ラストワンマイル革命 2019.01.30

宅配で急成長している時流企業インタビュー -ラストワンマイルのプロ編- 【後編】1日200件配達のコツ・再配達/人材不足のベストな対策

はじめに

各社がラストワンマイルの人材不足に悩む今日、今回は現場で働く人の声を聞くべく、1日200件以上の配達を実現しているドライバーなど、優秀なドライバーが集う株式会社吉祥寺総合物流の二瓶直樹社長・阿部拓也営業本部長にお話を伺いました。

同社は今後全てのドライバーが持つべき心がけや教育・配達のコツ、物流に関わる全企業が知っておくべき最新時流・信念・ルールを大切にしながら業務に取り組んでいます。 現在、特にラストワンマイルの配達において都内全域で活躍され、ラストワンマイルの価値向上を目指して躍進なされています。荷主企業からの案件数が日々増加する中、ダイバーシティに適応した採用で、ドライバー数も増加しています。彼らの活躍にはいったいどのような秘訣があるでしょうか?

株式会社吉祥寺総合物流 二瓶直樹社長
株式会社吉祥寺総合物流 阿部拓也営業本部長

前編「ドライバーのあるべき心構えと新人育成のコツ」はこちらから


宅配はツラいが、色々な面でやりがいがあり続けられる仕事

配達業務は精神的にも体力的にも大変な部分があると思いますが、それでも続けることができる宅配のやりがいはどのような面ですか?

〈阿部本部長〉
「個人向け配達においては宅配やネットスーパーなどの様々な配達種類がある中で、宅配は最も労働時間が長くて頭も使うツラい仕事だと感じています。しかしその分、ドライバーとしての収入は非常に高い水準だと思っています。反対にネットスーパーの配達は自分のペースで配達ができます。例えば、夕方までに配達を終了させて夕方からは自分の時間をとるということも可能です。稼ぎたいという人であれば宅配、収入よりもワークライフバランスを重視したいという人であればネットスーパーの配達を選べば、自分に合った体系で働くことができます。それぞれの意思に合った働き方ができ、それぞれが思うやりがいに繋がる体制ができていると思います。
 また、人と人が繋がることができる仕事という面でも大変やりがいがあると感じます。配達しながらお客様と仲良くなってお話をすることも自分のためにもお客様のためにもなり、Win-Winの関係を築ける機会だと思います。そう言った面でも、ツラい事ばかりではなくとてもやりがいのある仕事だと思います。」

初めからは難しい、とにかくやってみるしかない

宅配個数を1日100件以上回ることは誰でも可能ですか?

<阿部本部長>
「正直、新人ドライバーが初回から配達個数を増やすことは難しいと思います。初めの期間は1日30~50個を配達できれば良い方ではないかと感じています。そもそも配達個数が増加しない理由の一つは配達エリアの地図が頭に入っていないことが挙げられます。地理が曖昧なことで、配達地到着までの時間がかかってしまいます。どのように地図を覚えてもらうかというと、とにかく「やってみるしかない」ということを常に皆さんに伝えています。経験を長年積めば全ての配達先がそのような感覚になってくるので、結局は「場数を踏むしかない」「やるしかない」ということだと経験上、思います。僕の体感では初め地図を見ながら配達していたドライバーも、1ヶ月ほど経つと地図を見ずに配達できるようになっていきます。」

集配エリアによって配れる個数も変わる

やはり住宅密集地が有利?

〈阿部本部長〉
「そうですね。ただ、そもそも大手宅配3社でシェア率が違ってきます。また、各社配達エリアの距離も異なってきます。同じ100個の配達を行うにしてもA社では配達エリアが密集しているので短時間でできますが、B社、C社であればより配達エリアが広くなっているので時間がかかってしまいます。配達個数を増やすためには配達エリアが密集している仕事をもらったほうがたくさんの配達ができます。また日本の宅配業では、首都圏とその他の地域ではやっていることは同じでも全く別ものだという印象をもっていますね。やはり集配エリアの違いが一番大きいです。首都圏ではバス停集配といわれるほど近距離の集配になりますが、その他の地域では一日200kmくらいの距離を走っているとよく聞きます。1件行くのに1時間かかるという話も聞くのでもはやそれは宅配ではなく、ネットスーパーに近いものなんじゃないかと思います。」

