物流DXとは?物流業界を変える取り組みの概要から具体的な事例まで解説

物流DXとは、物流業務の機械化・デジタル化を図ることで、物流のあり方そのものを変えていく取り組みのことです。この記事では、物流DXの概要から、物流業界で求められている背景、具体的な取り組みの事例などについて解説します。小口配送の増加や人手不足など、物流業界はさまざまな課題を抱えています。課題解決に取り組んでいる企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。

物流DXとは?物流業界を変える取り組みの概要から具体的な事例まで解説

物流DXとは?

-概要から具体事例まで解説-

物流DXとは

物流DXとは、物流業務の機械化・デジタル化を図ることで、物流のあり方そのものを変えていくことです。具体的には、デジタル技術やデータなどを駆使し、自社サービスやビジネスモデルの変革に取り組むことで、業務や組織、企業文化などを変え、競合他社に対する優位性を確立していきます。また、機械化・デジタル化によって既存業務のオペレーションも改善されるため、働き方改革の実現も期待できるでしょう。


物流DXが求められる背景

物流DXが求められている背景には、物流業界が抱える課題が挙げられます。ここでは、物流業界全体の具体的な課題について解説します。

小口配送の増加

近年では、Amazonや楽天市場といったインターネットショッピングの利用が増えていることもあり、小口配送が増加しています。また、新型コロナウイルスの影響で外出自粛が増えたこともあり、小口配送の需要はますます高まっている状況です。小口配送では、短時間での配送が求められるため、これまで以上にスピード感が重視され、物流業界の負担はどんどん大きくなっています。さらに、小口配送が増えることで、人員が必要となりますが、十分な人員確保ができておらず、一人ひとりの負担が大きい状況です。また、再配達となるケースもあるため、業務の非効率化に拍車をかけています。

労働力不足

物流業界は労働力不足が深刻な状況にあります。国土交通省によると、トラックドライバーの不足を実感している企業は増加傾向にあり、労働力の不足の状況は他の産業よりも高くなっています。ドライバーは、物流業界に欠かすことのできない人材ですが、人手が足りないとなると企業の売り上げにも影響を及ぼすでしょう。さらに近年ではトラックドライバーの高齢化も大きな問題となっており、今後退職などによって労働力不足がさらに深刻化する恐れもあります。

倉庫の空き状況

小口配送が増えたことで、物流倉庫では、たくさんの荷物が常にある状態となり、倉庫の空き状況が不足する恐れがあります。十分なスペースがないために、対応できない業務が発生する可能性もあるため、売上への影響も懸念されます。

このように、物流業界ではさまざまな課題を抱えており、それらの課題を解決する方法として物流DXが期待されています。

物流DXを推進する具体的な取り組み

ここでは、実際に物流DXを推進する際にできる、具体的な取り組みについて解説します。何をすればいいのかいまいちわからない、といった物流会社の担当者はぜひ参考にしてください。

AIを活用した配送ルートの管理

商品を配送する場合、これまではドライバー自身の経験などに基づいて配送ルートが決められていましたが、AIを活用して配送ルートの管理を行うことで、より効率よくルートを決めることができます。AIに配送ルートを読み込ませ、最適なルートを提示されることで経験が浅いドライバーでも効率よく配送できるようになるでしょう。配送が効率化されれば、燃料コストのカットや荷物の積載量効率化なども期待できます。

運送手続きの電子化

これまで運送にかかる各種手続きは、紙の伝票で行うケースが一般的でしたが、近年では手続きに関する各種書類の電子化が進んでいます。電子化することで、書類の印刷や保管スペースの確保などが不要となるため、コスト削減にも繋がります。また、電子化したうえでクラウドなどに保存すれば、検索にも対応できるため、必要な書類をすぐに見つけられるなど業務効率化も期待できるでしょう。

システムの活用

近年では、業務に使用できるシステムが各社から展開されており、それらを利用することで、業務の負担を軽減することができます。例えば、物流業界であれば倉庫管理システムの導入がおすすめです。倉庫管理システムでは、商品の在庫状況や入出荷といった各種情報の管理ができるため、過剰在庫や欠品のリスクを回避しやすくなります。また、システムによってはピッキングを行う際の導線を指示してくれるものや、他のシステムと連携できるものなどもあるため、さらなる業務効率を図ることも可能です。

顧客情報のデータ化

配送先情報をデータ化し、AIで分析することで、一人ひとりの行動の傾向を把握する取り組みが行われています。例えば、配送先(個人)の過去の配送状況を分析し、自宅にいる可能性が高い時間帯を割り出すことができるため、再配達によるドライバーの負担軽減につなげられるでしょう。

ドローンを使った配送

こちらはまだ実験が進められている段階ですが、ドローンによる配送も物流DX推進に向けた取り組みの1つです。ドローンを使用することで、トラックでは配送が難しい場所へドローンで配送する、離島にドローンが荷物を届けるといったことができるようになります。ドローンのような機器をうまく活用できれば、人手不足の解消にもつながるでしょう。

物流DXを推進する際の注意点

物流DXはうまくいけば、従業員の業務負担軽減、ひいては業界内における自社の優位性の確立に繋がりますが、いくつかの点に注意しなければなりません。ここでは、具体的な注意点について解説します。

拠点によって仕事のやり方が異なる

物流会社は、基本的に複数の拠点を持っており、各拠点で業務に取り組んでいます。そのため、中には拠点によって仕事の進め方が個別最適化されており、同じシステムや機器を導入しても、効果が現れる拠点と、そうでない拠点が出てくる可能性があります。このような拠点間での違いを考慮せずに物流DXを推進すると、導入に手間がかかるほか、導入後にうまくシステムや機器を活用できない恐れがあるため、注意しなければなりません。

デジタル技術への理解

物流業務は、ものを保管・管理する、配送する、荷役するなど、デジタル技術がなくても成立するものであるため、従業員の中にはデジタル技術や機器の導入に抵抗感がある人もいます。例えば、自身の経験に基づいて配送ルートを決めているベテランドライバーは、AIによるルートの選定に疑問や抵抗を感じるかもしれません。また、日々の業務に追われるあまり、新たな技術を導入する(学ぶ)余裕がない従業員もいる可能性があります。いくら優れた技術であっても、現場の理解がなければ十分な効果は得られないため、各種技術の必要性を理解してもらうことが物流DXには必要不可欠です。

技術先行での導入

AIやドローン、各種システムなど、最新技術に着目するケースはよくありますが、最新技術が必ずしも自社に適しているとは限りません。例えば、ピッキングを行うロボットを導入したものの、導入コストが高く、もとがとれるまで時間がかかる場合は、導入しないほうがいいでしょう。物流DXの推進に伴い、最新技術を取り入れる場合は、事前に自社の業務を洗い出し、どのような課題があり解決策として何ができるのか、といったことを検討する必要があります。

まとめ

今回は、物流DXについて、その概要や物流業界で求められる背景、具体的な取り組みの事例、注意点などについて解説しました。物流DXは、物流業務の機械化・デジタル化を図ることで、物流のあり方そのものを変えていく取り組みのことです。最新技術を活用して、人手不足や小口配送の増加など物流業界が抱える課題の解決に取り組むことで、業務効率化はもちろんのこと、競合他社に対する優位性を確立することができます。一方で、最新技術であればなんでも導入すればいいというものではないため、自社の状況を適切に把握する必要があります。

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