中国郵政速逓物流(EMS)と中国郵政集団(China Post):中国最古の宅配物流企業と郵便局から独立した親会社
本日は中国で最初に宅配物流サービスを提供した会社である中国郵政速逓物流(通称:EMS)および親会社である中国郵政集団(通称:China Post)について考察します。
目次
1.中国郵政事業とは
中国郵政事業には、郵政サービスと宅配便サービスの2つがあります。
郵政サービス
郵政サービスとは、日本の郵便局と同じく、手紙やハガキ、印刷物の集配を行なっています。また、貯蓄、切手発行、郵趣品(郵便切手や使用済の葉書・封筒類)の製作や販売なども行なっています。
宅配便サービス
中国には、多くの民間宅配企業がありますが、中国郵政集団傘下の中国郵政速逓物流(EMS)も宅配便サービスに参画しています。
民間宅配企業については、競争が激しいですが、中国郵政以外は以下の会社が宅配便を取り扱うメインプレイヤーがあります。①順豊速運(SF Express):日本ではSFやSF EXPRESSで知られている ②京東物流(JD Logistics):日本ではスマート物流で知られている ③極兎速逓(JT Express):インドネシアからの中国物流新鋭企業。3大プラットフォームPINDUODUOの物流を担う ④アリババ資本が入った「四通一達」(※1)
※1「四通一達」:「申通快逓(STO Express)」、「円通速逓(YTO Express)」「中通快逓(ZTO Express)」、「百世快逓(旧・匯通快逓、BEST Logistics Technology)」、「韻達快逓(YUNDA Express)」の5社の総称
2.中国郵政集団(China Post)と中国郵政速逓物流(EMS)について
(1)中国郵政集団
中国郵政集団(China Post:正式には、「China Post Group Corporation」)は、2005年に国家郵政局の事業運営の機能を担うことで、大規模な国営企業として発展しました(※2)。
2019年、「中国郵政集団公司」から「中国郵政集団有限公司」へ社名を変更しました。そして、2020年、中国郵政集団(China Post)は日本郵政に次ぐ、世界郵便企業ランキング第2位に選ばれました。さらに、同年、フォーチュン・グローバル500の第90位にランクインしています。
現在は、全国各省・自治区・直轄市に事務所を設立しています。中国郵政貯蓄銀行、中郵人寿保険、中郵保険、中国切手総会社、そして、中国郵政速逓物流(EMS)など、主要な子会社があります。
(2)中国郵政速逓物流
中国郵政速逓物流(EMS:正式には、Express Mail Service)は、中国郵政集団の速達郵便サービスを担う子会社です。(※3)
日本から中国の越境ECや個人の荷物の中国発送でよく使われる配送方法でもあります。
2020年末、中国郵政速逓物流(EMS)の従業員は約16万人に達しました。サービスの提供領域は、中国全域だけではなく、200以上の地域と国に渡っています。
中国郵政集団(China Post)のネットワークを活用し、中国郵政速逓物流(EMS)は、多くの付加価値サービスを提供しています。2020年末の国家郵政局の報告によれば、配送業者満足度ランキングで順豊速運(SF Express)に次ぐ、第2位にランクインしました。
3.通関を安心に、越境EC物流の中国郵政
中国国家郵政局の統計データによれば、2015年から2019年まで、中国越境ECの取引量は4.58万億元から8万億元に急増しており、サービス能力も徐々に強化されています。
越境ECの取扱物量拡大を狙い、中国郵政集団は、本社の資源を整理・統合し、越境宅配便物流業務の成長の加速化を図っています。
現在、200以上の地域と国へのネットワークや、便利で迅速な郵便通関チャンネル、国際小包(※4)、国際EMS(※5)など、多種多様な製品を展開しており、中国の越境EC業界で最大の市場シェアを誇ります。
※4 国際小包:中国郵政集団が提供する配送サービスです。2000g以下の物品限定、サービス範囲は200以上の国と地域をカバーします。
※5 国際EMS:中国郵政速逓物流が提供する配送サービスです。軽量物品向けでは、アメリカ、オーストラリア、イギリス、カナダ、フランスおよびロシアをカバーするe-Packetなどがあります。価格の高い物品向けでは、日本、韓国、シンガポール、中国、香港、中国、台湾、イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、スペイン、オランダ、ロシア、ブラジル、ウクライナ、ベラルーシをカバーするe-EMSなどがあります。
中国越境EC市場の拡大に伴い、中国郵政集団は国際宅配業務の以外にも力を入れています。多様化する越境EC取引市場の配送ニーズに対応するため、越境ECの輸出を中郵海外倉(※6)が、越境ECの輸入を中郵海外購(※7)が担当し、ワンストップ統合物流ソリューションを提供しています。
※6中郵海外倉(China Postal Warehousing Service)は、中国郵政が開設した海外総合倉庫保管・配送サービスです。国内貨物の集荷、国際輸送、通関・倉庫・配送サービスを集約し、安全で安定した効率的な海外倉庫流通サービスを提供しています。現在、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス、イタリアなどで倉庫を開設しており、今後は日本、ブラジルなどの海外倉庫も順次開設を予定しています。
※7中郵海外購(China Postal Overseas Shopping Service)は、越境ECの荷物転送、入国申告と配達の総合物流サービスです。現時点は、日本、アメリカ、ドイツからの郵政直営サービスを開設されています。
まとめ
今回ご紹介しましたように、国有企業である中国郵政集団の動向から、中国政府が越境物流市場拡大を目指していることは明らかです。
越境物流の発展から、越境ECの参加プレイヤーが各国で増えれば、中国の越境ECのさらなる発展が期待されるからです。
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