株式会社誠輪物流 代表取締役社長 野坊戸様(後編)

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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今回は、株式会社誠輪物流 代表取締役社長 野坊戸(のぼと)薫様へインタビューを実施しました。
野坊戸社長は会社の二代目であり、先代社長が急な病に伏せられ、急遽、跡を継ぐことになりました。
長年先代の社長が創り上げてきたものに対して、二代目である野坊戸社長が物流業界の仕事をかっこいいと思ってもらいたい、子供たちに魅力のある職業になってほしいという想いから、これまでにない新たなチャレンジをされてきました。
当然新たなチャレンジには向かい風が吹くものです。
二代目を継いでから、これまでのご活躍についてお話を伺いました。

“ドライバ―のグループ活動の一貫、DIY作業とは?”

「まずは研修です。例えば事故研修であれば、事故に対してどのように気を付けるのか各チームで議論します。ここまでは普通の活動のように見えますが、他に行っている活動としては、“DIY作業”です。

一例として、各グループで花や野菜を育てる活動をしています。花が咲いたら、野菜が収穫できたら、そのグループに表彰(プレゼント)をするという企画です。最初はとまどう人もいました。
しかし、そこは社長である私も一緒になって企画して取組に参加しました。野菜を育てるにも、まずはプランターを作るところから始まり、どの野菜を育てるか、飼料はどのようなものが必要かということも議論し、組織力を形成していこうというのが狙いです。
今では、ドライバ―から“次は何を植えよう?”など楽しみながら、かつ、ごく普通の活動として取り組んでいるのが実態です。

当然、中には合わない人もいるので、無理強いはしません。しかし不平不満を言う人は誰かを巻き込もうとしがちなので、このようなグループ活動がきっかけで、考えが変わるとよいかなと感じています。」

グループ活動の取組として、ドライバ―自らが花を育てています。プランターにはチーム名が書かれています
ドライバ―の休憩所です。おしゃれな外壁の模様は野坊戸社長自らペンキで色を塗ったそうです

“このご時世に仕事がいただけることに感謝をする”

「お客様からのお仕事は業界問わず、多岐に渡ります。
運送に関しては関東1都6県の配送がメインで、一部長距離も担っています。ほぼ関東地区をカバーしているので、人と生もの以外は運ぶことができますと営業のときにお客様へ伝えています(笑)。
取り扱い品としては、ドライ食品、日雑、自動車関連、医療品等があります。

物流業界でよく言われる“手積み・手降ろし問題”ですが、弊社ではパレット積みのほうが多いですね。これもお客様へお願いをして、極力パレット積みにしていただいています。一部手積みの仕事もありますが、ドライバ―内で不満がでないよう、仕事をローテーションしながら回しています。

コロナ禍で事業を閉めざるを得なかった同業がいる中、無くなった会社のことを考えて仕事をするようにとドライバ―には伝えています。仕事を“取る”という言葉はあまり好きではありません。仕事を“いただいている”のです。このご時世、仕事ができること、仕事があることに感謝をしなければなりません。

そして、どこへ納品に行っても、誠輪物流のドライバ―は気持ちがいい、礼儀正しいと言っていただけることもありがたいことです。」

“受領書は両手で受け取るなんて、当たり前”

「ドライバ―は誰でもいいわけではありません。運送の仕事はスポットから始まり、困ったところに手が届くようなサービスを提案して、定期の仕事につなげていく、いわば、提案型営業です。ドライバ―には名刺を持たせて、納品先で配るよう伝えています。

納品先では、“誠輪物流です、ありがとうございます!”と挨拶しますが、下請けで入っている仕事もあるので、その場合には自社の社名を名乗ってはいけません。しかし、制服には社名が入っていますので、誠輪物流であるということはわかります。
納品先のお客様がドライバ―の制服にある会社名を見ていることも意識しながら、立ち振る舞いには気を付ける必要があります。

