物流オピニオン 2020.03.31

競争力のある物流体制の維持・構築実現に向けた、荷主企業と物流企業の付き合い方とは

〔PR〕サービス/コスト妥当性評価

荷主企業と物流企業の「パワーバランス」

昨今の物流時流のトピックスを見ると、荷主企業と物流企業のパワーバランスが大きく崩れたことが最も大きな事象として挙げられます。物流企業からの強気な運賃値上げ、急な輸送条件変更・業務撤退、等々、物流企業の強硬な姿勢に、荷主企業は右往左往し、その結果従わざるを得ない状況になっています。
しかし、数年前は、荷主企業と物流企業が全く逆の立場であったのではないでしょうか?運賃の値下げ要求、突発オーダー・緊急オーダーの頻発、ドライバーの付帯作業等々、物流企業が当たり前のように対応してくれることが常態化していました。いざ、それまでのサービスが提供できなくなると、最悪の場合は取引存続の見直しも止む無しという状況もあったのではないでしょうか。
物流企業も荷主企業との取引がなくなること(仕事がなくなること)を恐れていました。しかし、今では収益改善が見込めない荷主に対しては、業務撤退する物流企業も少なくありません。直近では、国内の荷量が落ち込んで、運賃を下げてでも荷物を取りにいく物流企業もいますが、それは一過性のものにすぎません。

そもそも、荷主企業と物流企業の「パワーバランス」という言葉自体が物流における力関係が露呈している印象を受けます。どちらか一方が優位、不利になるのではなく、win-winの関係を築き、お互いに成長をしていく関係性が必要です。運んで当たり前の時代から、どうしたら運んでもらえるのか荷主企業自らが考えていかなければならない時代へと変化しています。
物流は荷主企業の事業が成長するうえで重要な戦略の一つへと確実にシフトしています。そういった中で、時代の流れ、市場の変化に適用しながら、物流企業とどのような関係を保てばよいのか再度見つめ直す時期に来たと言えます。

競争力のある物流の維持・構築のために、長く、良い関係を築くポイントについて、考察をしていきます。

物流コストの妥当性を知る

「現在、物流企業と契約している運賃、倉庫料は妥当でしょうか?」私たちのクライアントである荷主企業から一番多い相談内容が物流コストの妥当性です。
船井総研ロジではこれまで1,000社を超える荷主企業と物流企業の契約・料金表を見てきました。エリアで比較すると一部、市場より高い料金が見受けられましたが、全体を通して見ると、荷主企業の7割以上が市場と比較して圧倒的に廉価な料金で契約していることが実態でした。これはボリュームを活かして競争力のある価格を享受できていたこととなります。
しかしその反面、いつ値上げ要請がきてもおかしくないというリスクがあることをしっかり認識しなければなりません。荷主企業にとっては現在の物流委託先が全てであり、他社がどのような料金レベルで契約しているかを把握することは難しいでしょう。そのため、荷主企業側で施策的に物流委託先を変更するとなった際に、物流委託先候補より出てきた見積が既存より高い金額で提示されて驚いたことが少なからずあるのではないでしょうか。

契約当初は相場相当の見積価格であったとしても、そこから時間が経過すると、相場も当然ながら変わります。消費税の増税や、原料調達コストアップにともない商品価格が改定されることと同じように、物流コストも市場の変化に合わせて変動します。運賃値上げ分の原資はドライバ―確保のための資金源(採用コスト、給与アップ)、事業継続のための投資(車両の購入・メンテナンス、燃料購入、傭車先確保)として活用されます。

荷主企業は、値上げの時流を理解しながら、物流企業からの値上げ要請に対して、その妥当性を見極めることが求められます。値上げはやむを得ないといいつつも、市場価格と乖離した数字以上の値上げについては、理由を明確にすることも含めて、荷主企業から値上げ幅の交渉を行うことも必要です。

以下は2018年以降に物流企業から運賃の値上げ要請を受けた荷主企業に対してアンケートを取った結果です。物流企業から要請を受けた値上げ率と最終的な妥結率(値上げ幅)についてまとめました。

2018年以降に発生した物流企業からの運賃値上げ要請(値上げ率)と交渉結果(妥結率)
※2019年2月~2020年2月に開催した当社セミナーに参加した荷主企業を対象にアンケートを実施。132名の回答をもとに集計

物流企業からの「運賃値上げ要請6~10%」が最も多く42%と全体の約半数を占めています。妥結率としては要請通りの「運賃値上げ要請6~10%」が36%と最も多く、次いで「運賃値上げ要請5%以下」が33%でした。

このように物流企業からの値上げ要請も多様であり、妥結内容に偏りがあることも、アンケートの集計によって見えてきます。他社と比較した市場動向を知るという視点は自社の動きを決めるうえでも非常に大事なポイントです。しかし、現在の契約運賃が1,000円の10%と10,000円の10%では、運賃値上げのインパクトが大きく変わってきます。値上げ幅(率)だけではなく、取引状況を鑑みた見極めも必要です。

物流企業の「通信簿」をつける

物流コストと同様に、荷主企業は現在取引している物流企業の情報しか知らないため、物流の取組に関しても現状が基本となっています。物流企業との付き合いが長いと、「言われたことは対応してくれるが、それ以上の提案がない」という意見になりがちです。

