安定輸送のための拠点戦略の考え方
物流に対する荷主企業の目線が変わってきています。
これまで物流は「予定通り入荷して当然」「指示通りピッキングするのが当たり前」「安値で最短のリードタイムで納品先まで届けたい」という意見が大半でした。
しかし、大手宅配便業者に端を発した運賃適正化に向けた一連の騒動を経て、物流会社にとって『扱いづらい』『運びづらい荷物』は敬遠されるどころか、高単価を設定したり追加料金を支払っても運んでもらえない傾向が強くなっています。
現在では「いかに安定して納品先まで荷物を届けれられるか」を重視する荷主企業が増えています。
そのような観点で見直すと、納品先までの安定した配送を確保するうえで課題となるのは『荷姿』や『運送形態』の他に、『配送距離』が挙げられます。
長距離の輸送は物流会社にとって運行管理上のリスクも大きいため、敬遠されやすい傾向です。
運送原価が値上がり基調の中では、長距離輸送を抑えるために顧客(消費者)の近くに拠点を設置することがコスト抑制と確実な配送に直結します。
もちろんすべての顧客の近隣に拠点を配置することは現実的ではありませんし、拠点数を増加することは在庫の増加に直結するため、やみくもに拠点数を増やすわけにはいきません。
また、倉庫や物流センターを賃貸するには費用がかかるうえ、在庫を移管するには費用と労力も要します。
顧客への配送距離が短くなった半面、調達の距離が長くなり調達価格が上昇することも考えられます。
在庫拠点の見直しは様々な角度から検証することが求められます。
昨今では拠点を選定するにあたって人材確保の視点も重要です。
二世帯住宅が多い地域なのか共働き世帯が多い地域なのか、子育ての真っ只中の世帯が多いエリアなのか子育てが一段落した世帯が多いエリアなのか。
周辺住民の生活スタイルによってパート・アルバイト従業員の雇用確保に与える影響も大きいと言えます。
社会全体で危機的な人手不足の中、多数の倉庫作業者を必要とする物流現場では周辺の雇用環境も加味しなければなりません。
このように拠点計画立案には、複数の目線で拠点新設のメリットとデメリットについて検討することが求められます。
簡単に変えることのできない拠点だからこそ、先を見つめた間違いのない検証と選択が必要になります。