SDGsと物流|今すぐに取り組める事例と社会貢献

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船井総研ロジ株式会社

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近年、地球環境への意識の高まりを受け、投資家・顧客・その他ステークホルダーはESG (Environment-環境、Social-社会、Governance-ガバナンスの略称)を優先するようになりました。

上記のように投資の判断基準に「ESG」が加わったことで、企業の長期的な成長のために「ESG」に取り組む企業が増えています。その中で、ESGの実現を支援する手段の1つとして、「SDGs:Sustainable Development Goals)」に注目が集まるようになりました。

SDGsとは何か?

SDGsは、2015年9月の国連サミットで採択されました。国連加盟国193か国が2030年までに持続可能な世界を実現する国際目標です。※2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として, 17の目標と169のターゲットから構成されています。

参照:「SDGsとは?」|外務省

SDGsは、政府、企業、個人を含む世界のコミュニティによる集団行動を通じて、世界の体系的な経済、社会、環境問題と向かい合い、課題解決することで持続可能な未来を築くことを目的としています。日本語で、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)を訳されることもあります。

日本全体におけるSDGsへの取り組み状況

毎年、各国のスコアが発表され、前年との比較などができます。2020年版世界のSDGsランキングで、日本は166カ国のうち、17位でした。高いランクとなっていますが、以下の「2020年版日本におけるSDGs達成状況」(図1)で見る通り、課題が残っている項目も少なくありません。

2020年版日本におけるSDGs達成状況|船井総研ロジ株式会社
図1:2020年版日本におけるSDGs達成状況;出所:持続可能な開発レポート(SDR)2020、ケンブリッジ大学出版局

例えば、目標13:「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に関しては「大きな課題が残っている」評価になっています。早急に課題解決に向けた取り組みをする必要がある目標の1つです。

ヨーロッパのSDGs取り組み状況と事例

2020年版世界のSDGsランキングの実績を見ると、上位にランキングしている国の全てがヨーロッパの国です。1位~5位までの国とスコアは以下の通りとなっています。

※( )内はスコア。100点満点

1位:スウェーデン(84.7)
2位:デンマーク(84.6)
3位:フィンランド(83.8)
4位:フランス(81.1)
5位:ドイツ(80.8)

上位にランキングされている国の実績を見ても、やはりCO2排出量に関わる「目標13」の取り組みが足りていないことが共通点となっており、これからの取り組みが期待されます。

SDGsの達成まで3分2の期間しか残されていない

SDGsは2015年から2030年の間に達成すべきということは、達成まで期間の3分の1がすでに過ぎているということです。それにもかかわらず、日本ではSDGsに注目が集まり始めたのは最近です。

2019年に世界経済フォーラムが実施したSDGsの認知度調査によると、日本でSDGsのことを「聞いたことがある」と答えた人は49%で、調査に参加した28ヶ国の中で最下位という結果でした。(出所:世界経済フォーラム、2019年8月の世界市民における国連SDGsの知識と重要性の認識)

2030年までに、日本中の企業が協力し、目標達成に取り組んでいくことで、環境と社会を最適な状態に変えていくことを目指しています。

環境へのリスク、経済へのリスク

環境問題の中でも、最も注目を集めていることは、二酸化炭素(CO2)排出量の増加です。二酸化炭素(CO2)の排出によって、気候変動の影響が拡大し、様々な環境破壊と社会トラブルを引き起こしています。

例えば、水資源不足と農業生産減少、森林火災の増加・長期化、野生生物の絶滅などが挙げられます。また、人間の健康に重大な被害を及ぼす「大気汚染」なども課題です。

大気汚染は、喘息、糖尿病、慢性呼吸器疾患の発生率が上昇します。それらが長期化すると労働力の低下にもつながります。大気汚染には、世界のGDPの2~4%に相当する経済的な影響があると推定されています。

物流でいえば、異常気象の頻発は、インフラストラクチャに損害を与え、サプライチェーンを混乱させる可能性があります。また、物流の過程で発生する二酸化炭素(CO2)の排出を最小限に抑えるといった取り組みも実践してく必要があるでしょう。

物流業界のSDGs取り組み事例

以下、環境面から見た「現在の物流業界の課題」と、荷主企業・物流会社の取り組み事例、改善可能な項目を紹介いたします。

SDGs 目標7:すべての人々に安価で信頼できる・・・

まず1つ目は目標7:「すべての人々に安価で信頼できる、持続可能な近代的なエネ ルギーへのアクセスを確保する」です。。

これには、物流センター内のエネルギー効率などの問題解決が含まれます。倉庫内で発生している電力コストは売上高の約2%(出所: 一般社団法人エネルギー情報センター, 運輸業,郵便業のエネルギー利用量の目安)です。

具体的にどの部分で多くのエネルギーを使用しているかを分析し、エネルギー使用量を削減する方法を検討する必要はあります。省エネルギー化に取り組んだ企業の中では、使用量50%削減できた事例もあります。

エネルギー使用量削減の事例として、エネルギー消費を最適化するため、室内灯にモーションセンサー、LED、太陽光発電などが挙げられます。

また、再生可能エネルギーの使用は日本では2012年~2016年まで年平均26%増加しています。なお、アスクルやアマゾンなどの大手企業は既に物流センターで再生可能エネルギーを導入しており、今後は拡大すると予測されています。

再生可能エネルギー などによる設備容量の推移、 経済産業省 資源エネルギー庁|船井総研ロジ株式会社

参照:再生可能エネルギーなどによる設備容量の推移(経済産業省 資源エネルギー庁)

SDGs 目標11(都市形成)と13(緊急対策)

次に、目標11: 「包摂的で安全かつ強靭で持続可能な都市及び人間居住を実現する」と目標13:「気候変動及びその影響を軽減するための、緊急対策を講じる」について解説します。