荷主企業がこのように感じる要因としては、物流企業の志向や荷主企業との取引関係に影響しています。「新しい物流センターを探している」「物流コンペを開催するので参加してほしい」「共同配送の構築をしたいので一緒に組めないか」といった、荷主企業からの「要望」がきっかけで行動に移す物流企業は、どうしても受け身の姿勢になりがちです。この関係性が、「言われたことは対応してくれる」という、荷主企業の根幹につながっていると考えます。
物流企業としても「言われたことを対応する」だけでは、今日において物流企業が選ぶ側の立場になりつつある状況だとしても、将来長い目で見たときに、荷主企業から選ばれなくなります。自社の得手不得手をしっかり把握し、得意分野を活かし、荷主企業にメリットとなる提案を明確に打ち出していくことが必要となります。

これに対して、荷主企業は物流企業のパフォーマンスや取組の姿勢についてしっかりと評価をする必要があります。物流コンペで委託先を新たに選定する際には、評価シートを作成してコストと品質・サービスレベルの評価を行います。しかし、いざ、新しい委託先が決定し稼働すると、委託先を評価するという行為自体がなくなってしまいます。決められた契約期間で守られているという中であっても、物流企業から積極的な提案や行動をしてもらうためにも、物流企業の「通信簿」をつけることを推奨します。実施の頻度としては1年単位でよいでしょう。事前に物流企業と取り決めた評価の項目を作成し、評価を行います。
物流実務としては、事故発生率や時間内での対応状況、品質・改善提案面では提案件数や報告書類の提出期日遵守率等の項目で評価を行います。エリア、拠点、事業部単位で評価をするのもよいでしょう。最終的に評価した内容を物流企業へフィードバックします。この結果を受けて、次回契約更新時の荷主企業内での判断の素地として活用するのもよいでしょう。荷主企業として物流企業の取組姿勢を会社全体として共通認識させることが重要です。

自社の物流を客観評価する

これまで、物流企業を評価する仕組みについて紹介しました。更に必要な評価が、自社の物流を評価することです。物流企業の「良い・悪い」の評価結果は、実は荷主企業の取組に影響しているかもしれません。自社を客観評価することで、物流企業との付き合い方や、物流企業からの改善提案が出てこない理由が見えてくる可能性があります。

自社の物流を客観評価するうえでの項目例としては、以下が挙げられます。

(1)組織を評価する

物流統括部署の有無や経営層および社内各部門の物流に対する理解度や認識について評価します。物流を戦略の一つとして取り組むのであれば、プロジェクトではなく専門部署を設置し、取り組むべきです。また、物流は荷主企業の本業(販売、生産)を横断して発生するものです。経営戦略を踏まえた物流戦略となっているか改めて確認する必要があります。

物流部門にいる担当者は理解していますが、その他の部門に所属している方は物流に対する現状や将来的なリスクに関する認識はほとんどありません。指示を出した通りの条件、時間、日時に運んでもらうことが当たり前だと思っている方が大部分でしょう。物流事情の理解を深めて「自社を取り巻く環境を知る」「イレギュラーを抑制する」ためにも、定期的に物流勉強会の開催や物流ニュースレターのように社内への情報発信を行う必要があります。

これらの活動を進めるための組織の存在有無、組織がある場合には機能しているか、社内各部署へ物流時流の理解・浸透のための取組ができているか、このような視点で客観評価を行います。

(2)コストを評価する

物流企業からの値上げや現状の契約単価の適正評価だけではなく、現状発生している物流コストを正しく認識しているかということです。売上対物流費比率、納品先別物流費、営業担当者別物流費といった切り口です。

売上の大小関わらず同じ品質の物流サービス、過剰な物流サービス、高コストな物流サービスを提供していませんか?そもそも、過剰なサービスと通常のサービスの違いを明確にしているでしょうか?お客様の要望に応えることがサービスであることから、そのサービスが過剰か否かの判断は難しいでしょう。
その場合に判断する軸が、物流コストです。どのような物流サービスを提供すると、どれぐらいの物流費が発生するのか。その物流費は売上維持にあたり本当に必要な経費なのか、社内各部署の認知度と理解について評価を行うことが必要です。

(3)コンプライアンス面を評価する

製品の保管を委託している倉庫は営業倉庫の免許を取得していますか?危険物を保管している倉庫は危険物倉庫ですか?物流委託先の与信は問題ないですか?
これらを知らずに物流取引をしていたとしたら、荷主企業にとって大きなリスクです。たとえ相手企業に非があったとしても、必要なときに製品がお客様へお届けできない(倉庫から製品を出すことができない)ことがあると、事業継続に支障をきたします。
物流企業に任せっきりにせず、荷主企業としても大事な製品の取り扱いを委託する物流企業の経営状況、取得免許の有無・種類について把握する必要があります。

物流業務を委託するにあたり、コンプライアンス面での管理ができているか、物流面でのコンプライアンスを把握しているか、評価を実施します。

まとめ

競争力のある物流を維持・構築するためには、荷主企業と物流企業がうまく付き合う必要があります。そのためには物流業界の時流や状況を踏まえたうえで、荷主企業が物流企業を正しく「評価」する必要があります。そして、その評価は物流企業に対してだけではなく、自社の物流に関しても、「客観評価」が必要になります。

双方の評価をすることで、今後の改善すべきこと、そこから目指すべき目標が見えてきます。まずは物流企業、自社の「評価」から実施することをおすすめします。

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サービス/コスト妥当性評価

概要
個建荷役単価・個建保管単価の妥当性を定量・定性分析を基に解明いたします。自社の物流コストの妥当性を知ることで、時流に応じた対応が行えます。
詳細
https://www.f-logi.com/ninushi/service/assess-costdiagnosis/

Pen Iconこの記事の執筆者

田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 シニアコンサルタント

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