第130回 ドライバー不足は解消されるか?

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

自動車業界を中心とした人材派遣切りが社会問題となっています。

物流業界においては、昨年度前半までは間違いなく人手不足であり、特にドライバーや夜間の作業スタッフは、慢性的でもありました。

昨年末にある関東の運送会社トップに聞きましたが、12月に行ったドライバー募集に対して、10倍の応募があったそうです。

「こんな事はここ何十年来初めての事だ」と驚愕されていました。

石油高騰の影響を最も多く受け、ほぼ全ての運輸事業会社が疲弊していたここ数年では、新規の仕事には慎重となり、増車は一旦停止となり、「仕事はあっても人がいない」現象が東京を中心とする都市部で蔓延していました。

輸出産業や自動車・建築・機械・原材料などを輸送する運輸事業は、ややここ数年その輸送量の減少は避けられない事かと思われますが、食品・生活関連品・日用雑貨類などは、数パーセント程度の落ち込みはあるものの安定した輸送量が確保されていると思われます。

運輸業界は、今こそ就業者不足によるドライバーの雇用問題を解決し、企業そのものを成長・拡大するチャンスではないでしょうか?

ドライバーの雇用状況が安定すれば、輸送品質を高めるべく教育を実施しサービスレベルの高い輸送や物流業務が提供できます。

現状の運賃は、AからBへの輸送と言うとても判りやすいサービスを提供しているものが大半です。(判りやすいサービス=真似のしやすいもの)となり、提供しているサービスの代替が容易であり、且つ参入障壁の低いものとなります。

参入障壁の低いサービスの価格は、多くの事業者が市場にいる訳ですから必然的に「相対的な価値」となってしまい、価格決定者は市場(顧客)となります。

AからBへの輸送でも、Bにおいて付加サービスが加わったり、単純輸送以外の貢献がある場合は、そのサービスが輸送を超越した全く新しいサービスとして顧客に認知されます。そのサービスにおいては「絶対な価値」となり、価格決定はサービスを提供する側にある訳です。

現状、単純輸送のみが顧客に提供できるサービスだとしても、その前後の工程や全体の流れを熟知する事によって、他が真似の出来ない絶対的な価値が提供できる運輸・物流事業も展開可能な時代でもあります。

「人」はお金で買う事の出来ない貴重な財産です。
「人」は、正しい教育や啓蒙を行う事によって、長所を伸ばし続けます。
「人」が集まる環境下、「人」への投資は車両や不動産以上の価値が、将来見込まれる可能性の最も高いことではないでしょうか。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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