株式会社誠輪物流 代表取締役社長 野坊戸様(前編)

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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今回は、株式会社誠輪物流 代表取締役社長 野坊戸(のぼと)薫様へインタビューを実施しました。
野坊戸社長は会社の二代目であり、先代社長が急な病に伏せられ、急遽、跡を継ぐことになりました。
長年先代の社長が創り上げてきたものに対して、二代目である野坊戸社長が物流業界の仕事をかっこいいと思ってもらいたい、子供たちに魅力のある職業になってほしいという想いから、これまでにない新たなチャレンジをされてきました。
当然新たなチャレンジには向かい風が吹くものです。
二代目を継いでから、これまでのご活躍についてお話を伺いました。

“トラックドライバーの仕事が子供たちの憧れの職業であっていたい”

「人手はいるのに、失業率があがっているという実態に疑問を感じています。その中でも、物流の仕事をやりたいと思う人がいないことが一番の問題であると感じています。
例えば、飛行機のパイロットは空を飛んでいてかっこいい、鉄道の運転手も子どもたちに大人気。では、トラックとなると・・・飛行機や鉄道とは同じように“憧れ”がないことに“なぜ?”と感じています。

その理由としては単純で、トラックドライバーとして働いている姿を発信していないことから、職業に対する偏見があることだと思われます。
トラックの運転席に乗ってみると、飛行機のコックピットのようにかっこよく、大型トラックの場合には視界良好で遠くまで見渡すことができ、トラックは道があればどこでも行ける、生活の第一線として社会インフラとなっているといった実態をどれだけの人が知っているのでしょうか?
私は社長でもありながら、ドライバ―のファンの一人でもあります。そのため、トラックドライバーの仕事や活躍ぶりについて発信していく必要があります。
トラックドライバーのイメージを払拭しなければ、人手不足のテーマは永遠に解消されません。

将来の夢は、“ユーチューバーになりたい!”という声はよく耳します。
しかし今時の普通免許を取得していない若い方々がトラックドライバーになりたいか?現状ではそのようにはなっていません。
トラックドライバーの仕事が憧れる職業の一つにならなければならないのです。」

“サファリトラック大作戦で子供も女性も笑顔になる?!”

「世の中のITが盛んになってきていますが、物を運ぶという仕事は絶対になくなりません。その中で、トラックドライバーという仕事を発信し、“かっこいい”と思ってもらいたい。
例えば、人気俳優やグループがトラックに乗って宣伝をしていたらかっこいいと思ってもらえるような、カジュアルなイメージで、トラックドライバーという仕事を捉えてもらいたいと考えていました。

その活動の一貫として、トラックのラッピングを行いました。一日の生活の中で、トラックと何台すれ違ったか、みなさん覚えていますか?誰もそのようなことを意識していないのが実態です。
車で道路を走っているとトラックを見かけないことはありません。身近であるにも関わらず、興味を持っていないことが大半です。まずはトラックに興味を持ってもらう、記憶に残るようなことをしなければなりません。

私たち業界人であれば、どこの会社のトラックかというのをよく見ますが、一般の人はそこまでは気にしていません。しかし、トラックが走っている姿を見て笑顔になるような、“今日こんなトラックを見た!”と話題になるようなトラックがあればよいのではと考え、ラッピングカーを思いつきました。

“サファリセイワ”です。左からライオン号、ホワイトタイガー号、レッサーパンダ号、パンダ号です。トラックのボディではなく、トラックとすれ違ったときに一番見られる正面部分をより意識した顔のデザインにしています。

「ラッピングトラックを導入したことで、納品先の女性担当者がわざわざ事務所から出てきて、写真を撮りにきてくれました。子どもたちはトラックに向けて手を振ってくれるようになりました。これまでのトラックに対する興味・関心からすると考えられないことでした。まさに人を笑顔にするトラックなのです。

