輸配送の生産性

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西村 和洋

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、小売チェーン店、通販企業などの荷主企業の物流改善(委託先企業選定、物流業務設計)、コストダウン、物流拠点戦略の策定などに従事し、特に、IT(情報システムの戦略、設計、構築など)を得意とする。ロジスティクスのコストダウンと品質アップの実現を、物流フロー改善・業務改善・情報システム改善等の多方面の視点から提案している。​​

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「サービス産業の生産性(内閣府:平成26年4月※)」によると、製造業と非製造業の全要素生産性(TFP)上昇率を1980年代、1990年代、2000年代毎に調査した結果、非製造業では1980年代こそTFP上昇率はプラスとなりましたが、1990年代、2000年代はマイナスとなりました。

同期間のすべてで製造業のTFP上昇率が非製造業のそれを上回る結果となっており、非製造業の生産性向上が進んでいないことがうかがわれます。

特に非製造業のうち道路運送業では1980年代、1990年代、2000年代のすべてでマイナスとなっており、当該資料中では、道路運送業および教育(民間・非営利)のみが1980年代、1990年代、2000年代のすべてでマイナスになっています。

いずれも場所帰属性が高い(顧客が周辺に限られる)、労働生産性が高めにくい(大きな教室(荷室)が用意できない)などの共通点があるように思います。

教育産業では通信衛星を用いた授業配信、最近ではスマホによる動画配信など場所帰属性からの解放および労働生産性の改善につながる取り組みが盛んですが、道路運送業ではインターネットを用いた求貨求車など、マッチング機会の増加にとどまっているように思います。

全要素生産性(TFP)とは生産性を算出する方法の一つで、労働生産性(労働力を投入量として産出量との比率を見る)、資本生産性(機械・設備などの資本を投入量として産出量との比率を見る)等を含めたすべての投入量と産出量の比率を見るものになります。

このように見ると確かに道路運送業は労働生産性をみてもトラック1台ドライバー1名のくくりで考えると増トン車の普及があったにせよ1名のドライバーが輸送できる物量が画期的に増えたわけでもありませんし、高性能になったとはいえトラックはトラックであり資本生産性も大きく向上する要素はなかったといえます。

一方、海上輸送の方はどうでしょうか。

コンテナの発明とコンテナ荷役に特化した港湾設備の整備による荷役合理化(資本生産性の向上)、コンテナ船の大型化に対応した港の整備や自動化・電子化による乗組員数の削減(労働生産性の向上)など、生産性向上が図られてきたことがわかります。

海上輸送を参考に、道路運送業(広い意味で国内物流)を改善することはできないでしょうか。

■コンテナの利用

道路運送ではばら積みを除くとパレットもしくはロールボックスパレット(JITBOXチャーター便など)による輸送が一般的かと思います。

いずれも水濡れに弱い(雨天時など)、自動仕分け機を利用しづらい(パレットは荷崩れ、ロールボックスパレットは人での運用が前提)などのデメリットがあります。

海上コンテナ同様規格化されたサイズのコンテナ(容積は3~4立米程度)を検討するのはどうでしょうか。

■コンテナ船

幹線輸送は鉄道、内航船なども併用しつつ、陸上輸送はヘッドとシャーシを利用して長距離運行を削減し、ダブル連結でドライバー1名あたりの輸送量を増やします。

■港

24時間運営の幹線持ち込み拠点を整備し、自動でコンテナ単位の方面別仕分けを行い、方面別の車両等に積み込む、および荷卸しとエリア共同配送便への積み込みを行います。

拠点のインフラ整備は複数企業が共同で行う必要があり、他社との差別化をどのようにするかなどの課題もありますが、各社の個別最適ではなく全体最適を考える時期に来ているとも感じます。

BtoC物流のラストワンマイル議論が盛んですが、BtoB物流の合理化も将来を見据えて検討していく必要があると思います。

(※)http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/future/wg1/0418/shiryou_01.pdf

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西村 和洋

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