月平均所定労働時間は、173.8時間以内になっていますか?
2024年問題(2024年4月1日から施行されるドライバーの総残業規制による諸問題)を前に、物流業界の働き方改革への関心が急速に高まっています。
長時間労働にともなう健康被害や過労死の問題がニュースで取り上げられ、労働環境の適正化を求める声が増える一方、「(労働時間を減らすことで)給与が減るのは困る」といった主張の労働者も一定数おり、経営者を悩ませています。
本コラムでは、労働時間算定時に役立つ専門的な知識と用語について、くわしく解説します。
目次
月平均所定労働時間とは?
所定労働時間
所定労働時間とは、会社が定めた労働時間のことです。例えば、1日の所定労働時間が8時間、年間休日105日の会社の場合、年間の所定労働時間は2,080時間です。
- ・年間所定労働時間=(365日−105日)×8時間=2,080時間
となります。
月平均所定労働時間
月平均所定労働時間とは、年間所定労働時間を12か月で割った、1か月あたりの平均の所定労働時間のことです。先ほど同様、1日の所定労働時間が8時間、年間休日105日の会社の場合、月平均所定労働時間は約173時間です。
- ・月平均所定労働時間=2,080時間÷12か月=約173時間
そして、この「月平均所定労働時間」は割増賃金(残業代)を計算する際に使用されます。
- ・時間外割増賃金=基準内賃金÷月平均所定労働時間×1.25×時間外労働時間
- ・深夜割増賃金=基準内賃金÷月平均所定労働時間×0.25×深夜労働時間
- ・休日割増賃金=基準内賃金÷月平均所定労働時間×1.35×休日労働時間
月によって、31日、30日、28日といったように日数が異なるため、各月の残業代の計算方法がばらつくのを防ぐため、「月平均」という考え方をします。
基準内賃金、割増率、時間外労働時間が同じ場合、残業代(残業1時間あたりの単価)は月平均所定労働時間が多い会社ほど少なくなり、月平均所定労働時間が少ない会社ほど、多くなります。
月平均所定労働時間は173.8時間以内に
所定労働時間は、法定労働時間の範囲内でなければならず、月平均所定労働時間として173.8時間を超えている場合、法律に違反していることになります。
労働基準法では、法定労働時間は1日8時間、1週40時間以内と定められています。
- ・月平均所定労働時間=40時間÷7日×365日÷12ヶ月=173.8時間
月平均所定労働時間が173.8時間を超えている=1週40時間を超えていることになるため、注意が必要です。もし、超えている場合、173.8時間以下の所定労働時間にする必要があり、超過時間は時間外労働時間として扱わなければならず、割増賃金(残業代)発生の対象となります。
割増賃金(残業代)未払いの是正
厚生労働省は毎年、「監督指導による賃金不払残業の是正結果」を公表しています。
是正企業数、対象労働者数、支払われた割増賃金の合計額は、いずれも前年よりも大きく減少し、また過去10年間でもっとも少なくなりました。コロナ禍による経済の停滞もありますが、2019年から適用が始まっている働き方改革が徐々に浸透しているとみられています。
【関連無料ダウンロード】労務倒産に備えるこれから運送業の人事制度
賃金体系見直しのポイントを解説。評価制度で社員のモチベーションを上げる方法やホワイト経営の「見える化」の進め方をお伝えします。
・「ホワイト物流」とホワイト経営の「見える化」とは?
・賃金体系見直しのポイント
・評価制度で社員のモチベーションを上げるには?
【関連無料ダウンロード】トラックドライバーの人事評価・賃金制度構築手法
多くの運送会社が乗務員の賃金に「歩合給制度」を導入していますが、運賃格差や生産性の低下、法的リスクといった様々な課題が潜んでいます。
本資料では、割増賃金未払い訴訟に負けない、物流企業の経営者が早急に実践すべき具体的な賃金制度の構築手法をまとめています。