災害リスクを回避するための物流BCP策定|プロが解説!物流改善の実践手法

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

2023年は、関東大震災から100年となる節目の年になります。日本は、地形や地質、気象などの自然的条件から、台風、豪雨、豪雪、洪水、土石流、地震、津波、火山噴火等の災害が発生しやすい「災害大国」と言われており、「防災の日」である9月1日には、毎年全国各地で防災の取り組みが続けられています。

今回は、災害発生時における物流オペレーションの課題とその対策をお伝えします。

商品供給の命綱である物流BCPは「いつ来るかわからない」から、「いつ何が来てもおかしくない」という考えへ

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災害大国ニッポンと物流BCP

企業にとって、物流オペレーションは決して止めることはできません。災害発生時、同業他社も含めてすべての供給が止まる場合を除いて、自社だけの拠点や輸送網が寸断されるとシェアを奪われ、競争に負けてしまいます。

世界の震源分布|物流BCP|Funai物流オープンカレッジ2022年4月第4講座

引用元:文部科学省研究開発局地震・防災研究課「全国地震予測地図2020年版」

わが国は災害大国であり、地震・台風などの自然災害、今回の新型コロナウイルス感染症・鳥インフルエンザなど、物流オペレーションを阻害するリスクは極めて高い地域であることを認識しておく必要があります。

そもそもBCPとは?~ BCPの定義 ~

BCPの定義については、内閣府や中小企業庁から公示されています。この図表では、災害発生後、何日・何時間で復旧させられるか、緊急時対応の許容期間やその度合い(サービスレベル)なども事前に想定しておく必要があることが説明されています。

災害リスクを回避するための物流BCP策定|プロが解説!物流改善の実践手法

また、内閣府はBCPについて、「災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万が一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断にともなう顧客取引の総合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略」と明確に企業戦略の一つであると位置づけています。

内閣府が公示しているBCPの定義

災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する(Business Continuity Plan: BCP)。ここでいう計画とは、単なる計画書の意味ではなく、マネジメント全般を含むニュアンスで用いられている。マネジメントを強調する場合は、BCM(Business Continuity Management)とする場合もある。

引用元 https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/keizoku/

中小企業庁が公示しているBCPの定義

企業が自然災害、大火災、テロ攻撃等の緊急事態に遭遇した場合において、事業資産の損害を最小限にとどめつつ、中核となる事業の継続あるいは早期復旧を可能とするために、平常時に行うべき活動や緊急時における事業継続のための方法、手段等を取り決めておく計画をいう。

引用元 https://www.chusho.meti.go.jp/bcp/contents/level_c/bcpgl_01_1.html

物流BCPの考え方

物流オペレーションにおける災害時のダメージは、物流センターの機能停止・配送体制の崩壊・商品調達不能など、少し考えるだけで企業経営を脅かすレベルと言えます。

物流BCPの重要性|物流BCP|Funai物流オープンカレッジ2022年4月第4講座

物流BCPの考え方|Funai物流オープンカレッジ2022年4月第4講座 抜粋資料

われわれは自然災害を止めることはできませんが、発生後速やかに復旧させる想定をすることは可能です。この想定と対策が企業力そのものを評価する指標ともなり得ます。

物流BCPは事前・発生時・復旧と3段階で計画を練ることをお勧めします。どれだけ緻密に想定し対策計画を立案できるかがポイントとなります。

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物流センターの被災を想定した物流BCPの事例

物流BCPは、保管商品の保全、荷役作業場所の確保、要員の確保、輸送網の確保、情報システム及びネットワークの継続運用と、5項目を区分して想定します。そして、それら5項目を細分化して、何をやるべきかを明確にしておく必要があります。

災害リスクを回避するための物流BCP策定|プロが解説!物流改善の実践手法


たとえば、自社の物流センターが被災し保管商品が棄損した場合は在庫品からの出荷ができなくなります。その場合、サプライヤーからの直送なのか、別センターから出荷するのか、顧客へ復旧するまで供給を止めるのかなどの対策を営業部門も交えて協議しておくことです。

さらに、ある地域に災害が発生したが自社の在庫物流センターは何ら影響を受けなかった場合でも、サプライヤーが被災し商品の調達停止や顧客の物流センターや店舗などが被災し、出荷停止になるなどの事態も考えられます。

その場合、自社の物流センターの在庫があふれてしまうことが想定されます。物流センターはある一定の基準保管量を上回ると、構内の安全性や生産性が著しく低下します。保管棚に入りきれない商品が通路や荷受スペースへ置かれ、人とフォークリフトが交差し、置き場所も不明確となり、安全も担保されず大混乱となることがありえます。

物流BCPでは、自社の物流センターに加えて、サプライヤー及び顧客の物流機能が停止した場合も想定し対策を計画しておくとで物流リスクは最小化します。

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