賃金の出来高払い(歩合給)、二審でも認められず会社側が敗訴

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三村 信明

船井総研ロジ株式会社 物流ビジネスコンサルティング部 
チームリーダー チーフコンサルタント

1978年生まれ。専門商社、大手経営コンサルティング会社を経て、2011年、船井総合研究所に入社。入社後は、生産財分野(製造業、建築資材メーカー、生産財商社など)、物流会社・運送会社を中心にコンサルティングを手がける。2018年7月より、船井総研ロジ株式会社に異動( 2019年1月転籍)。運送会社・物流会社に特化して、人事制度の構築・運用支援、組織戦略立案を行っている。

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2024年5月15日、サカイ引越センターの元引越し作業員兼ドライバー3名が未払い賃金の支払いなどを求めていた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は、一審・東京地裁立川支部判決(約1,570万円/未払い残業代として約950万円、ペナルティとして約620万円の支払いを命じた)を支持し、控訴を棄却しました。

今回は、なぜ控訴が棄却されたのか、その要因についてお話いたします。

作業量が賃金に反映される仕組みになっているかが争点になる

同社は、「基本給」と「出来高給」を併用する賃金体系を導入しており、 基本給の他に、出来高給(売上に応じた売上給、件数に応じた手当、作業手当、洗車などの車両整備に応じた愛車手当など)、無事故手当、調整給などを支給。給与の大部分が「出来高給」になっていました。

出来高払制の場合、時間外割増賃金(残業代)の計算式は、

  • ・時間外割増賃金=歩合給÷総労働時間×0.25×時間外労働時間

月平均所定労働時間を月給(固定給)で割る通常の賃金に比べて割増賃金が少額になります。長時間労働になりがちな運送業へのメリットが大きいです。

一審では、

  • ・出来高払いによる賃金の支払いは認められているが、出来高払制は、賃金が労働給付(現業職であれば作業量など)の成果に応じて一定比率で定められている仕組みを指す
  • ・売上給は、営業担当と顧客の交渉で決まっており、作業員は会社から指示された作業をしているだけで、自助努力が反映されているとは言い難い。
  • ・売り上げの多寡にかかわらず、専ら配車係が裁量によって指示する案件の割り当てに従って決められた作業をするほかなかった。

二審においても、「作業量が見込みより多くなっても賃金に反映される仕組みにはなっていない」として、出来高払いとして扱っていた部分の全てについて、出来高払制賃金に該当しないと判断されました。

残業代を低く抑えるために、基本給を低く、給与の大部分を出来高給に設定している、という見方をされないよう確認しておく必要があります。

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