第161回 ロジスティクスとインセンティブ(8)~ゲインシェアの導入事例1~

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

今後の荷主企業が取るべき施策として、3PL事業者との間で「ゲインシェア」タイプの契約が新しい潮流となることが予想されます。

それに伴った物流業務委託契約は、以下4通りの契約が双方間で合意形成されなくてはなりません。

■ゲインシェア・オプション付物流業務委託の契約書類

(1)基本契約書
(2)料金に関する覚書
(3)SLA(サービス・レベル・アグリーメント)
(4)ゲインシェアに関する覚書

では具体的にどのような内容に関して「ゲインシェア・オプション」が成立するかを幾つかの事例を基に解説します。

■ゲインシェア・オプションの事例

(1)卸売業A社と3PL事業者の例

・A社は食品卸売業として各営業所に倉庫を保有しています。倉庫管理を含めて 荷役、配送を3PL事業者へアウトソーシングすることになりましたが、新しい取組みとして、3PL事業者の提案によって「ゲインシェア・オプション」を導入することになりました。

キックオフ前に両社で検討し、複数の改善重視項目について協議を重ね、合意形成が得られた2つの項目について導入することとなりました。

①在庫金額差異についてのボーダー設定
②総配送運賃率についてのボーダー設定

①の「在庫金額差異」に関しては、従来A社が期末棚卸で発生した差異の過去5年間分を参考に、上限と下限を設定し「インセンティブとペナルティー」について両社で合意形成されたものです。

②の「総配送運賃率」に関しては、A社の「売上対出荷運賃率」の削減を目標として半期毎に数値検証を行い、改善効果に対しての「ゲインシェア」を明文化したものです。

一般的に「努力目標」や「チャレンジプラン」といったコミットメントの無い目標レベルの提案や掲示は多くはないですが存在しています。

しかし、効果測定を明確にしてその検証後に成果を配分(インセンティブの場合は配布)する「ゲインシェア・オプション」の導入は、今後の新しい3PLモデルとなります。

この契約によって、荷主企業・3PL事業者の両社にとって極めて健全なパートナーシップ構築と成りえます。

次回はこの事例をより深く考察してみるとにします。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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