物流管理による業界習慣の大転換|プロが解説!物流改善の実践手法

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

【無料DL】物流業界の最重要課題への取組み状況 調査レポート

前号に続けて、物流マネジネントの在り方をお伝えします。
【前回の記事】物流管理と輸配送オペレーション

いまや人手不足は社会的レベルの事象です。
なかでもドライバー職の不人気は群を抜いた状態であり、
2019年度(新型コロナウイルス発生前)の有効求人倍率は月によって3倍を上回っていました。
では、なぜドライバー職が不人気となったのでしょうか?
令和では不人気職業となってしまったドライバー職について考察します。

なぜドライバー不足なのか

その理由はいくつか挙げられますが、最たるものは「賃金の安さ」「拘束時間の長さ」ではないでしょうか。

2019年度の全産業平均賃金は501万円でしたが、トラックドライバーの平均賃金は大型トラックドライバーで456万円、中小型トラックドライバーでは419万円でした。この平均賃金には、毎日自宅へ戻れない(車中泊)中長距離ドライバーも含まれてこの水準です。

また、拘束時間は早朝から日没後に至ることも少なくありません。

変化する仕事の価値観

現代の若者は、稼ぐ(お金を多く得る)よりもプライベートと時間価値(余裕時間)を求めています。女性の社会進出拡大により、夫婦ダブルワークが定着してきた現代は、家族の総収入で家計を回しています。そのため拘束時間が長く、休日も少ないドライバー職はあまり魅力を感じられなくなってしまいました。さらに多様化した職業選択肢も不利な状況を招いています。

まさにワーク・ライフ・バランスの実現希求なのでしょう。

朝早くても毎日自宅へ戻れる、定期的に海外旅行へも行ける、家族や友人との時間を共有できる、個人の趣味に時間を費やすことができるなどといったライフスタイルを望むでしょう。自身のために、会社のためにといった“滅私奉公”も“社畜”もいまや死語の世界であり、昔やっていた有名な栄養ドリンクのCM「24時間戦えますか~♪」などは、令和の若者には全く意味が通じない社会となりました。

デジタルネイティブ世代が今後の社会の中心となろうとしてますが、その世代にどうも不人気なのがドライバー職のようです。(図表1)

(図表1:出展 日本FP協会様)

世間では、女性の登用と活躍が企業の成長ドライバーとなっています。
トラック業界もトラガール(トラック・ガール)と称して関連する行政機関や協会団体が推奨していますが、その比率は努力に反して高まっていないようです。

東の低賃金、西の手積み手降し

図表2は、筆者が作成したドライバー不人気番付表です。トラックドライバーには至極当たり前となっています手積み手降し作業(自主荷役)もその不人気番付の西横綱なのです。

(図表2)

当社では物流会社の経営コンサルティングも行っていますが、ご支援先の運送会社から以下のような話をよく耳にします。

募集広告を出して、ようやく電話がかかってきたと思うと、求職者からの第一声が「おたくでは、手積みはありますか?」とのこと。人事担当者が「いや・・・まあ、多少はありますよ」と答えると、とたんに“ツー”・・・。問答無用で切られてしまうそうです。

2019年11月に国土交通省が運送約款を公示しました。そこへは、付帯作業の別料金化と待機時間の有料化が記載されています。これまで、ドライバーの積み降ろしサポート(手作業)や荷降ろし時のフォークリフト操作は業界では慣例化していました。

ここにメスが入りました。

基幹産業たる物流が令和で迎える大転換とは

フォークリフト所有者の所属従業員でない者は原則フォークリフトには乗らないようにするべきです。人身事故や物損事故が発生した場合の処理や責任区分がグレーであり間違いなく揉めてしまいます。また、トラック運送においては、車上渡しが基本ルールなのです。更に、一定時間以上待たせることは有料化されます。

行政はこういった悪しき業界習慣と低賃金が相まってドライバー不足となった現況を変えるため、規制によってディスラプトしようとしているものと推測します。

物流はインフラ産業であり国民生活には決して欠かせない基幹産業なのです。

令和となった今、この基幹産業たる物流が大転換を迎えようとしています。

次号へ続く…

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