内航船輸送の現状とこれから

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朝比奈 実央

船井総研ロジ株式会社
ロジスティクスコンサルティング部

2024年を翌年に控え、長距離トラックドライバーの人員不足はいよいよ目前の課題として迫ってきています。自社のESG経営を推進するうえで、トラック輸送で担ってきた長距離輸送の代替手段として、モーダルシフトを検討されている荷主企業の物流担当者も多いのではないでしょうか。そこで今回は、モーダルシフトのうち、内航船輸送に関する、基礎情報と業界の現状、今後の見通しについて解説します。

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そもそも、トラックや飛行機、貨物鉄道と比較して、内航船輸送にはどのような特徴があるのでしょうか。以下、内航船輸送のメリット・デメリットをまとめました。

内航船輸送のメリット

1.定時性の高さ

内航船のメリットのひとつは、定時性の高さです。航路によって状況は異なりますが、基本的に年間の欠航率は5%未満と言われています。台風が発生した際でも、鉄道のように長期欠航となることはあまりありません。輸送の定時性が高いため、荷物の安定輸送という点は、安定供給の使命を背負った荷主の物流部には重要なポイントです。ただし、台風シーズンである7~9月や、船舶の定期修繕(通常2~3週間程度)のタイミングで一定期間の欠航が想定されます。定時修繕は事前にスケジュールが公開されていますので輸送計画時に確認することが可能です。

2.大量輸送&コスト抑制が可能

2つめのメリットは、大量輸送とコスト抑制が可能ということです。令和2年度の国内輸送機関別輸送量に占める内航海運のシェアは、輸送量では7.4%ですが、輸送活動量(輸送トンキロ:輸送量×輸送距離)では約40%にも及びます。これは、内航海運が特に長距離・大量輸送に適した輸送機関であることを意味しています(注1)大量輸送が可能になると配送効率が高まり、配送コストの抑制が可能になります。

 ただし、コストアップを抑制できるのは長距離輸送の場合で、中近距離の輸送を内航船で行う場合は逆にコストアップになる可能性があるため、注意が必要です。

日本内航海運組合総連合会「内航海運の活動」 より船井総研ロジ作成
(図1:日本内航海運組合総連合会「内航海運の活動」 より船井総研ロジ作成)

内航船輸送のデメリット

1.リードタイムの悪化

内航船輸送における懸念点のひとつは、リードタイムの悪化です。これは港から港までの輸送時間だけでなく、湾港での搬入・搬出・積込にかかる荷役時間や待機時間、集荷元から港、港から配送先までの配送(ドレージ)時間なども必要になるためです。

内航船を使用する場合は、緊急性の高い商品とそうでない商品の選別や、リードタイム延長に伴うオペレーション変更(例 小売業界であれば、店舗納品日の変更や庫内作業フローの変更など)も併せて検討する必要があります。

2.有事の際の輸送サービスレベル低下

2つめの懸念点は、有事の際の輸送サービスについてです。内航船の場合は、欠航が発生した場合でも、内航船事業者が提供する運航には代替輸送(鉄道やトラックでの輸送)がサービスとして含まれていない場合があります。その場合、基本的には欠航した期間だけ配送が遅れることになるため、自社で代替輸送の手配・準備をしておく必要があるという手間がかかります。前段のリードタイムと併せて、BCP視点での準備が必要です。

内航海運で使用される船舶について

内航船輸送の導入には、自社の荷物に適した船舶を選択することが必要になります。ここでは内航海運で使用される船舶を3種類挙げ、それぞれの特徴をご紹介します。

コンテナ船

コンテナ船とは、海上コンテナを輸送する貨物船です。荷物を積んだトラックを輸送するRORO船やフェリーと比較すると、船のスペースを最大限活用できるため積載率が高いことが特徴として挙げられます。また、輸送品質やリードタイムの制約が少ない商品(例 原料や資材など)は1度に大量の荷物を運ぶことができるコンテナ船を使用すると、輸送効率が高まり、輸送コストを抑制することができます。
一方、高い輸送品質が求められる商品(精密機械など)やリードタイムを要求される商品(新商品など販売日が決まっているものなど)はコンテナ船での輸送には適さないと言われています。これは、コンテナをクレーンで作業する際に商品破損の可能性があることや、陸送や他の貨物船等と比較して輸送に時間を要するためです。

(ESGコラム写真1:コンテナ船|船井総研ロジ株式会社)
(写真1:コンテナ船)

