大、コロナ禍、DX。ますます需要が高まる物流の効率化。改善のためにまず何をしたらよいのか。物流改善の具体的方策を集約した物流管理者必携の一冊。

当社の現役コンサルタント総勢7名が、昨年夏、通常のコンサルティング業務にに励みながら、約1カ月という短期間で執筆しました。

※書籍紹介ページへジャンプします

船井総研ロジ

Pen Iconこの記事の執筆者

船井総研ロジ株式会社

船井総研ロジ株式会社

その他の記事を読むArrow Icon

ページの先頭へ