上記2つの項目は、大気汚染の原因であるCO2排出量を削減する狙いがあります。

日本における二酸化炭素排出|船井総研ロジ株式会社
日本における二酸化炭素(CO2)の排出元「国土交通省総合政策局環境政策課、運輸部門における地球温暖化対策」をもとに船井総研ロジが作成

日本の物流業界における二酸化炭素(CO2)の排出といえば、「トラック輸送」のイメージが強いと思いますが、物流センターの業務でも二酸化炭素(CO2)が排出されます。そのため、輸配送と物流センターの両方が対象です。

国土交通省のデータによると、2018年度における日本の二酸化炭素(CO2)の排出量(11億3,800万トン)のうち、運輸部門からの排出量(2億1,000万トン)が18.5%を占めていることが分かります。そのうち、貨物自動車が36.6%(日本全体の6.8%)を排出しています(出所:国土交通省総合政策局環境政策課、運輸部門における地球温暖化対策)。

地球の資源に対する責任

最後は、目標15:「陸の豊かさも守ろう」。この目標に紐づいているターゲット15.2「あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる」についてです。

地球の資源に対して持つべき責任のことです。サプライチェーンの中で言えば、包装廃棄物の削減、水の使用量の削減、材料のリサイクル、持続可能なエネルギー源の使用などの方法が考えられます。

例えば、「包装廃棄物の削減」では業務を行う上でなるべく再利用可能な素材を選択し、使用するように意識する必要があります。一つの例として、物流業務で使用する段ボールを再利用可能な箱に変更することや、使い捨てのストレッチフィルムをなるべく使わずに、再利用可能のエコバンドを選択するというイメージです。

「再利用の素材ではないが、リサイクルをしています」というケースもありますが、実際にリサイクルをするとCO2が排出されます。また、再利用の物を使用することは環境の面でも理想的ですし、長期で見た場合、コスト削減にもつながります。また、最近話題になっていることは、素材の再利用を行い、元の製品よりも次元・価値の高いモノを生み出すことを目的とする「アップサイクル」もあります。

また、燃料も資源の一つであり、輸配送でいえば、燃料の消費効率も該当します。トラック運送の場合はエコドライブ、輸配送モードの見直しなど、目標12、13と似たような取り組みがあります。 以上をまとめると、改善を考えるべき大きな項目はエネルギーの持続可能性、CO2排出量の削減、材料・廃棄物の削減です。

物流業界におけるSDGsのファーストステップ

SDGsへの取り組みを考えている企業は、まずは自社でどこから取り組めるか分析し、目的を設定すべきです。どの目標から取り組むかを決めて、具体的に計画に落とし込む必要があります。

目標が決まったら、ファーストステップの段階では以下の活動を参考に取り組みを進めましょう。

(1)可視化

SDGsを達成するためには、荷主企業がサプライチェーンに関与するすべての施設を把握することがスタートになります。調達から最終納品先までのすべてのプロセスを把握し、全体を通した改善を実行することで、持続可能なサプライチェーンを構築できます。可視化することで、改善できるところが見え、課題のあるすべての拠点や業務において解決に向けた取組を進めることができます。一つの手法として、データで必要な情報を蓄積し、分析ができるようにすることです。

(2)標準化

荷主企業の荷物を扱っている物流センターで標準化が浸透していないと、一部のセンターではエネルギー効率はよくて、その他のセンターで効率が悪いという状態になります。一番効率の高い運営方法を見つけて、すべてのセンターで基準として導入することが理想的です。しかし、センターによって違いがあり(例えば、マテハン、設備の差や運営組織の差など)、すべてのプロセスを全く一緒にできないとこもあるかもしれません。可能な限り、効率を上げるためのシクミ、エネルギー削減のための取り組みなどを標準化にし、コストを抑えながらSDGsも意識的に取り組むことが必要です。

(3)コミュニケーション

ここでは、社内と社外の2つのコミュニケーションが含まれています。社内では、SDGsに取り組むに当たり、部署間のコミュニケーションが重要です。例えば、モーダルシフトを可能にするために、生産計画などの情報共有が必要になってくるため、生産部、営業部、物流部で密にコミュニケーションを取る必要があります。

社外でいえば、物流会社へ配送を委託する場合、物流会社と協力し、配送を見直して、CO2削減へ取り組む必要があります。業務要件に加えて、特定の要件が設定される理由(SDGsを満たすための企業目標など)を共有すると、参加の可能性が高まります。

SDGsへの取り組みの意識が物流会社の中で進んでいるのですが、荷主企業からそのような依頼があると効果的です。まず荷主企業から委託先にSDGsの取り組みに協力することを依頼してみてはいかがでしょうか。

(4)測定、報告

持続可能なロジスティクスに向けた進歩を確実にする1つの方法は、エネルギー消費とCO2排出量を測定することです。まずは、ベースラインを測定し、次に目標と期間を設定することで、定期的に目標どおりに達成できているかを確認します。

また、達成できたことを報告することも重要です。SDGsの取り組みを始めてからの成果を報告することによって、投資家、顧客、その他ステークホルダーが明確にその企業の努力を知ることができます。 SDGsに取り組んでも荷主企業にとってメリットあるのか?と思うかもしれません。

企業としての社会への責任は確かにありますが、それ以外にも荷主企業にもメリットがあります。使用エネルギーの削減や配送の効率化をすることで、大幅なコスト削減に繋がる可能性があるのです。

さいごに

顧客やステークホルダーから見たら、企業が評価され、企業への信頼が高まることもメリットの一つです。環境を保護し、コスト削減、評価向上もできるのです。まずは、SDGsを知ることから始め、自社の活動として取り組みを広げていきましょう。

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