越境ECの主力企業「唯品会(VIP.com)」がSFエクスプレス(順豊速運)と連携した本当の理由

 今回は、中国EC市場の3強(アリババのTモール(Tmall)京東のJDドットコム(JD.com)拼多多(Pinduoduo))を追いかける、4番手のECプラットフォーマー「唯品会(VIP.com)」と、中国物流企業最大手「順豊エクスプレス(SF Express)」について紹介いたします。

唯品会(VIP.com)とは、越境ECに特化した中国大手ECプラットフォーム

 唯品会(VIP.com)は、日本語で「ウェイピンフォイ」と呼ばれるオンライン割引販売を専門とする、中国最大のフラッシュセールサイトです。アリババのTモール(Tmall)、京東のJDドットコム(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)は中国B2Cネット通販市場のトップ3ですが、トップグループを追いかける第4のECプラットフォーマーが唯品会(VIP.com)です。

 唯品会(VIP.com)は中国B2Cネット通販の取扱物量では、アリババ系TモールやJDドットコム、拼多多に及びませんが、中国B2C越境EC市場ではアリババグループと京東グループとともに中国3大越境ECプラットフォームに数えられるほどの規模があります。

中国越境ECの市場シェアですが、Tmallグローバル(天猫国際)を運営すると同時に、Kaola.com(網易考拉)を買収したアリババが約52%で1位、京東(ジンドン)の運営するJDグローバル(京東国際)が約17%で2位、唯品会が約11%で3位となっています。

唯品会(VIP.com)とは、越境ECに特化した中国大手ECプラットフォームです。

唯品会(VIP.com)の成功要因はフラッシュセールスとブランド信頼感

 唯品会(VIP.com)は2008年に中国で設立され、4年後の2012年3月にNY証券場(NYS E)に上場しました。2015年には会員数が1億人を突破しました。さらに、2016年2億人、2019年3億人と、会員数を伸ばし続け、2021年現在は4億人の会員を抱える巨大プラットフォームに成長しました。中国EC業界でも成長スピードはトップレベルです。

 アリババグルーと京東グループが中国EC市場を独占している中、唯品会が4億人近くの会員を創業からわずか8年で、4億人まで会員を増やせた理由は何でしょうか。その答えは、フラッシュセールスとブランド信頼感にあります。

フラッシュセールスとは?

 唯品会(VIP.com)は、ファッション、化粧品、ベビー関連用品などの分野に絞り込み、持続的なフラッシュセールスを続けています。フラッシュセールスとは、期間限定で割引価格など特典付きでブランド商品を定価より低価格で販売するマーケティング手法です。有名なブランド商品が安く買えるため、女性顧客を中心に、高いリピート率を誇っています。

ブランド信頼感

 唯品会(VIP.com)は、仲介業者などの第三者を経由せずに、メーカーやブランドの総代理店などから直接仕入れを行なっていることで圧倒的な信頼感が伝わっています。本物のブランド品の通流が管理されていなかったことが社会問題となっていた中国EC業界の成長期に設立したために、戦略的に「100%本物の正規品が買える」という信頼感を打ち出すことに成功し、唯品会(VIP.com)の企業イメージを高めることができました。

ECの競争力を高めるため、SFエクスプレス(順豊速運)に外注を決定

唯品会(VIP.com)は、2013年に完全子会社の物流企業「品駿快逓(PJエクスプレス)」を設立しましたが、常に物流コストの高騰やクレーム率の高さに悩んでいました。品駿快逓(PJエクスプレス、以下はPJエクスプレス)は外部受注が極めて少ないため、スケールメリットが発揮できませんでした。

唯品会(VIP.com)の決断

同社は物流の見直しに直面しましたが、宅配業務を外注した場合の、PJエクスプレス3万人のスタッフの処遇をどうするかが問題になりました。唯品会(VIP.com)は創業から6年間、検討を続けた結果、2019年11月に宅配事業を中国物流企業最大手のSFエクスプレス(順豊速運、以下はSF)に外注することを発表しました。この時点で唯品会(VIP.com)はPJエクスプレスにEC物流の主要機能を持たせることをあきらめ、B2B分野での新たな戦略を担う企業として転換をはかりました。

最大の越境EC市場である中国への「爆売り」|船井総研ロジ株式会社
https://www.f-logi.com/ninushi/seminar/202105cross-border/

中国物流企業最大手SFエクスプレス(順豊速運)

 ここで少しSFについて説明します。同社は王衛氏により1993年に中国広東省で創業された中国を代表する物流会社です。2002年に正式に運送業の資格を獲得して深圳で本社を設立しました。その後わずか10年で、2012年に年売上は200億元を突破しました。2019年にSFは宅配便取扱量が48.31億個となり売上も会社全体で1121.93億元(約1.83兆円)に上り、名実ともに中国物流企業最大手に成長しました。

 日本でいうと、ちょうどヤマト運輸のブランドイメージと重なります。個人間の宅配便輸送では、少し料金が高くてもSFを使うというブランドイメージが現在では定着しています。

中国物流企業最大手SFエクスプレス(順豊速運)/船井総研ロジ株式会社

SFエクスプレス日本

 SFエクスプレス日本は、2011年に東京で設立され、翌年大阪支店も立ち上げました。そこで、日本や中国を始めとするアジア各地、米国など世界十数か国のお客様向けに宅配サービスを提供しております。これは日本から中国への越境ビジネスが大きく伸びることを見越し、新たな市場を獲得する戦略に他なりません。

SFのハイブランドイメージで唯品会(VIP.com)がさらに成長

 唯品会(VIP.com)の物流に話は戻ります。SFはPJエクスプレスの後継企業として、PJエクスプレスのスタッフに対して、勤続年数を引き継ぐまま転籍してもらう待遇を提供しました。唯品会(VIP.com)がSFを活用することになり、すでに高いブランドイメージを保っていたSFはそのまま、唯品会(VIP.com)にさらに高いブランドイメージと安心感を付加することとなりました。その結果、唯品会(VIP.com)は2019年の総受注件数が前年比29%増の5億6600万まで拡大しています。また、SFは唯品会(VIP.com)と業務提携したことで唯品会から年間5億件を超える注文を獲得し、年売上は120%を越える成長となりました。

 2020年、SFは中国物流業界の最大勢力となっています。SFは中国物流業界勢力図を逆転できた最大の要因のひとつは、唯品会(VIP.com)との提携です。EC事業者に特別割引がある「特恵専配」サービスも大きな成功要因になりました。このサービスは唯品会(VIP.com)に限らず、EC事業者がSFを活用する場合、割引が受けられるサービスであり、このサービスを利用すればブランドイメージの高いSFを割安で利用できることになり、EC業界における同社のシェアを大きく伸ばす結果となりました。

アフターコロナを見越した越境ビジネス

 今回お話した唯品会(VIP.com)の中核戦略は越境ECですが、中国巨大市場の最大の越境輸入国は日本です。コロナ禍で日本へのインバウンド需要が急落する一方で、日本から中国への越境ECは空前の成長を遂げています。

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