慣れと真剣さが配達効率を生み出す

〈阿部本部長〉
「次に仕事を覚えてきたら配達時間短縮のため、さまざまなコツを伝えていくようにしています。例えば、オートロックがある1棟のマンションで複数の配達先がある場合を考えます。数件インターフォンを押していきますが、不在の方がいらっしゃる場合もあります。1件目が不在、2件目を配達して、3件目も配達した後に郵便受けの近くで不在票を書いて入れる、というのが一般的な流れかと思います。しかし1件目が不在である場合、不在票は後回しにするのではなく2件目に行くエレベーターの中で不在票を書くことで、郵便受けの前で書く時間が30秒から1分くらい時間短縮されます。この少しの時間短縮のコツを積み重ねることで一件当たりの配達時間が非常に短くなります。このような細かな工夫を行うことで僕は大量の配達を行うことができています。
 このような細かなコツやノウハウはドライバー各人で異なっています。なので、3ヶ月に一度のペースでドライバーの集まりで各人のコツを共有する場を設けています。ほかのドライバーのコツを聞くことで配達効率が高まることにも繋がっています。」

再配達を無くすには、受け取り手の意識改革も必要

今後のラストワンマイル・再配達に対しての懸念点はありますか?

〈阿部本部長〉
「再配達でなかなか受け取ってもらえないという現状がありますが、その原因は受け取り手の意識問題もあると思います。受け取らなければいけないという意識が低くなっている、ということです。昔はECによるB to C配送は無く、親や友人が送り主に対して送るC to Cの荷物が主でした。親からの仕送りや友人からのギフトに対しては「必ず受け取らなければいけない」という意識が強くありました。しかし、ECの登場により「物を受け取る」行為がゴールでは無くなりインターネット上で自分が「買う」という行為がゴールとなっている現状が見受けられます。例えば、楽天のネットスーパーで購入したときにポイントが付きますが、そのポイントが付くことで満足してしまい、消費者の方は買った荷物が届くことを疎かにすることがあります。  お届時不在票がポストに入っていたとしても、その荷物が今必要ではないことが多いので「後でいいや」という意識になってしまいます。そうなると、ドライバーに連絡がこないので何度も再配達したり配達するのが遅くなったりしています。たとえ宅配boxができたとしても、消費者が受け取らなければいけないという意識を根付かせなければ、再配達問題は根本からは解決しないのではと感じています。
 また、再配達の発生の要因として無駄な時間指定があることも問題だと感じています。通販サイトによっては、日付指定がなく時間指定だけあるケースがありますが、日によって受け取れる時間帯は違うでしょうから必ずその時間に受け取れるとは限らないと思います。それであればドライバーがその町の事情に一番詳しいのだから、時間指定なんてやめてドライバーが知っている情報の中でいつ配達するのかということをドライバーに任せることが僕は一番良いのではと思っています。
 僕が配達現場で経験したことですが、ある親御さんが息子に荷物を送る際に夜しかいないだろうという親の思い込みで夜間指定をされることがありました。しかし毎回夜配達に行くものの一度も家にいたことがありません。そしてその息子さんは不在票が入っていると、次の日のお昼にコンビニで荷物を受け取るんです(笑)。それがわかっているのであれば夜ではなく午前中に不在票を入れて置けば、その息子さんは更に早くコンビニで受け取れるようになります。夜、不在票を入れるとどうしても次の日の受け取りになりますから。そういった送り側の「この時間だったら受け取ってくれるんじゃないか」という思い込みは、特に気を付けるべき時代になっていると感じます。これはECの発展において更に深刻化するのではと感じますが、細かなサービスをすればするほどややこしくなってしまいます。」

新しいドライバー候補は外国人

ドライバー増員の為に積極的な採用をされていますが、どのような工夫をされていますか?

<二瓶社長>
「採用はおこなってはいますが、そもそもドライバーが少ない国内では限られています。10年後には25万人マイナスになる状況がありますので、ポテンシャルワーカーの訴求しかないですね。当社でも中国福建省出身のドライバーが13名います。また今後も増員の予定もあります。
 当社ではリーダー陣で月に一度会議を行ったり、飲み会やBBQをやったり、セミナーに参加させたりしています。基本的には人材に使うお金は「生きるお金」だと思っているので惜しみなく使っています。
 中国福建省の人たちは経済格差が激しくあるんです。富裕層と低所得者が二極化していて、中間層が少ないんです。その中で富裕層の子供たちが中国の日本語学校を卒業して日本に来ることが多いという協力会社の社長さんからお聞きしました。しかし、日本人の基準からするとマナーが悪い人が多いという印象を持っていますね。あとはビザの関係で労働条件が細かく決まっているんです。例えば個建ではなく、車建でなくてはいけないみたいなことがあります。そういう方々でも採用したいと思うほどにポテンシャルワーカーは必要なんです。外国人、女性層、シニア層を取り込んでいかないと2025年以降は生きていけないと考えています。」

今後は女性ドライバーも増やしていく

女性ドライバーは在籍されていますか?

