第270回 変貌する物流戦略その16

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

「荷主企業の取るべき施策」(10)

業務委託先である物流企業さんへ「何か提案をしてください!」と皆様は
簡単に要求していることはありませんか?

また、その要求に対して何ら提案が無いことを、腹立たしく感じていることではないでしょうか?

しかし、荷主企業と物流企業は「利益相反関係」であることをまず認識しなければなりません。

物流企業からみて、自社の売上や利益を損なうようなことを、自ら積極的に提案することはあまり期待できません。

商品保管や荷役、輸配送などを総じて物流オペレーションと言いますが、物流オペレーションを外部へ委託している物流アウトソーシングの場合、基本的な取引契約は「業務委託契約」となります。

業務委託契約の場合、荷主企業と言えども物流会社のオペレーション現場へ自由に出入りすることは出来ません。

例えば、自社の商品を確認する場合でも、勝手に現場倉庫へ出向いてピッキング棚や在庫棚から商品を取り出すことは禁止されています。

この場合、物流会社へ必要な商品名を通知したうで所定のスペースを借り、そこで確認業務を行います。

倉庫内においても自由に出入りすることは禁じられております。

安全の確保された見学通路もしくは物流センタースタッフのエスコートが必要となります。

つまり物流アウトソーシングとは、それくらいに荷主企業の自由を奪ってしまうものなのです。

このような環境の中でも、荷主企業と物流企業が共通の目的を持って取り組むことが出来れば、物流改善は実行可能です。

そのためには、荷主企業としての改善項目、物流会社としての改善項目を、それぞれ明確にすることです。

荷主と物流会社の間で、役割と責任を明文化し可視化することです。

一番わかりやす方法は、業務の流れを紙一枚のフロー図にすることです。

そのフロー図を基に、両社の役割・責任が明確になり、改善ポイントの抽出へと
進めることが可能となります。

改善ポイントは、何らかの制約条件となっている工程やボトルネック工程を数値として可視化することです。

このとき重要なのは、どれだけ客観的に物事を捉える視点があるか?ということです。

特に荷主企業は、販売や生産・調達部門との調整が必ず発生します。

この、他部門との調整を積極的に進めることが改善の第一歩となるのです。

次回は、「物言う物流部とは?」を事例を用いてお伝えします。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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