第143回 荷主企業のリスク対策プログラム(8)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

荷主企業の物流アウトソーシングにおける管理リスクには、以下の6項目が想定されます<前号より続き>。

<1>品質低下によるもの 
<2>コストアップによるもの 
<3>流通形態の変化によるもの 
<4>商品形状の変化によるもの
<5>物量の増減変化によるもの
<6>委託先の突発的な取引停止によるもの

<5>物量の増減の化によるリスク

2008年秋のリーマンショック以降、深くその影響を受けた日本の実態経済 は、自動車・電機・機械などの主要輸出産業が急減速し、過去に例を見ない短期間での生産調整を行いました。

最も顕著に影響が出た国際航空輸送は、2008年11月度から取扱数量が急減少し、景気の趨勢を如実に物語っています。

港湾地区にある一部の営業倉庫では、輸出待機による貨物の停滞が続き、行き場を失った商品の山になっているそうです。荷役作業の発生しない「満庫」現象は、営業倉庫業の体力を確実に侵食しています。

現況のような、外部要因による物量の変化(今回は激減)はさることながら、内部要因による物量の増減も、企業活動を営むうえでは想定がありえる現象です。

未曾有なレベルから微少に至るまで、その大きさも含めて物流変化によるリスクの影響を想定し、可視化によるリスクの項目化やレベル化を事前に図ることが肝要です。

既存の物流インフラについて、以下の項目でリスク管理を行います。

(1)倉庫・配送センターのキャパシティ
(2)輸配送能力
(3)情報システムの対応力

それぞれの項目は、物量が増加時における許容能力についての上限と、減少時における維持力についての下限を想定します。

例えば、主要倉庫と補完倉庫などに区分設定を行ったり、主要輸送モードと伸縮輸送モードのように、安定した稼動に基づいた基幹物流インフラと、変化による対応の為のサブインフラを明確に設定します。

償却をともなう物流資産投資や、リース等を用いてその会計年度に処理できない物流インフラなどは、十分に現状把握を行い、その企業の基礎体力に基づいたレベルであることが「不確実性の回避活動」の第一歩となります。

基礎体力を正しく設定できれば、それを上回っても下回っても「リスク対策プログラム」が発動されるトリガー(きっかけ)となり、対応に遺漏なく回避の手順に進めます。

この項における最重要ポイントは、「物流の基礎体力を正しく把握する」ことであります。

次号に続く。 

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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