物流(宅配)クライシスの再来?2024年問題まで3年を切った今、何をするべきか

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西村 和洋

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、小売チェーン店、通販企業などの荷主企業の物流改善(委託先企業選定、物流業務設計)、コストダウン、物流拠点戦略の策定などに従事し、特に、IT(情報システムの戦略、設計、構築など)を得意とする。ロジスティクスのコストダウンと品質アップの実現を、物流フロー改善・業務改善・情報システム改善等の多方面の視点から提案している。​​

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物流業界の2024年問題とは

2024年4月より自動車運転業務に対しても時間外労働の上限規制が適用されます。これが、いわゆる「物流業界の2024年問題」と言われているものです。

従来、時間外労働は120時間/月まで可能であったものが、80時間/月までに制限されることになります。これによりドライバーの労働時間は、14%ほど減少することになります。

2024年問題(ドライバーの労働時間は、14%ほど減少する)
2024年問題(ドライバーの労働時間は、14%ほど減少する)

労働時間の減少により、運行効率が業界全体でおそらく10%から最大で25%程度は悪化するのではないかとみています。

トラックドライバーの所得への影響

トラックドライバーの所得に関しては、全産業平均と比べて-7%~-14%の水準にとどまっていることから、労働時間が減少しても所得は維持される見込みです。

また、2023年には月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げが実施されることも加えると、時間あたり所得は20%程度増加することが想定されます。

運賃に占めるドライバー給与の割合が45%~50%であることからも、運行効率が悪化した分の多くは、そのまま運賃に反映されることになるとみられます。

運べない荷物・運行ルートが多発する

2024年問題に対して運送会社の動向を調査すると、運賃アップは当然のこととして、どうしても時間外労働の規制範囲内で運用できない案件については、荷主側で何らかの対策を打たない限りは受けない(受けられない)ということになりそうです。

2024年以降、多くの運べない運行便や運行ルートが多発することが懸念されます。これらの運べない荷物は路線便に流れ、路線便の運賃アップや配送遅延につながることが予想されます。

前回の物流(宅配)クライシスは、宅配便⇒路線便⇒地場運送便の順に波及していきましたが、今回は地場運送便⇒路線便⇒宅配便と逆の流れでクライシスが波及するでしょう。

経営層ならびに物流部門がとるべき対策

2024年問題に対応できない運行便/運行ルートの洗い出し

現状の運行便、運行ルートのすべてについて、時間外労働の上限内で運用できないものを洗い出します。

運用できないものについては、そのレベル感(まったく無理なのか、待機時間をなくせば可能なのか、パレット利用による荷役時間の削減で可能となるのか、など)で整理します。

時間外労働の上限内で運用可能なロジスティクスネットワークの構築

上記の対策だけでは、問題解決が難しい場合、拠点配置の見直しなどを検討する必要がでてきます。待機時間や荷役時間の削減により対応可能であれば、物流センターのオペレーション改善などを踏まえたロジスティクスネットワークの構築を行います。

実際の運用前には1週間程度のテスト運用期間を設け、問題点の洗い出しと改善策の策定を行った上で本番を迎えるようにしましょう。

路線便主体の配送を行っている荷主企業の場合

路線便会社は、大手/準大手の企業が主です。そのため、2024年問題については早期から取り組みを行っている企業が多く、2024年にトラックドライバーの労働時間に起因する問題が発生することはないでしょう。

ただし、運べなくなった荷物が路線便会社に殺到することによる運賃値上げや配送遅延が発生するリスクは極めて高いと考えるべきです。

主要な需要地に貸切便で一括輸送を行い、そこからエリアの地場運送会社を利用した面配送を取り入れることで、路線便への依存度を下げておくことが施策として必要です。

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