物流ロボットの利用について

Pen Iconこの記事の執筆者

西村 和洋

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、小売チェーン店、通販企業などの荷主企業の物流改善(委託先企業選定、物流業務設計)、コストダウン、物流拠点戦略の策定などに従事し、特に、IT(情報システムの戦略、設計、構築など)を得意とする。ロジスティクスのコストダウンと品質アップの実現を、物流フロー改善・業務改善・情報システム改善等の多方面の視点から提案している。​​

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物流ロボット導入の背景

通販事業の拡大などの社会状況の大きな変化および今後も進展する少子高齢化に対応するため、国土交通省では社会状況の変化や新たな課題に対応できる「強い物流」を構築することを目的とし、2017年7月28日に「総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)」を閣議決定、物流の生産性向上に向けた6つの視点からの取組を推進することとなりました。

6つの視点のうち、新技術(IoT、BD、AI等)の活用による“物流革命”として、「隊列走行及び自動運転による運送の効率化」、「ドローンの活用」と並び、「物流施設の自動化・機械化」として「ロボット機器の導入を通じて、庫内作業の省人化、現場作業の負担軽減」を進めることが盛り込まれました。

このような施策が盛り込まれた背景としては、通販事業の拡大による人手不足および少子高齢化によるシニア層・女性など成人男性よりも体力の劣る方々のさらなる社会進出を背景とした労働安全衛生の徹底があるといえます。

物流ロボットの導入状況

庫内作業の自動化では以前より自動倉庫やソーターなどの機器が存在しており活用されていましたが、昨今バトラーやオートストアといった機器が注目を集めています。

いずれの機器も保管効率とピッキング効率の向上をもたらしますが、従来の機器との明確な違いは次のようになります。

ピッキング効率の向上に寄与

ピッカーの手元にラックが移動してくることで従来の歩行&ピック作業の歩行部分がなくなり、バトラー、オートストアともに3~4倍以上の生産性向上が見込めるとしています。

これは現状がピック作業時間1に対して歩行時間が2~3になっているということですから、歩行の多いセンターではさらなる改善が見込める可能性もあります。

バトラー

モバイルストレージユニットと呼ばれる独立した保管ラックと搬送機であるバトラーを組み合わせて運用します。

いずれも保管量や必要なピッキング量に応じて機器の台数を増やすことで拡張性を容易に確保できます。

オートストア

ビンおよびロボットがそれに該当します。出荷量が多いときは搬送機を追加投入するだけで搬送機同士が連携して動作する様子はネットワーク網の増設に似ていて、インターネット時代の機器であることを強く感じます。

保管量と作業量の分離

先の歩行をなくすということであればケース自動倉庫やロータリーストッカーなどでも出来たわけですが、機器の標準仕様により保管量と作業量が連動することが多く、柔軟な組み合わせを取ることが難しい場合があります。

一方、バトラーやオートストアでは保管量はモバイルストレージユニットやビン、作業量はバトラーやロボットと役割が分かれているため、保管量と作業量の変化に個別の機器増設で別々に対応することが可能です。

物流ロボット化領域と倉庫運営モデルについて

今後の自動化を考えると、工程面ではピック作業の自動化が次のテーマになるでしょう。

すでにアームロボットを利用したピックは稼働していますが、小物が雑多に投入された棚から目的のものを取り出す技術はまだ人間に優位性があります。

しかし、この分野は画像認識や制御技術がAIにより高度化するに合わせて急速に進化すると考えられます。

また、自動化機器が小型化・安価となり、キャパアップは台数を増やすことで対応することになると、シェアサイクルの様な倉庫運営モデルが出てくるのではと想像しています。

シェアサイクルでは予約や車両管理などのシステムがクラウド化されていて、自転車を現地調達すれば事業を始めることが出来ます。

また、同じシステムであれば別事業者であっても車両の融通も理論上は可能です。

物流センターでも特定のシステムを利用する事業者同士がつながり、保管や作業をやりとりすることで波動対応や効率化を実現できる日が来るのではないでしょうか。

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西村 和洋

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、小売チェーン店、通販企業などの荷主企業の物流改善(委託先企業選定、物流業務設計)、コストダウン、物流拠点戦略の策定などに従事し、特に、IT(情報システムの戦略、設計、構築など)を得意とする。ロジスティクスのコストダウンと品質アップの実現を、物流フロー改善・業務改善・情報システム改善等の多方面の視点から提案している。​​

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