ドライバー平均給与公開。最低賃金の上昇とこれからの賃金トレンド
全日本トラック協会が、2024年度版「トラック運送事業の賃金・労働時間等の実態調査」を公開しました。
目次
大幅な賃上げと「月収40万円」時代の到来
これによると、2023年度の全体平均賃金は367,400円、2024年度は388,700円と、5.8%の賃金上昇が見られました。2023年度までは減少傾向が続いていましたが、人材不足や物価上昇、最低賃金の引き上げなどが影響し、今年度は大幅な増加となりました。
男性運転者に絞ってみると、2023年度が378,800円、2024年度は404,100円と、ついに40万円台を突破しています。車格別に見ると、「けん引」が460,800円、「大型」420,200円、「中型」356,300円、「準中型」392,300円、「普通」404,600円という結果でした。
なお、中型については、ユニック車などの特殊車両が集計に含まれていないため、他の車格に比べて平均値が低く出ていると考えられます。このように、ほぼすべての車格で月額40万円前後が標準的な水準となりつつあることがわかります。
賃上げの裏で進む構造変化:固定給は増え、歩合給は減少
賃金の内訳を見ると、固定給は193,500円から210,500円(+8.7%)に、変動給も140,000円から149,800円(+7%)に上昇しています。一方で、変動給の内訳を見ると、歩合給が69,800円から67,300円、その他手当も15,000円から9,900円へと減少しており、代わりに時間外手当が55,200円から72,600円へと増加しています。
この傾向からは、人材確保や最低賃金上昇に対応するため、企業が固定給を引き上げ、歩合給を抑える方向に動いていることが読み取れます。これまで、こうした調整によって賃金総額の上昇を抑えてきた企業も、その手法だけでは限界に達しつつあると言えるでしょう。
未来への提言:「貢献度」で評価する戦略的賃金制度への転換
そして、この動きは今後さらに加速すると見られます。
というのも、2025年度の最低賃金は全国加重平均で過去最大の6.3%(+63円)引き上げられ、全都道府県で時給1,000円以上を達成する見込みとなっているからです。政府は「2020年代中に全国平均1,500円」という目標を掲げており、その実現には今後もさらなる引き上げが不可避です。
こうした状況下では、固定給の上昇を避けることは困難であり、その分、歩合給の割合を下げざるを得なくなっていきます。しかし歩合の比率が下がると、個人ごとの成果差が給与に反映されづらくなり、歩合給が本来持っているインセンティブ”としての意味が失われてしまいます。
そうなる前に、賃金制度そのものの再設計が必要です。これまでのように、「売上」や「走行距離」に比例して賃金が増える歩合給制度から脱却し、能力や貢献度に応じて評価する人事評価制度への転換を進めるべきタイミングが来ています。
そうすることで、単なる一律の賃上げではなく、優秀な人材にはしっかり報いる仕組みができ、結果的に「定着率の向上」「人材育成の促進」につながるでしょう。今後も賃金の上昇は続くと予想されます。だからこそ、ただ「上げる」だけで終わらせず、自社の未来に投資する“戦略的な賃金制度”へと進化させることが求められています。
さいごに
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