時流を見据えた物流戦略の構築|プロが解説!物流改善の実践手法

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

【無料DL】物流業界の最重要課題への取組み状況 調査レポート

前号に続けて、物流マネジネントの在り方をお伝えします。
【前回の記事】物流管理による業界習慣の大転換

今後の戦略を策定するうえでもっとも重要なことは、物流の安定と体制の維持となります。人手不足の波に飲み込まれることのない、年間を通じて日々の物流オペレーションを円滑に運営できる体制の構築を進めましょう。

物流戦略構築のためのメガ・キーワード

転換期における時流を見据えて、自社の将来物流をどう計画していけばよいでしょうか。そのメガ・キーワードをご紹介いたします。図表1をご参照ください。

〈図表1〉

理想とする物流センター雇用形態

どこの企業の物流にも、年間を通じて繁忙期と閑散期があります。繁忙期は人手不足となり、閑散期は人が余ってしまいます。こうした繁忙期対策として物流事業者や自社物流を手掛けている荷主も、派遣社員を活用します。図表2をご覧ください。

〈図表2: 船井総研ロジ作成〉

たとえば、100人規模の物流センターの場合、運営する社員は5名程度が理想です。非正社員80人から85人。さらに繁忙期対策としてプラス10人~のイメージです。この要員構造(正社員比率5%)で物流センターが回れば、かなり競争優位なローコスト・オペレーションが実現できます。

しかし、労働人口減少の中、派遣社員が確保しづらくなり、非正社員であるパート従業員の確保も困難となってきました。路線会社や宅配会社の仕分けスタッフとして外国人労働者の比率が高まっているようですが、現状の円安環境が続けば、外国人出稼ぎ労働者の日本離れが起き始め、業界内での人の取り合いが発生し、今よりも深刻な労働者不足となってしまいます。
※ベトナム人ワーカーの方が国内に約40万人いる中で、物流業界で従事している比率は約30%と言われる(12万人)

この状況だと、正社員比率を上げる施策が取られますが、それだとコストが上昇します。多くの物流オペレーションを担っている現場がこの問題に直面します。また輸配送面に関しても、2024年問題を想定すると中長期の幹線便や地場を含めたスポット便の確保がかなり難しくなります。

路線便もコロナが落ち着くと同時に年々運賃値上げを実行するとみています。

省人化を実行するためのIT・ロジスティクスへの資源配分

安定期な物流オペレーションを実現するためには、ITの活用と、人が従事してきた作業をロボティクス化する必要があります。今や、物流センター内のIoT化は日々進歩しています。

余談ですが、すでに中国では完全無人の物流センターが稼働していそうです。
省人化のためのIT投資やロボット投資を検討するうえで、はじめにやらなければならないことは、“業務標準化”です。現場であれ、事務作業であれ業務は標準化されてこそITやロボットへの代替が可能となります。図表3は、IT化、ロボティクス化への取り組みステップです。

〈図表3〉

業務は作業であり、作業は本質的にはすべて標準化が可能です。省人化を進めるには、特定のベテラン社員とか一部のノウハウ取得者だけしか対応できない業務はすべて改善し排除することから始めます。この特定者しか対応できないことをわれわれは“ブラックボックス”と表現します。

ブラックボックスの排除ができずしてITやロボットの導入は成功しないでしょう。

大半の物流センターにはこのブラックボックスが多数存在します。当社が現場改善コンサルティングに入ると、まずブラックボックスを見つけ、排除することで業務標準化が進み、生産性が高まります。

ブラックボックスの有無が物流センターを評価するうえで重要なキーファクターとなります。

次号へ続く…

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