ヨーロッパの物流業界(2)~ヨーロッパ物流が抱える課題と対策、日本が学ぶべきこととは?~

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前号(ヨーロッパの物流業界~ヨーロッパの物流と日本の物流は何が違う?ヨーロッパ物流の特徴について解説します)に引き続き、ヨーロッパの物流業界について解説します。

今号は、ヨーロッパの物流業界が抱える課題(ドライバー不足・デジタル化・サステナビリティ)と対策について詳しく述べていきます。

ヨーロッパの物流業界もドライバー不足で悩んでいる

日本と同様に、ヨーロッパでもドライバー不足が大きな課題です。

道路貨物輸送部門のドライバーは需要に対し、79%しか満たしていません。数値で見ると日本以上に深刻なドライバー不足と言えます。

ドイツの道路貨物輸送部門の平均年齢は47歳です。

そのため、2027年までに、トラックドライバーの労働力の40%が退職すると予想されています。なお、女性ドライバーはヨーロッパのドライバー人口のわずか2%しかいません。

ヨーロッパのドライバー不足の大きな原因は、トラックドライバーという職業に対する否定的な一般認識、単独で長期間家を離れなければならないこと、また一部の国ではドライバー職に年齢制限(○○歳未満はドライバーにはなれない等)があること等が考えられます。

国際道路輸送連合(IRU)のレポートによると、ドライバー不足を解消するために計画された中長期的なアクションプランとして、次のような行動が必要であると説明しています。

・ドライバー不足に関する事実と傾向を明らかにするための調査の実施
・欧州委員会の「Women in Transport network」の立ち上げ(※1)
・ドライバーの扱いを改善するために業界パートナーとの共同行為の開始
・教育機関とのパートナーシップ確立(※2)
・駐車場確保・安全対策

※1 このネットワークは業界を促進するための行動を開始することにより、あらゆる交通手段の女性従業員の数を増やすことを目的とするEUプラットフォームです。

※2 子供と若者の間の道路輸送部門における機会の認識を高めるために、教育ツールキットを開発する。

2019年に欧州委員会が行った調査によると、欧州連合にはトラック駐車スペースが300,000箇所しかなく、夜間駐車と通常の休憩の合計需要に対し、100,000箇所が不足しています。

また、安全性が認定されている駐車スペースはわずか7,000箇所、つまり3%未満しかありません。

輸送中に受ける犯罪(主に盗難)はより頻繁になり、約75%が安全性が認定されていない駐車スペースに駐車されたときに発生しています。

輸送中に犯罪にあうことは、あまり日本では想像できないかもしれませんが、欧州では一般的な出来事です。

ヨーロッパ物流のデジタル化

物流のデジタル化は、特にマルチモーダル輸送の透明性と持続可能性に関する目標を達成するために不可欠です。

2016年、DHL社は荷主企業と物流企業がお互いをより簡単に見つけられるように、陸上輸送プロセスをより透明かつ効率的にするデジタルプラットフォームSaloodo(デジタル貨物輸送プラットフォーム)を立ち上げました。

このプラットフォームは、予約から最終的な支払いまですべてをプラットフォーム上で完結することが可能です。すべての書類と情報は単一のプラットフォームに保存されます。

ヨーロッパでは、18,000社以上の荷主企業と7,000を超える物流企業が250,000台を超えるトラックを利用でき、このプラットフォームで連携しています。

EUには、デジタル化の資金を提供する多数のプロジェクトがあり、物流・ロジスティクス業界もその対象です。

今後もEUは政策的なサポートを増やし、#DigitalEuropeというプログラムを通じて2021-2027年の間にデジタル化を支援していきます。

ヨーロッパ物流のサステナビリティ

デジタル化はサステナビリティというコンセプトにも非常に関係しています。物流・ロジスティクス業界のデジタル化は、エネルギー効率を高め、持続可能な低炭素経済への動きをサポートすることも可能です。

トラック輸送は現在、陸上輸送の二酸化炭素(CO2)排出量の20%以上を占めています。

輸送および物流から排出量を削減することは、社会的責任と政策目標の一部であるだけでなく、サプライチェーン全体でビジネス価値を生み出す大きな可能性を示しています。

2019年に合意されたトラック輸送におけるCO2基準では、2025年までに新規で導入するトラックの燃料効率を15%向上させる必要があります。

物流・ロジスティクス業界は、2050年までに気候中立経済に関する欧州委員会の戦略的長期ビジョンとパリ協定の目標を達成する必要があります。

電気自動車(EV)も都市貨物輸送の潜在的な手段と見なされていますが、都市貨物のEVへの移行には多くの課題が残っています。

まとめ

EUおよび個々の加盟国では、2014年から2018年の間に、1,000 kmを超える長距離輸送件数の大幅な増加がありました。ただし、主要な輸送産業を持つ加盟国の中で、ドイツとスペインは1000 kmを超える長距離輸送件数の減少を記録しています。

ヨーロッパ全地域をまたぐ大手の物流会社は約200~400の拠点を持つ企業が多く存在します。

最後に、ヨーロッパの物流は多数の国を含む大陸であり、EUやその他の協定により国際貿易が容易になったことから、日本の物流とはかなり異なっていることが分かります。

しかし、グローバルな世界の中で、日本の産業もしばしば国際的なトレンドの影響を受けています。

マルチモーダル輸送や持続可能性、ヨーロッパで行なうドライバー不足対策が、数年後に日本の物流・ロジスティクス業界の大きな話題になっているかもしれません。

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