ホワイト物流推進運動とは?
2019年4月、国土交通省・経済産業省・農林水産省は上場企業および各都道府県の主要企業(約6,300社)に対し、「ホワイト物流推進運動」への参加の呼びかけを行ないました。それによりホワイト物流自主行動宣言を行う荷主企業が増加傾向にあります。
ホワイト物流推進運動とはどのような活動なのか、荷主企業や物流企業は具体的にどのような取り組みを行うのか、ホワイト物流推進運動へ取り組むメリット・デメリットなど概要から具体事例まで詳しく解説します。
目次
ホワイト物流とは?
物流業界の業務は過酷なため「ブラックな労働環境」と表現されることがあります。そのような状況の物流業界を、健全で安心できる働きやすい「ホワイトな労働環境」の実現を目指し、ホワイト物流と表現されています。
また、国が推進している「ホワイト物流推進運動」とも深いかかわりを持っています。
ホワイト物流推進運動とは?
国土交通省が、国民の生活や産業活動に必要な物流機能を安定的に確保し、物流業界の労働生産性向上を目指すことを目標に掲げている運動のことです。
ホワイト物流推進運動の背景
トラックドライバーの人手不足や長時間労働が影響しています。
物流業界で働くドライバーの1日当たりの平均労働時間は、荷待ちや附帯作業が要因となり、全産業と比較して2時間以上長くなっています。また、賃金も1~2割以上低くなっています。
これらの点を問題視し、国内の物流停止リスクを回避するために国交省・経産省・農水省が連携し発案しました。
物流企業だけでなく、荷主企業も取引先運送会社のドライバー数の減少や高齢化、コスト上昇に目を向け、取引継続のためにも改善への取り組みが求められています。
ホワイト物流推進運動の目的
「ホワイト物流」推進運動の目的は下記の2点です。
(1)トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化
(2)女性や60代の運転者等も働きやすいより「ホワイト」な労働環境の実現
ホワイト物流推進運動のメリット、デメリット
メリット
・安定した物流機能の維持、さらには向上が見込める
・二酸化炭素排出量の削減
・社内・社外への印象が良くなる
・事業の継続性が向上する
荷主企業
・物流企業から「選ばれる荷主」になれる
物流企業
・人材の確保が行いやすいくなる、人材の定着率が向上する可能性がある
・健康経営につながる
デメリット
・現状の見直しや業務改善、場合によってシステム導入・改良など工数と費用が掛かる
・荷主企業だけ、物流企業だけなど1社単体での取り組みでは限界がある
荷主企業
・物流コストの増加の可能性がある
・リードタイムの増加の可能性がある
・コストやサービス等の面で、仕入先や納品先の協力が得られない可能性がある
物流企業
・荷主企業の協力が得られない可能性がある
・荷主企業からすると、コストやサービス等の面で魅力が低下し、コンペで負けてしまう可能性がある
ホワイト物流推進運動の賛同企業
政府は2019年5月13日にホワイト物流賛同企業の募集を開始しました。同時に、全国の上場企業など6,300社に対して参加要請文を送付しました。
この運動へ賛同表明を行っている企業は、1,315社となります(2021年12月31日時点)。
その内訳は、業態別にみると、製造業、卸売業、小売業、運輸業はもちろん、農業・林業、建築業、情報通信業、電気・ガス・熱供給・水道業など様々です。
都道府県別では、47都道府県全ての企業から賛同表明が出ています。
※ホワイト物流推進運動のポータルサイトから、業態・地域別に賛同企業をご覧いただけます。
賛同企リスト https://white-logistics-movement.jp/list/
ホワイト物流推進運動への参加方法
ホワイト物流推進運動への参加方法は、(1)「自主行動宣言」の必須項目への賛同表明、(2)自社で取り組む内容の選定、(3)自主行動宣言を作成し事務局に提出の3ステップです。
「自主行動宣言」のフォーマットの取得、提出などは「ホワイト物流」推進運動ポータルサイトより行えます。
「ホワイト物流」推進運動への参加手順 https://white-logistics-movement.jp/flow/
ホワイト物流への具体的な取り組み事例
ホワイト物流推進運動で推奨している項目は、全部で6項目あります。
「運送内容の見直し」「運送契約の方法」「運送契約の相手方の選定」「安全の確保」「その他」「独自の項目」です。
具体的には、荷主企業、物流企業ごとに次のような取り組みがあります。
荷主企業
待ち時間の削減
ゆとりを持った入出荷予定や、予約受付システムの導入、発荷主からの入出荷情報等の事前提供、不要な待ち時間が発生しない入出荷時間の調整など。
荷役作業の負担軽減
入荷・出荷の時間を短縮できる物流施設内の導線や作業の見直し。
手積み、手降しなど手作業を減らす(積極的にパレットや折りたたみコンテナ、台車などの活用も有効)。
付帯作業の見直し
運送会社にサービスとして行ってもらっている業務の見直し。実施内容の要否、継続して行ってもらう場合は契約書での取り交わし、費用の支払など。
輸配送の方法の再検討
トラックの利用を減らすために、船舶や鉄道へのモーダルシフトの検討。トラック利用を継続する場合、共同配送の構築も視野に入れる。
物流企業
システム化
現在の業務のシステム化を検討し、担当者の負担軽減、時間短縮、コスト削減を行なう。
付帯作業の見直し
ドライバーが納品先でどのような作業を行っているのか実態の把握。それらの作業の要否、必要な場合は依頼主へ費用の支払を提案。
物流子会社を持つ荷主企業の対応方法
ドライバー数の減少・高齢化や、物流コスト上昇といった問題は、物流子会社を持つ荷主企業(親会社)にとって大きな課題になり得ます。
グループが一体となってホワイト物流を推進するためには、今まで長年やってきた業務の取り決めを見直さなければならないからです。
まず、荷主企業は物流子会社と運送会社の取引状況を把握する必要があります。
取引しているコストレベルと契約内容を確認し、妥当性を持つ契約内容へ変更するよう、指摘する必要があります。実際に、2018年、社員の業務負担軽減を目的に、大手宅配会社が法人の集荷を見直した事例があります。このように、突然運送取引において運送会社から取引停止を要望されるリスクが考えられます。
取引先運送会社に対して不利な条件を突き付けていないか?契約上の運賃は妥当か?今一度、将来の安定的な物流確保に向けて見直すことが求められます。
実走運賃の上昇による利益圧迫が著しい物流子会社にとって、取引先の運送会社との契約の見直しは更に利益を圧迫することになります。
運送会社(物流子会社)単体ではホワイト物流推進運動には取り組みづらいため、荷主企業(親会社)の理解は必須です 。
ホワイト物流推進運動に関する情報
「ホワイト物流」推進運動ポータルサイト https://white-logistics-movement.jp/
ホワイト物流推進運動への参加手順、運動のロゴ、運動に関する資料や情報の取得が行えます。
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