第96回 物流業界におけるコンプライアンス・コスト(6)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

品質管理コスト その1

今回のテーマである「品質管理コスト」は、実は物流業界において最も欠けているコンプライアンス・コストとも言えます。

コンプライアンス・コストの定義とは、社内外における法規制を遵守するための費用となります。

社外のコンプライアンス遵守には明確な法規制がありますが、物流サービスにおいて社内の規制を明確に設定しているケースは稀であり、物流事業会社においても製造業が品質指針として方針化している「Quality Policy」(品質基準/品質方針)のような具体的な品質レベルに関する類は極めて少ないものと思われます。

物流サービスにおける「品質基準」は、品質保証を厳格に管理する上では不可欠なものと考えられますが、無形産業である物流サービスは、品質の可視化自体がとても不明瞭であり、「Quality Policy」 を守りきれない脆弱な産業構造でもあります。

物流サービスにおいて品質管理コストに該当するものは、その品質劣化を防止するものは少なく、事後の管理方法として「貨物追跡システム」などがあります。

これは、特積事業会社などが主に導入していますが、荷物に個別認識番号を貼付し、移動毎に履歴をデータとして残すシクミであり、何らかの不具合が発生した場合に、早期のリカバリー対応が可能となる支援ツール的な役割です。

また、デジタコ(デジタルタコグラフ)なども安全運行と品質管理の両面をカバーするシステムであり、その導入は安全管理におけるコンプライアンス・コストとなります。

しかし、品質そのものが可視化されていない現状では、それを管理する方法も不明快であり荷主と物流企業間での目線(双方が目指している精度)も合致していない可能性が高いと思われます。

そこで、物流業界において「品質基準」を遵守するため管理手法が『SLA』(サービス・レベル・アグリーメント)の導入と思われます。

SLAを物流契約の一部として導入し、その内容を管理するコストがまさに物流における「品質管理コスト」ではないでしょうか。

次号は、SLAの再認識を含めてコンプライアンス・コストとの関わりを再考します。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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