物流業界の脱炭素を進めるカギを握っているのは誰か?
政府は2030年度に温室効果ガスの排出量を、2013年度対比46%削減を目標とし、さらには2050年までに実質ゼロを目標としています。直近の目標年度である2030年まで、あと6年を切りました。国内における温室効果ガスの削減状況はどのような実態となっているのでしょうか。
直近の確報値について
直近の確報値では2013年度対比20.3%削減となっています(図1)。2030年および2050年の目標値達成に向けた取組は一定の効果があると見受けられます(図2)。
図1 2021年度温室効果ガス排出量確報値
図2 2030年および2050年の目標達成への進捗
温室効果ガスの排出量の推移
一方で物流業界における温室効果ガスの排出量の推移はどのような状況でしょうか。温室効果ガスのうち約90%以上を占めるCO2排出量の推移を部門別に見ていきます(図3)。運輸部門においては、2013年対比2019年は▲8.1%と他部門と比較して圧倒的に削減率が低い部門でした。しかし、翌年2020年はコロナ禍で物量が激減し、2013年対比▲18.2%となりました。直近の数値である2021年度では荷量回復に伴い、排出量が増え、2013年対比で▲17.6%となりました。
図3 主要部門別2013年度対比削減率の年推移
参考文献:全国地球温暖化防止活動推進センター日本の部門別二酸化炭素排出量の推移
物流業界におけるCO2排出量の削減方法
荷量減少によってCO2排出量が削減したということは、経済の回復に伴い荷量が増えることでCO2の排出量が増加することを意味しています。それでは物流業界においてどのようにCO2排出量を削減したらよいのでしょうか。
物流業界における脱炭素は物流企業だけの問題だけでなく、物流企業に輸配送・保管を依頼する荷主企業にも大きくかかわってきます。具体的にはどのようなことがあるでしょうか。ここでは拠点配置を例に解説します。
CO2排出量は運ぶ荷物の量と距離に応じて比例します。荷主企業がまず実施することは、今の拠点配置や在庫管理において、CO2排出量に影響を及ぼすような実態になっていないかということです。拠点配置は一度見直しをして終わりではなく、市場変化や得意先配置によって変化をします。一つの区切りとして、5年のタイミングで拠点配置の再点検が必要です。
その際に必要なことは、得意先の配置に変化がないか、拠点における在庫管理の運用が適切か、長距離輸送に関してはモーダルシフトが検討できないか(リードタイムの見直し、ロットの大型化)といった点です。これらの条件を踏まえたうえで拠点の配置を決定するのは荷主企業です。効率化を進めながら環境に配慮した物流体制の構築を進めてみませんか。
【前回の記事】ESGロジスティクス モーダルシフトの効果と課題
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