商物分離の取組み事例
人手不足、業界構造の変化、法改正など、卸売を中心とする流通業界を取り巻く外部要因は日々刻々と変化を続けています。限られたリソースの中でより多くのパフォーマンスを獲得する「質」の高い経済活動が、重要な企業生存要件の1つであることは自明の理です。
目次
商物分離と生産性向上
「質」を高める ≒ 生産性向上 の解決手段の1つが、分業です。
生産性向上のための分業の考え方は、18世紀英国のA.スミス「国富論」にその端緒を見出すことができ、古くから着眼され研究され続けてきたテーマです。
一方で昨今の日本の卸売業においては商流と物流の分業がなされていない場合が多く、抜本的な生産性向上を妨げる要因の1つとなっています。
※国内卸売業の1時間当たり生産性は4,005円と、全産業の4,594円と比較しても相対的に低い水準にある(公益財団法人日本生産性本部『主要産業の労働生産性水準』2018年値)。
こうした文脈から、本稿では「商物分離」遂行に際しての要点を整理します。
結論、商物分離を遂行していく上で重要なことは「なくす:物流合理化」視点と、「ふやす:営業戦略の再構成」視点の2つです。
商物分離を実現するための取組み事例
なくす:物流合理化=構造改革のための原資と捉える
自社の営業人員が物流業務も合わせて担っていると仮定します。営業人員の本来の役割は「顧客の創出」ですから、「なくす」べきものは物流業務そのものです。
その際、どのぐらいの効果が見込まれるのかについて、具体的な検証が必要です。
・配送及び荷役に営業人員1人あたりどのぐらいの工数が割かれているのかを整理する:構造改革のための原資
・物流業務を実施している営業人員の人件費を整理する(正規・非正規等職種区分があれば峻別する)
・保管費に加え、配送費、荷役費として営業人員の人件費に物流工数率を乗じることで、現状の「物流費」を算出する
・物流要件を整理し、物流業務委託先選定を行う(関連するレポート:物流コンペの評価手法)
・「現状の物流費」-「物流業務委託費」=物流合理化効果:構造改革のための原資
ふやす:営業戦略の再構成=創客、創品
ただ商流と物流を分離させる物流の合理化だけでは、営業人員が手持ち無沙汰になるだけですので、分離によって生じた原資を元に、営業戦略を再構成する必要があります。
売り方の改革には、大きく新規顧客を開拓し増やしていく「創客」、売る商品そのものを変え増やしていく「創品」活動があります。
・創客活動は、物流業務を分離させたことによって生じた余剰工数を、創客活動に充てる
・創品活動は、物流業務を分離させたことによって生じた余剰資金を、商品開発及びサービス内容の拡充の原資とする
商物分離による影響と対策
営業人員がモノを運ばなくなることによって想定される課題は、大きく「サービス品質の低下と受け取られること」、「営業人員にとっての訪問の口実が無くなる」の2点です。
これらは、営業人員がモノを運ばずとも、従来以上にユーザーにとってメリットのあるサービスを提供することで解決します。
そのためにも、ユーザーの悩みにフォーカスした上で、改めて自社の提供価値をゼロから見直す営業戦略の再構成が必要不可欠です。
商物分離の要点は、物流合理化と、営業戦略の再構成の2つのプランを同時並行的に設計していくことにあります。
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