第163回 ロジスティクスとインセンティブ(10)~ゲインシェアの導入事例3~

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

■ゲインシェア・オプションの事例

前号の引き続き・・・

「ゲインシェア体制構築タスク」は、荷主企業A社の物流改革プロジェクトを成功させる為の最大クライマックス・ステージでとなります。

第2phaseの「新ロジスティクス体制構築タスク」では、荷主企業A社と3PL事業者の分業領域が合意形成され、双方の責任範囲が明文化されました。

『ゲインシェア』の項目を決定する上で、最初にPJメンバーが行ったことはSAL(サービス・レベル・アグリーメント)の作成でした。分業の合意形成が得られたうえで、今後解決を必要とする課題についての話し合いが行われました。

【顕在化された課題】

(1)入荷予定データと実入荷数の不一致について
(2)特売等による最大入荷数量の上限設定について
(3)在庫差異率及び差異金額について
(4)入庫済欠品率について
(5)誤出荷率について
(6)注残引き当ての処理手順について
(7)受注締切時間外の出荷について

上記7点の課題について、両社間で数値による取り決めがなされました。

例えば(1)については、入荷予定データに対して日々入荷される実際の商品数量に相違が多く、物流センターでは不明品を調べる事によるムダが度々発生していました。

この問題は、卸売業であるA社の発注に対してサプライヤーとなる各メーカーの納品体制に問題がありました。

物流センターにおけるムダな作業は、配置人員によるムダとなり即ちコストとなって荷主へ跳ね返ってきます。

それぞれの課題に対して問題解決を図る手法として、SLAの締結が実行されました。

SLAとは、荷主と3PL事業者間にて実行する物流サービスの内容・範囲及び前提条件などを明確にし、サービスレベルに対する要求事項を可視化(数値化)したものです。

また定義した内容が確実に実行されるためのルールを荷主と3PL事業者間で合意書として明文化したものとなります。

このSLAに書かれた項目については、改善された成果をインセンティブとして3PL事業者へ配当する『ゲインシェア』の設定がなされていました。

次号に続く・・・。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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