<阿部本部長>
「今はいないですね。過去にベテラン女性ドライバーがおりましたが、現在は休職中です。今後のダイバーシティも考慮した上で積極的に女性ドライバーを採用したい思いは強くあります。しかし宅配は固定時間拘束の業務が多くそう簡単には募集できません。現在は女性の希望労働時間に関して情報収集をしていますがやはり家庭をお持ちの女性は、家事や育児の関係で9時から15時まで働きたいという方が多いですね。反対にそのような時間帯での仕事を我々経営層が調整できるように尽力すれば家庭を持つ女性の方でも安定収入で楽しく働けるようになると考えています。」

女性ドライバーが働きやすい環境づくりが必要

主婦層等女性への配慮に関して考えていらっしゃることはありますか?

<阿部本部長>
「やはり働く時間が決まっているという点でしょうか。夕方までには帰って夕飯の準備など家事をしなければいけない、朝も子供のお見送りがあるので早朝の出勤はできない、ということだと思います。そのような方々の働く場所を提供したいと考えています。そのためには会社として働き方の改革が必要です。例えばその時間だけ働いてもらい、15時以降は他の方に仕事を引き継ぐという仕組み作りが必要だと感じています。そのような構想を模索していますが、特にネットスーパーの仕事ではその時間体系は難しいですね。荷受けする店舗側からすると複数のドライバーが出入りして複雑になるより、一人のドライバーにやってもらったほうがいいという声をよく伺います。そことの折り合いが難しい状況にあります。」

収入面での魅力づくり

9時から15時まで働く中で、主婦層の方は収入面もやはり気にされるかと思います

<阿部本部長>
「単純に時給換算して時給1,000円だとして、1日5時間労働で5,000円。約5,000円/日の収入になると思います。パートとしてもそこまで低くはありませんので収入面での魅力はあると思います。もともとその地域の土地勘があり、地図が読める方であれば宅配業はうってつけだと思います。地図が必要な時期は最初だけで、あとは配達に回るルートも決まってきます。」

配達個数を求められる仕事は、女性には大変だという印象はお持ちですか?

<阿部本部長>
「やはり、荷物の種類が大中小ありますので、どうしても女性の方で持てない荷物が出てくることもありますね。そこは一人で行う仕事ではないので、パートナーと組んで協力し合いながら二人で持ったり、持てる荷物だけ担当したりする仕組みは我々が考えていかなければいけません。」

人とのつながりこそが最大のやりがい

最後に伝えておきたいことはありますか?

<阿部本部長>
「世間ではこの仕事はツラい職業と言われてはいますが、人と人がつながれる仕事であるので非常にやりがいがあると思います。配達しながら配達先の人と仲良くなって、お話することも自分のためにもお客さんのためにもなる。その関係づくりが楽しいと感じています。そこに収入もついてきて、とてもやりがいのある仕事ですね。」

<二瓶社長>
「物流企業に限らず、組織にとって一番大切なものは「企業理念」と「コミュニケーション」に尽きると考えています。その中で、私は日頃から「地域貢献」「社会貢献」「職業貢献」の『志』が一番大切な心構えと常々考えております。その『志』が無ければ、真の「達成感」は得られないと考えているからです。また、弊社は人を大事にしたいという思いが第一ですので、人を大事にして皆で楽しくして行けたらと思います。後は何事も“凡事徹底”。弊社の企業理念は「半ばは自己の幸せを、半ばは他人(ヒト)の幸せを」です。これからも人を当たり前のように大切にしていきますし、そうすべき時代だと考えています。」


取材後記

二瓶社長・阿部営業本部長にお話を頂いた中で、最も重要なポイントは「宅配業界の問題解決の為には送り手・受け手両方の“意識改革”が必要である」という部分ではないかと感じました。現役ドライバーも兼ねる阿部営業本部長からも非常に明るい印象と力強さを感じ、二瓶社長からはラストワンマイルに対する強い思いを頂きました。「ラストワンマイルはサービス業」、この意識が業界全体に広がれば同社のような企業を起点とした、業界を一変する〈宅配〉の新しい姿が生み出されるかもしれません。今後の活躍も非常に楽しみです。 (井上)

吉祥寺総合物流さんは、当社が主催するロジスティクスビジネス経営研究会メンバーであり、ラストワンマイル部会の主軸メンバーです。二瓶社長の経営姿勢及びビジネスモデルは他の会員さんにも多大な好影響を与え、私がとても尊敬する社長のお一人です。 業界では、ラストワイルにおける人材不足に悩む中、吉祥寺総合物流さんのような時流のど真ん中を進む企業さんがもっと現れることで、現下の課題解決に成り得ると確信しています。 この取材記事を読んでご興味を持たれたラストワイルに悩む荷主企業の方、どうぞお気軽に小職へお問い合わせ頂ければご紹介致します。 (赤峰)

今回取材させていただいた企業様

Pen Iconこの記事の執筆者

井上 輔

船井総研ロジ株式会社

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