デジタル変革時代の中国物流業界

船井総研ロジ

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張 嘉逸、郁 萌

船井総研ロジ株式会社

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1.デジタル変革時代の物流業界

デジタル変革の変化と影響

IoT(internet of things)、ビックデータ、AI技術の革新により、世界では第4次産業革命が起こっています。第4次産業革命とは、デジタル技術の進展と、あらゆるものがインターネットにつながるIoTの発展による、新たな経済発展と社会構造の変革を指しています。

ロボット・AI産業の市場動向

第4次産業革命の加速と少子高齢化の深刻化により、世界規模で生産方式の転換と生産効率の向上が求められています。こうした背景があり「省人化」や「効率化」といった性質を持つロボット産業は注目され急成長しています。
産業用ロボットの世界販売台数を見ると、2012年は15万9000台ですが、2017年に38万1000台と倍増しており、2019年は48万4000台、2021年には63万台になると予測され、販売台数は年間14%上昇しています(図1)。

そのうち、特に中国はロボット・AI技術を活用して、積極的に産業用ロボットを導入しています。国際ロボット連盟の2018年調査結果によると、2017年の中国における産業用ロボットの導入台数は137,920台(世界構成比:36%)に達しました。

物流業界におけるロボット・AIの運用

物流業界では、人手不足が深刻化しており、庫内作業や配送業務などの様々な分野で自動化・省力化の検討を行なっています。その中で、倉庫におけるロボット技術の導入・活用が加速しています。

倉庫内の主要作業をロボットで自動化する技術については、段ボールの組立てや梱包作業の機械化に加えて、無人搬送車(AGV)の導入による倉庫内の荷物運搬の機械化が挙げられます。無人搬送車(AGV)がピッキング棚を持ち上げ、指定場所まで搬送することで作業員の移動が不要となるシステムを活用し、自動化が進められています。

また、物流業務での仕分け自動化(トータルピッキングにて商品ごとに集められた荷物を決められたルールに沿って自動的に分類すること)も進められています。仕分け自動化によって作業員の負担削減、人件費の削減、安定した生産性の確立の3点が実現されると考えられています。

2.中国物流業界におけるロボット・AIの運用

中国は「世界の工場」として経済を牽引しましたが、2000年代の急激な人件費の高騰により、世界の多くの製造業が生産拠点を ASEAN 諸国に移すことになりました。加えて中国国内でも労働人口の減少、少子高齢化の悩みを抱えています。

また、EC(電子商取引)が急速に発展する中で、倉庫内での作業を効率化させる必要性が増し、倉庫の自動化といったスマート化のニーズが劇的に高まっています。少量・多品種・短納期の消費傾向および激しいサービス競争に押される形で、膨大な物品を自動的かつ正確に高速処理する倉庫がこれまで以上に求められています。

その中で 無人搬送車(AGV)、パレタイジング・ロボットなどの活用が進んでおり、とくに広東、浙江、上海、北京といった倉庫の建設が進み物流が発達した地域では、ほかの地域と比べてロボットの導入がより進んでいます。

菜鳥網絡

アリババのジャック・マー会長は、アリババグループを支える三極(EC基盤、支払基盤、物流基盤)の一つとして物流を重視しています。

菜鳥網絡(cainiao、ツァイニャオ、以下菜鳥)は、2013年にアリババによって設立されました。菜鳥はインターネットテクノロジー企業として、あらゆる方向に広がる物流ネットワークの構築、物流バックボーンネットワークとキャピラリーの突破、スマートサプライチェーンサービスの提供を目指しています。

菜鳥は技術革新と効率的な協力を通じ、パートナーと協力して、物流効率の向上、社会的物流コストの削減、消費者の物流体験の向上、製造業界の利益率の向上を実現しています。

菜鳥は、ニューロジスティックを提唱しています。その鍵となるのは、ロボティクスやIoTです。菜烏はロボット、ドローン、IoT、電子タグ、スマートトレースシステムといった最先端のテクノロジーを活用し、中国国内全地区24時間以内デリバリー、グローバル物流では72時間以内デリバリーを目指しています。

菜鳥の目標は、物流パートナーと協力して、「国内で24時間、世界で72時間」の実現を加速することです。この目的を達成するために、菜鳥は物流業界全体のデジタルネット基盤を構築し、ニューリテール(新しい小売)に基づく、スマートロジスティクスサプライチェーンソリューションを設計し、グローバルな物流ネットワークを構築しています。

