距離歩合の賃金体系にデメリットしかない理由
多くの運送会社は、乗務員の賃金に「歩合給制度」を導入しており、売上歩合と距離歩合の2つの方式が広く使われています。一見すると公正に思える給与体系ですが、運賃格差や生産性の低下、法的リスクといった様々な課題が潜んでいます。
本日は、物流業界における「歩合給制度」の現状とその課題についてお伝えします。
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「売上歩合」と「距離歩合」の現状
多くの運送会社では、乗務員の賃金に歩合給が導入されていますが、最も多いのが「売上歩合」、次いで「距離歩合」です。
「売上歩合」では、実際の売上を使うことが多いですが、荷主によって運賃格差があり、乗務員から『歩合が低い仕事や割の合わない仕事はしたくない。』といった声があがることで配車担当者の負担が増えてしまいます。社内標準運賃を使えば解決できますが、設定と管理に手間がかかることから標準運賃の導入を見送る会社が多いです。
「距離歩合」は、デジタコによって走行距離を正確に把握することが容易で、あわせて空車と実車で歩率を変更すれば、乗務員の仕事量を公平に給与に反映することができます。
しかし、遠回りをして帰ってくるほど給与が高く、労働時間も伸びて生産性が低下することが懸念されます。距離歩合に割増賃金を含む(何時間走っても同じ)といった運用をすることで回避できますが、これは違法で、歩合給でも所定労働時間に支払う賃金を明記し、時間外労働の「対価」として割増賃金を支払わなければなりません。
歩合給制度の法的リスク
そもそも「距離」と「時間」は比例しており、その背景から多くのデメリットが考えられます。
例えば、時間通りに給与を払う必要があること、また、今後サカイ引越センターの訴訟(※1)で歩合制賃金が法的な意味での出来高払い制として認められなくなる可能性が高く、残業代の計算方法を出来高払(割増率0.25)から固定(割増率1.25)に変更する必要があること、適法であったとしても「歩合給」=「ブラック」のイメージが強く若手の採用が難しくなる、といったデメリットがあります。
※サカイ引越センターの訴訟について
https://logiiiii.f-logi.com/series/management/company-loses-case/
さいごに
歩合給制度は、賃金の公平性や労働環境に影響を与える重要な要素です。運賃格差や法的リスクに直面する中で、今後は乗務員のモチベーションを高めるためにも、標準運賃の導入や距離・時間に基づく新たな賃金体系を検討する必要があります。
持続可能な労働環境の構築に向けて、制度の見直しを進めてはいかがでしょうか。
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