トラックはどの物流会社においても、会社のイメージとして統一したものを発信している場合が多いと感じます。それは会社としてのブランドイメージもあるので、素晴らしいことだと思います。しかし、弊社においては、わざわざトラックのカラーを揃えるというのではなく、むしろ弊社を知ってもらう手段として、ラッピングされたトラックを導入しているのです。

現在稼働しているラッピングトラックは、大きく二種類あり“ラッキードット”と呼ばれている水玉模様と“サファリセイワ”です。
水玉模様のトラックは、トラックのボディにグリーンの水玉模様がペイントされています。トラックの中に“隠れセイワ”があり、ちょっとした遊び心を入れています。
もう一つの“サファリセイワ”はその名のとおり、動物のラッピングです。現在はライオン号、パンダ号、ホワイトタイガー号の3台(頭?)が稼働しています。直近では、4台(頭)目のレッサーパンダ号が稼働予定です。

最初は納品先の方も驚かれていましたが、大好評です。今ではラッピングの意見もいただくようになりました。先日は“動物にしっぽはつけないの?”と言われてしまいました(笑)。

ラッピングのデザインは私が担当しています。現在、水玉模様のトラック7台、サファリセイワは3台(増車計画中)です。次の取組としては、“ジュラシックセイワ”(恐竜のラッピング)を計画しています。」

見かけたらいいことがあると言われている(?)、”ラッキードット”のトラックです。ここに“隠れセイワ”があるそうですが・・
水玉の中に白字で“SEIWA”と記載されているのが見えますか?これが、”隠れセイワ”です。ちょっとした遊び心を入れています

“トラックドライバーに必要なのは品格”

「トラックに興味を持ってもらえると、ドライバ―も誰かに見られているということを意識します。品質は当たり前、品格をつけるようにと私はドライバ―に伝えています。このことから、ラッピングを導入する効果として、事故件数が減ることがあげられます。常に誰かに見られている意識を持つことが大事です。

私たちの会社は、鶴ヶ島という地域から、トラックドライバーが憧れる職業として発信していきたいと考えています。子どもたちが、“お父さんの仕事かっこいい”と思ってもらえたらいいですね。」

“先代の急な引退で引き継いだ会社。跡を継いでから見えてきたものがある”

「先代の社長は私の父親です。父親が倒れたときに不安もありましたが、やるしかないと思い、私が二代目として跡を継ぎました。跡を継ぐ前からトラックにも乗っており仕事に携わっていたので、事業のことは理解していたつもりでした。
それでも、私が跡を継いだあとは大変でした。社長が変わったからといって、すぐに会社の方針を変えるのではなく、遠回りかもしれませんが、二年間は体制を変えないようにしようと考えていました。

じっと社内を見ていくと、今まで見えていなかったものが見えてきました。それは、水が上からも下からも流れていないことです。
例えば、言ったことが伝わらない、聞いていないということがたくさん出てきました。
そして、ドライバ―の大半が先代の社長と話をしたことがないという実態でした。ドライバ―は個人で行う仕事のため、組織としての活動が出来ていませんでした。

そこで考えたのがグループ活動です。同じ便を運行しているドライバ―以外は、ドライバ―同士が会ったことがないということが日常茶飯事でした。そのような状態では結束も生まれないため、学校のようなグループ活動を取り入れました。

取り入れたグループ活動とな?後半へ。

  • 今回取材させていただいた企業様

    会社名
    株式会社誠輪物流
    本社所在地
    埼玉県鶴ヶ島市上広谷本村472-1
    設立
    1996年4月3日
    資本金
    2,500万円
    代表者
    代表取締役社長 野坊戸 薫
    事業内容
    一般自動車運送業、首都圏配送、引越業務、倉庫業、商品管理業務、商品仕分請負業、梱包業、販売業務
    車両台数
    大型15台、中型・小型60台
    コーポレートサイト
    https://seiwa-logi.com/

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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