グローバル・スコープ 2020.07.29

コロナ禍の中国物流

2020年4月17日、中国の国家統計局が発表した国内総生産(2020年1~3月期)は、物価上昇の影響を除いた実質成長率で前年同期比マイナス6.8%を記録しました。四半期ごとの成長率がマイナスになるのは、統計値の公表を開始した1992年以降初めてで、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が中国経済に大きな影響を与えたことが読み取れます。

コロナが中国物流業界に与えた影響

新型コロナウイルス感染症は、短期的に見ると、中国の物流企業の収益に大きな影響を与えました。2003年のSARS流行時、中国経済は3カ月ほど景気が低迷し、物流業界も収益減少とコスト上昇という二重の圧力に直面しました。

中国における新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、物量が少ない春節の時期に発生しました。しかし、感染拡大はいまだ終わりが見えず、上記(マイナス成長)のような結果を招いたのです。ただし、2003年のSARS流行時と比較すると、中国国内の物流業界の規模と物量は成熟しており、自己回復能力もより強くなっています。そのため、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束に向かうにつれ、製造業の回復と消費者の消費解放が進み、早期の景気回復が見込まれます。
一方、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を契機に、各業界のサプライチェーンの維持、消費者への安定供給など、物流の役割と重要性に改めて焦点が当てられています。

中国物流業界は今、変わろうとしている

そのような中で、中国物流業界に変革のチャンスが訪れています。

政策の変化

中国政府において、物流業界は今、国家の安全および経済運営面から、その重要性を再評価されています。中国政府が打ち出している未来構想においても、中国国内物流の構築、グローバル物流の設計、中核的な物流企業の支援、AIをはじめとする情報技術を活用したIT物流の発展など、物流業界を強力に後押しする政策が始まります。

業界構造の変化

コロナ禍では、大手物流企業のネットワークおよびキャパシティの優位性が十分に発揮され、各社のリスク回避力の差が浮き彫りになりました。これを皮切りに物流企業の統廃合が一気に加速し、企業の「グループ化」が促進され、業界再編が進むことが予測されます。

中国B to C物流

B to Cの物流を見ると、新たな小売モデルO2O(Online to Offline)の活用やコト消費の拡大によって、従来の業務を見直す必要が出てきました。コロナ禍では、外出の制限やマンション・団地からの出入りの監視が行なわれていました。その影響で、日用品や生鮮食品のオンライン購入率が高まったことが分かっています。ある調査では回答者の70%が週2回以上、日用品・生鮮食品の購入した回答し、そのうち80%以上がにオンラインを利用して買い物をしていました。他の調査では89%の回答者が、外出制限の影響でオンラインでの買い物が習慣化したため、コロナ終息後も日用品・生鮮食品をオンラインで購入したいと回答しています。

中国B to B物流

一方、B to Bの物流を見ると、3PL企業のサービスの専門性とネットワークの優位性が改めて注目されています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、3PL企業に大きな打撃を与えました。需要コントロール(波動対応)、運送力不足、物流ネットワークの遮断、安全を確保した運営方法など、物流のあらゆる機能で問題が生じました。荷主企業各社が段階的に営業を再開するにつれて、3PL企業の業務量も少しずつ回復しつつあります。しかし、物流現場では感染拡大の防止策として、作業スペースの確保、倉庫作業者やドライバーの人数制限を設けており、サプライチェーン効率は著しく低下しています。そのため、荷主企業は「車が見つからないし、車が見つかっても高い」と不満を訴えている状況です。

中国物流業界の現状

既に中国物流業界はニューノーマル(新常態)の物流体制の構築に動き始めています。

海上輸送の貨物量が大幅に減少

WHOが新型コロナウイルスの感染拡大を「国際公衆衛生緊急事態」と宣言して以降、多くの国が中国に移民規制措置を課しました。それにより中国の国際貿易ビジネスに大きな影響を受け、国際貿易需要の低下をもたらしました。
2020年現在、世界の貨物量の約8割は海上輸送で運搬されています。世界で最も貨物取扱量が多い10港のうち、7港は中国の港です。しかし、中国国内の製造工場の多くがいまだ営業を再開しておらず、海上輸送の貨物量が大幅に減少しています。その結果、港湾ターミナルオペレーターの貨物スループット性能が低下し、港の検疫にかかる時間が増加、港における貨物回転率の悪さが1つの大きな課題になっています。

資源配置や緊急対応能力が不足

中国各地の外出制限により、物流現場の従業員が職場に復帰することができず、作業員不足が発生しました。また、トラックドライバーも出入りが可能な地区が制限され、輸送力不足も発生しました。その結果、緊急物資や医療品ですら運ぶことができない状態に陥りました。

中国物流業界の第1四半期の実績および今後の見通し

2020年5月28日、中国の物流関連の上場企業が第1四半期実績を発表しました。中国国家郵便局が公表したデータによると、2020年第1四半期の中国国内配達サービス企業の配送件数は累計123.5億件に達し、昨対比3.2%増でした。収益は全体で1,534億元、同0.6%の減少でした。

順豊ホールディングス(SFエクスプレス)は、収益減少の理由について、ここ数年の速達業界における価格の下落を挙げています。速達業界の平均単価は2007年の28.50元/件から2019年の11.80元/件に急落しています。コロナ禍であっても、価格競争は進行しており、より大きな競争力や市場占有率を得るためには、コスト削減が不可欠な手段となっているのです。

アリババグループ傘下の物流プラットフォームである菜鳥のCEOは「過去5年間は大変だったが、次の5年間はもっと大変かもしれない。」と話しています。今回は中国における新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を紹介しましたが、新型コロナウイルス感染症は日本の消費行動にも大きな影響を与えています。
人々の消費行動と物流・ロジスティクスは密接に関係しており、その変化に応じて物流・ロジスティクスにも大きな変革が求められます。世界に視野を広げることで、日本における対策でも柔軟な発想が生まれるのではないでしょうか。

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Pen Iconこの記事の執筆者

呂 天嬌

船井総研ロジ株式会社

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