第210回 ポスト3PLの時代(8)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

前号に続き、Web通信販売企業A氏から相談された「物流コンペ」の模様を紹介 します。

A氏にとって、コンサルタントB氏の発言はこの先の展開について不安を払拭した ばかりの胸中で、半ば唖然とする内容だった。

コンサルタントB氏の発言とは、

「”概要プロセスフロー”につきましては、ほぼ掴むことができましたが、各工程の詳細 に関しましては『ブラックボックス』が多く、定型作業と非定型作業の区別が付かない 工程が少なくはありません」

「このブラックボックスを解明しなくては、委託先を変更するリスクが大きく、このまま 物流コンペを続けるには無理があります。」

同席した担当役員から

「ブラックボックスとは、どういう意味でしょうか?」と質問。

「各プロセス(工程)にあるブッラクボックスとは、その作業内容が見えないもしくは、 解らない工程のことです。」

「解らないまま新しい委託先へ業務をお願いすると、誤った作業や不完全な作業が 発生し、大きなトラブルと成りえます。結果的には、お客様へご迷惑をお掛けすること になってしまいます。」

・・・とコンサルタントB氏の説明があった。

「ブラックボックス」や「お客様への迷惑」など、A氏にとって耐え難い発言内容が続き、 A氏の思考は完全に途絶えてしまった。

矢継ぎ早に担当役員から、

「何故当社の物流業務がブラックボックスになっているのですか?いくら物流会社さん のシステムを利用しているといっても、当社の社員が理解していない作業なんて 有り得ないと思います。」

と怒気を含んだ質問にコンサルタントB氏は、

「はい、誰も知らない・理解していないのではなく、管理部門が把握できていない 状態なのです。この現象はどこの企業にも多かれ少なかれある問題です。理由としては、営業部門の方や購買部門の方が、物流管理部門を飛ばして直接物流 企業さんへ指示や依頼をかけていたことが原因だと推定されます。」

A氏は担当役員とコンサルタントB氏の会話を呆然と聞いていた。

これまでA氏は、難しい指示や依頼は、各担当部門から直接物流会社へ話して もらった方が、他人が間に入るよりも効率的だと思っていた。

コンサルタントB氏は、 自身のこの考えを真っ向から否定したのだと感じた。

言わば職務怠慢を遠巻きに 責められているともとれる。

一方で、冷静にコンサルタントB氏の言う「ブラックボックス」について考えてみると、 確かに自分自身の面倒な気分と多少の責任転嫁の気持ちがあったことは、今更ながら思い出されてきた。

特に入荷検品の内容や、タグやバーコードなどの問題は、各仕入先と購買部門が決めるべきことであり、物流管理部門が深く立ちいる必要は無いと判断して いたのも事実である。

A氏は再び憂鬱な気分へと苛まれることになった。

次号に続く…。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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