京東物流

2004年に設立され、2014年にナスダックに上場を果たした現在中国第2位のネット通販・直販大手のJDドットコム(京東)は、2007年から自営の物流業務を発足し、2017年4月に物流業務を独立させ京東物流集団を設立しました。

アリババグループ傘下の菜鳥との根本的な違いは、菜鳥は情報システムとしての物流プラットフォームの提供にフォーカスすることに対して、京東物流は物流業務そのものも含め物流全般を自社で実施することにあります。

京東物流は近年、無人技術、特に世界初の無人倉庫の実現で注目されています。自社で建設した倉庫で物品の入庫・ピッキング・梱包・トラックへの積込みなどの作業において 無人搬送車(AGV)やロボットアームなどを駆使して無人化を実現しています。

京東物流は、長年間にわたり蓄積した自社の物流ノウハウを生かして、京東商城の物流・配送業務を支えるとともに、外部EC業者にもサービスを提供しています。

3.まとめ

第4次産業革命により、世界の生産方式が転換され、自動化に向かっています。また、EC市場の拡大と労働力の減少で、物流業界は生産性向上の変革に迫られています。

特に、中国のリーディングカンパニーは物流領域の自動化を積極的に進めています。また、中国はベンチャー企業への積極的な投資と巨大な国内市場があるため、無人搬送車(AGV)の新規メーカーが次から次へと現れ、無人搬送車(AGV)の開発・製造が加速しています。

今後の物流市場の発展は、AI・ロボットと連携するのが必然です。AI・ロボットの活用で、これからの物流業界は次の3つの点で変化すると考えられます。

(1)正確な在庫管理

原材料から、製造、物流、小売りという流れのサプライチェーンマネジメント(SCM)を行なうには、在庫管理が重要です。現場で問題になるのは過剰在庫問題、発注担当者の勘や経験に頼った発注フロー、競合の進出による市場の変化など、様々な背景があります。

安全在庫の設定を行なうことは、余剰在庫の減少、欠品の減少、生産性の向上と需要予測が可能になるなど、多くのメリットがあります。

(2)効率的な倉庫情報管理

倉庫管理は物流管理の一環として、物流効率向上に大きな意味をもちます。

倉庫の情報を効率的に管理できないと、誤出荷だけではなく、保管効率低下と作業効率低下などを引き起こします。そのため、AI技術と連携したWMSの活用などにより、倉庫現場作業の精度向上と効率化・コスト削減・可視性の向上による業務品質のアップなどを目指します。

(3)倉庫自動化の推進

現在、無人搬送車(AGV)、ピッキングロボット、画像識別、自動仕分けシステムなどの高度な物流機器を導入する倉庫の自動化・省人化が急速に進んでいます。

今後は自動化と情報化を組み合わせ、IoT技術を通じて荷物情報の収集と処理を実現し、コンピューターが指示を出し、作業を無人で進めていくことが期待されています。菜鳥や京東物流などの物流のスマート化を推進する企業が物流業界をリードしていくと考えられます。

この数年で日本国内の物流環境も大きく変化しました。また、物流業界を取り巻く今後の国内環境を見ても、ドライバー不足や倉庫作業員不足及びそれによるコスト(運賃・作業コスト)上昇は、どの企業にも同様の影響を与えます。

倉庫の作業人員不足は倉庫運営企業が自動化や省人化に向けた投資をすることで、リスクを最小限に抑えることが可能です。

こういった課題に対し、当社が提供できるサービスをご紹介します。
(1)在庫を正確に管理するために、当社が保有する“適正在庫管理メソッドと製販調整メソッド”を活用して、お客様のS&OP体制を評価いたします。在庫削減領域と新たに導入すべき仕組みを提案いたします。

(2)当社はロジスティクス専門のコンサルティングファームとして、幅広い業種及び業態のクライアント企業へ支援を展開しています。倉庫に必要不可欠な自動化・省人化に関しても荷主企業の現状分析から要件を取りまとめ、最適なマテハン(ロボット・WMS)を導入する支援を行ってきた実績があります。倉庫設計からマテハン導入・稼働まで物流倉庫自動化に向けた一貫したご支援を提供いたします。

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船井総研ロジ独自の精緻な倉庫現場分析を基に、物流センターの業務に効果的で自動化・省人化に最適なマテハンの導入、倉庫作業の設計を総合的に支援します。
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