同業他社において、制服が乱れている(正しく着用していない)、サンダルを履いているというのを見ると、いかがなものかと思ってしまいます。制服はフォーマルでもあり、戦闘服でもあります。その戦闘服を着て、仕事をしてお金をいただいているのです。

ラッピングに関しても同じです。当初、ラッピングに乗ることが恥ずかしい、嫌だというドライバ―もいました。しかし、事故で凹んでいる車、汚れた車のほうがよっぽど恥ずかしいということを伝えさせてもらっています。

ドライバ―からは色々な意見がでます。そのドライバ―からの意見に対して、社長である私自らの言葉で直接伝えるようにしています。

また、受領書を受け取るとき、両手で受け取るようにと伝えています。当たり前のこと、些細なことかもしれませんが、このような丁寧な活動が、お客様からの安心、信頼を得ていると感じています。」

車庫の裏は、近くを通りかかった方に楽しんでもらえるよう、ペイントしたタイヤを飾っています

“誰も見たことがない物流業界の景色、未来へ向けてのチャレンジ~トラックパーク構想とは?~”

「現在、トラックパークを実現すべく、準備を進めています。トラックパークとは、例えば、子どものころ消防車やパトカーと一緒に写真を撮る機会があったかと思いますが、トラックに乗っている写真はほとんど撮る機会がないと思いました。そこから、テーマパークのようにトラックを身近に、楽しく感じてもらえるものを作り上げたいと考えました。
全国のドライバーの皆様からも“手伝えることがあれば手伝います!”とお声がけをいただいております。まずは、地元鶴ヶ島からトラックを身近に感じてもらえるよう、テーマパーク構想の準備を進めています。

また、最近ですが、ホームページをリニューアルしました。“これが運送会社のホームページなの?!”というものをゼロベースから作りました。ホームページを見に来た方のほとんどが30秒以内に離脱してしまいます。なんとかして、30秒以上見ていただけるようにと、ホームページもワクワクするものに変えました。会社のマスコットキャラクターも作り、親しみやすいものにしようと私が自らデザインしました。

トラックパークは夢の場所でもあり、なかなか身近で感じることができない体験をできる場として考えています。トラックと触れ合ってほしい、ドライバーの仕事をしているお父さん、お母さんの仕事の相棒を子どもたちにも見せてあげたい、そして子どもたちが将来ドライバーになりたいと思ってもらえるようなものを作っています。
ホームページも同じです。今までの物流業界のイメージを刷新できるような親しみのある内容に作り変えています。
ここから、物流業界、トラックドライバーに興味を持つ方が増えてていくことが、私の未来へ向けたチャレンジの一歩です。

誠輪物流様のホームページのトップ画面です。新しいテーマパークの紹介と見間違えるくらい、かわいらしいキャラクターが出迎えてくれます。

編集後記

インタビューを通じて、野坊戸社長の発想、行動力、気さくな性格が社員のみなさんの心をつかんでいると感じました。インタビューの中で、社員のことを「社員」と呼ばず、「仲間」と呼んでいるというコメントが印象的でした。

物流業界では女性経営者が少ないので、女性経営者が増えると嬉しいとおっしゃっていました。2代目として跡を継ぐ人、先代にかわいがられて跡を継ぐ人と、社長になる方の経歴が様々かと思いますが、物流業界における女性経営者が集まる会があるとまた違った意見が広がるのではと感じます。

  • 今回取材させていただいた企業様

    会社名
    株式会社誠輪物流
    本社所在地
    埼玉県鶴ヶ島市上広谷本村472-1
    設立
    1996年4月3日
    資本金
    2,500万円
    代表者
    代表取締役社長 野坊戸 薫
    事業内容
    一般自動車運送業、首都圏配送、引越業務、倉庫業、商品管理業務、商品仕分請負業、梱包業、販売業務
    車両台数
    大型15台、中型・小型60台
    コーポレートサイト
    https://seiwa-logi.com/

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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