RORO船

RORO船とは、トラックやトレーラーが自走して乗り降り可能な貨物船のことです。RORO船は、トラックが自走できるため荷役が短縮されること、荷役の安全性が高まることがメリットです。一方、車両ごと船に載せるので、コンテナ船と比較すると積載率があまりよくないという欠点もあります。

(ESGコラム写真2:RORO船|船井総研ロジ株式会社)
(写真2:RORO船)

フェリー

フェリーは旅客と自動車を同時に輸送する船舶です。基本的に貨客混載のため貨物専用船ではありませんが、内航海運における輸送手段のひとつです。フェリーは揺れが少なく輸送品質が高いため、精密機械の輸送に適しています。また、トラックと遜色ないリードタイムで輸送できる航路もあり、輸送需要の多い輸送手段のひとつであるといえます。しかし、貨物輸送が可能なフェリー航路は国内で15航路しかなく(注2)利用可能な枠が少ないため、航路によっては定期利用枠を確保する難易度は上がっているようです。

(ESGコラム写真3:フェリー|船井総研ロジ株式会社)
(写真3:フェリー)

内航船の利用可能枠の現状

最後に、実際に内航船輸送の導入を検討するにあたり把握しておきたい、内航船の利用可能枠の現状について解説していきます。

内航船の利用枠は、内航船を利用するのが平日か土日(週末)か、地方発か東京発かによって空き状況が異なります。基本的に平日および東京発着は枠が埋まりやすく、土日および地方発着の便は比較的空きがある場合が多いです。これは、工場の稼働がある平日は定期契約している既存顧客の荷物で、逆に工場の稼働がない土日は定期契約の枠確保がないため新規顧客にとっては利用可能なスペースが残されているためです。

また、東京や大阪といった大都市発着の航路は輸送需要が大きく、人気航路であるため、地方発着の便と比較すると利用枠が埋まりやすい状況となっています。ただし、内航船の利用枠は状況によって常に変動するため、スポット利用の際は船会社と調整のうえ、輸送枠を確保することが可能です。

スポット利用ではなく定期利用を検討している場合(定期的な内航船の利用を検討している場合)は、新規の利用枠を確保するには数か月かかる場合があるので注意が必要です。これは、スペースを確保するための既存顧客との調整や、コンテナやシャーシといった機材の準備期間が発生する可能性があるためです。そのため、自社で使用すると想定される港と航路の状況について提携している物流会社等を通じて早めに運行事業者に問い合わせて情報収集しておくことをお勧めします。

内航船業界における課題

ここまで内航船輸送の特徴や、導入にあたって知っておくべき内航船業界の現状についてお伝えしました。内航船の導入は、今後困難になると想定される長距離輸送の代替手段として、また近年急速に拡大しているESG経営を実現する手段として、大いに効果的な輸送モードであることは間違いありません。


一方、内航船業界では、慢性的な船員不足および船員の高齢化が進んでいます。実際、50歳以上の内航船員の構成比は48.7%と約半数を占めています。(注4)日本の労働人口が減少しつづけていることも加味すると、人手不足を補う観点から、今後内航船業界でも自動化・省人化が進展すると想定されます。運航事業者を選定する際は、船員の安定的確保ができているか、または今後を見据えて荷役の自動化・省人化に取り組んでいるかも、物流担当者が確認しておきたいポイントとなります。

モーダルシフトを検討する荷主企業の皆様におかれましては、本記事でお伝えした内容と自社の荷物の物量・出荷頻度・荷姿・リードタイムなどの物流条件を総合的に勘案し、モーダルシフトへの転換を検討していただければと思います。また、現状の物流条件にとらわれることなく、安定した供給体制を維持するためにも、内航船の利用ができるよう荷主企業自ら働きかけることも必要です。

例えばリードタイムといった納入条件関して、着荷主と交渉することで、輸送手段の幅が広がる可能性があります。安定供給するための阻害要因は何か、交渉の余地はあるのか、という点も意識しながら、輸送手段の幅を広げていく検討をすることをおすすめします。

(図4:「内航船員の年齢構成比」内航海運組合総連合会より船井総研ロジ作成)
(図4:「内航船員の年齢構成比」内航海運組合総連合会より船井総研ロジ作成)

<参考文献>
注1・3:「内航海運の活動 令和4年」 / 日本内航海運組合連合会
注2:日本長距離フェリー協会
注4:「内航船員の現状」 / 日本内航海運組合連合会

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