第287回 2016年は“丙申(ひのえさる)”の年(5)~評価基準策定その2~

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

3/30に発表されたSGホールディングス及び佐川急便と日立物流の資本業務提携は、実質にはSGホールディングスグループによる日立物流へのM&A(買収案件)となります。

国内路線・宅配便に強みのある佐川急便としては、国際物流及び3PL案件や倉庫運営に強みのある日立物流の買収は、シナジー最大化を狙えるM&Aディールとなりそうです。

とりわけ、物流情報システムに強い日立物流(子会社に日立物流ソフトウェアを持つ)は、SGホールディングスグループを国内首位に押し上げる可能性を十分に見込めるM&Aです。

将来的な両社の統合は、大変魅力的な期待・シナジーと、潜在的にあるデメリットが交差した極めて面白いディールです。

今後、物流業界の再編は加速度的に増加し、まさに生き残りをかけた業界大再編が想像されます。

暫くは市場の動きに目が離せないですね。

さて、話しを本筋に戻します。

今号は物流委託先(アウトソーシング先)に対する【定性評価モデル】についての考察です。

荷主企業の物流部は、アウトソーシング先に対する「評価基準」を保有する必要があります。

なぜ、評価基準が必要なのかといいますと、
“だいたい良くやっている” 
“可も無く不可も無い” 
“提案が何もなくて物足りない”
など、荷主企業向けのアンケートをする度に、 こういったコメントを目にしてきました。

これらのコメントは、担当者や関係者の主観的な意見であり、全社共通の評価ではありません。

コストに関しては、数値として表れていますので、高いか安いかは客観的に評価が可能です。

しかし、提供されるサービスレベルについては物流部も営業部も経営企画部も、何か共通の評価軸が無いことには、先程の通りその一人一人の主観的意見にしか過ぎません。

そこで、アウトソーシング先を可能な限り客観的に評価するツールが【定性評価モデル】となります。

物流委託先を評価するには、以下5項目が一般的な評価内容となります。

1.物流事務対応力
2.現場オペレーション力
3.物流IT力
4.配送及び配送管理力
5.改善実行力

1.物流事務対応力とは、事務作業に対する評価項目です。

例えば、

・電話応対(3秒以内に出る、話し方などのマナー、取次の明確さなど
・問い合わせレスポンス(問い合わせに対する回答及び回答時間など)
・各種報告納期(入荷計上、出荷確定、問番伝送、不備報告など)
・事務処理能力(ルール徹底、各種書類作成、対応速度など)
・ファイリング(各種書類のファイリング、管理、取り出しなど)

これらの項目を4〜5段階で評価するようにします。

「1.大変良い」「2.良い」「3.やや不満」「4.不満」こうすると、それぞれ立場の違う方でも 一定の評価軸に基づいた評価が可能となりますので、全体像を総括して「だいたい良くやっている」とはなりません。

「現場オペレーションは全く問題ないが、 事務作業に関してやや問題がある」
こうなると、何が問題であるか明確になります。

課題や問題を明確にするのが、【定性評価モデル】の利点の一つでもあります。

次号は、定性評価モデルの”現場オペレーション力”について、事例を公開します。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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