躍進する荷主企業の物流戦略

Pen Iconこの記事の執筆者

渡邉 庸介

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、卸売業、小売業には自社物流戦略再構築支援プロジェクト、業務改善コンサルティングを推進。物流企業に対しては荷主企業のコストダウン要求にこたえるコスト体質強化を中心に活動している。特に中長期の成長戦略を支える物流体制構築に注力し、拠点配置の見直し・SCM構築などの中長期物流戦略立案から倉庫業務改善や契約内容の見直し・業務の見直しなどの実行まで従事してきた。​​

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この1年間で荷主企業からご相談いただいた内容をみると、
物流体制の見直し(物流再構築)の話に集中しています。

過去30年間で日本国内の物流アウトソーシングが大きく進み、荷主企業の物流ノウハウが喪失されたことがその根本にあると考えられます。

ドライバー不足をはじめとした物流環境の変化は、国内の物流キャパシティを縮小させ、需給バランスを大きく変える流れが続くと思われます。

物流体制の見直しとは?

荷主企業は物流環境の変化に合わせた物流体制の見直し(物流再構築)が喫緊の課題です。

そこで問題になるのは解決策ですが、
解決策を考えなければならないのは物流企業ではなく、荷主企業です。

そのため、荷主企業は大きな局面を迎えることになります。
『ノンコア』と位置付けてノウハウを放り出した『物流業務』が、30年前には考えられなかった環境変化によって、営業利益を圧迫する商売の根幹(=『コア』)に移行しました。

荷主企業は、今後の物流環境を予測し、物流体制を再構築する上で、「コストを精査するノウハウ」や「省人化のための物流設計ノウハウ」「物流センター運営ノウハウ」が必須となります。

実務は物流企業にお任せし、戦略策定や改善の方向性、納品サービスの見直しは荷主企業がコントロールすることがこれからの物流の潮流です。

物流体制の見直しに必要な視点

上記のことを踏まえ、荷主企業が物流体制の見直し」(物流再構築)を検討する際に必要な視点は下記の通りです。

物流業務の自社領域と子会社領域、パートナー企業(物流会社)領域の見極め

ノンコアと位置付けて一度はアウトソーシングした物流業務を現在の物流環境に合わせて見直す中で、『自社で保有すべき機能』と『他社リソースを活用する機能』に再度置き替えることが求められています。

そのために必要なノウハウの蓄積や人材育成には時間がかかりますが、国内の物流環境が良化される見通しが無い中で、いち早く自社で保有することが経営リスクを抑制することにつながります。

荷主が得意先に約束する納品サービスの抜本的な見直し

ドライバーは年間2万人減少すると試算されています。このまま進行すると、現在83万人のドライバーも5年後には73万人、10年後には63万人近くに減少することとなります。

約24%のトラック輸送キャパシティが国内から減少する中で如何に自社の商品を市場に供給するのかを検討すると、現在のような手厚い納品サービスを維持できないことは誰でも理解できることです。

その対策として、配送回数の抑制(納品サービスの見直し)を検討することは荷主企業にしかできない取組みです。しかし、この視点に着手するには本当の企業力が問われます。

今後の経営に本当に必要な取り組みを取捨選択し、社内から得意先に発信する力が求められます。

物流コストに対する意識変革

物流コストは今後も上昇することが予測されます。
今までと同様、物流を「コスト」としてとらえていると、ビジネス構造を大きく変えることができず、物流コストの上昇が営業利益を圧迫する「追い込まれた」状態になります。

一方で、物流を利益創出するために必要なコストとして見方を変える企業は良い回転が生まれます。

上記のように見方を変えた企業は、一度は物流コストが膨らんでも、それに合わせてビジネス構造を変革させ売上を拡大していくことで、コストを利益創出に転換することが可能です。

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渡邉 庸介

船井総研ロジ株式会社 エグゼクティブコンサルタント

製造業、卸売業、小売業には自社物流戦略再構築支援プロジェクト、業務改善コンサルティングを推進。物流企業に対しては荷主企業のコストダウン要求にこたえるコスト体質強化を中心に活動している。特に中長期の成長戦略を支える物流体制構築に注力し、拠点配置の見直し・SCM構築などの中長期物流戦略立案から倉庫業務改善や契約内容の見直し・業務の見直しなどの実行まで従事してきた。​​

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