ASEANコールドチェーン物流市場が注目される理由

2020年4月に国土交通省は日系物流事業者のASEANと東アジア諸国のコールドチェーン物流への参入状況を公開しました。これによって、ASEANコールドチェーン物流市場に参入している日系企業は年々増加していることが分かります(図表1)。

主な日系企業事業者のアジアでのコールドチェーン展開|船井総研呂位株式会社
出所:『物流を取り巻く動向について』国土交通省,2020年7月

今回のコラムでは、ASEANコールドチェーン物流市場が拡大している理由について紹介します。

ASEANコールドチェーン物流市場の拡大理由

冷凍冷蔵食品の市場規模が拡大している

近年、ASEANでは着実な経済成長・個人所得の向上に伴い、電子レンジや冷蔵庫の普及率が高まっています。また、スーパーやコンビニの増加に加え、人々のライフスタイルは変化し、伝統的な飲食ではなく、冷凍冷蔵食品の消費量が年々増加していることが想定されます。

国土交通省の発表では、2015年にASEAN主要国の冷凍冷蔵食品の消費額は13,897百万ドルであり、2010年と比較すると1.6倍に増加しました。2020年以降の推移においても、ASEANの冷凍冷蔵食品の消費額はさらに増えていくと注目されると考えられています。

コールドチェーン物流の整備は遅れている

ASEANの冷凍冷蔵食品市場は拡大している一方で、冷凍冷蔵食品の輸送や保管に対し、必要な温度管理が徹底されておらず、品質の高いコールドチェーン機能が欠如していることが課題です。

国土交通省の調査をみると、南アジア・ASEANでは、食料紛失・廃棄の発生のうち、およそ9割は製造から流通の段階で発生しているとしています。

例えば、ASEAN各国では、「冷凍冷蔵食品の外気温下での輸送」や「冷凍冷蔵倉庫の不安定な電力供給」などが食品廃棄率上昇の主な原因と考えられます。

経済的な視点はもちろん、衛生的な面からみても、ASEAN各国はコールドチェーン物流の改善は、今後取り組んで行かなければならない課題でしょう。

日本企業のASEANコールドチェーン進出支援

冷凍冷蔵食品市場規模の拡大や現地コールドチェーン物流機能の不足による現状に対応するため、2017年10月に、国土交通省は「ASEAN コールドチェーン物流プロジェクト」を立ち上げ、ASEAN各国のコールドチェーン物流の改善支援を開始しました。

『総合物流施策大綱(2017年度~2020年度)』は「サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともにそれ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革」を提起しています。

その中でも「我が国の高品質なコールドチェーン物流サービス等を国際標準化し、 アジア諸国等において普及を図るとともに、外資規制の緩和に向けた働きかけや官民ファンドの 活用により、質の高い我が国物流システムのソフト面・ハード面での展開を支援する」と明記しています。

日本政府はASEANコールドチェーン物流の改善を支援していくことが見て取れます。

まとめ

新型コロナウイルスの影響により世界的に在宅勤務、リモートワークは主流となっている現在において、ASEANでも冷凍冷蔵食品の市場規模は更に拡大していくと想定されます。

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