物流現場で活躍する女性たち 最新更新日:2020.01.22

株式会社アール・ケイ・トラック 商品センター運営部 鳩山センター長 野田 峰子 様

今回は、株式会社アール・ケイ・トラック 鳩山センター センター長の野田峰子様にお話を伺いました。 (オブザーバーとして取締役の郷澤 貴行様が同席)

同社は、「無印良品」でお馴染みの株式会社良品計画100%出資の物流子会社であります。
鳩山センターは2014年11月に稼動した新しいセンターになります。そちらのセンターに2015年6月にセンター長として就任されたのが野田様になります。

“良品計画のことをよく知らずに、アルバイトの応募で入社”

-野田様のこれまでの経歴について教えてください

「1994年12月に良品計画初の自社センターとして、新潟県:長岡市にアール・ケイ・トラックが運営する物流加工センター(長岡センター)が稼働しました。
その当時、子供を幼稚園に預け始めて、遊んでいられないなと考えていました。その時に長岡センターのアルバイト募集の広告を見て、良品計画のことはよく分かっていませんでしたが、軽い気持ちで応募したのがきっかけです。最初は午前9時から午後3時までアルバイトとして働いていました。」

鳩山センター外観

“「正社員にしてくれるなら、いてもいいよ」の一言が、正社員になったきっかけ!?”

-アルバイト・パートから正社員へステップアップされたきっかけは何でしょうか

「同じ時期に入社した人たちが“子供が大きくなったので、正社員として働きたい”という気持ちが出てきて、他の会社へ移ってしまいました。自分はどうしようかな?と考えていたときに、当時センター長であった前代表取締役社長の柴嶺哲に対して、“周りの人は辞めてしまった。正社員にしてくれるならいてもいいけど、自分も辞めようかなと考えている!”と話したところ、社長の掛け声から社内人事制度の一部を見直して頂き、正社員になることができました。」

郷澤様曰く、野田様を正社員にした理由として、「野田は妥協しない、ストレートで分かり易い性格だから」とその姿勢を高く評価されていました。
そんな野田様ではありましたが、パートさんだと職務権限で「まあ、そうは言っても社員の言うことを聞いておけばよい」と蓋をされていたそうです。それを「もったいない、そこまで知っていて意見が出来るなら社員としてもやっていけるのではないか。活躍の場を広げてもいいのでは」という当時の柴嶺社長の考えがあったそうです。

“「パートの味方が偉くなってよかったわ」”

-正社員になられた後、ご自身または周りの反応に変化はありましたか

「仕事に対する取り組み方や考え方は基本的に変わりませんでした。パートであっても正社員であっても“自分の仕事は間違いなくやろう”という考えです。パートという立場で蓄積された経験が正社員になってからの業務に活きてきました。」

「あとは、周りの見方が変わりました。社員として発言でき、話を聞いてもらえるようになりました。このような会社はよくないと思いますが、アルバイト・パートだと意見を取り上げもらえないことがありました。しかし、“パートの味方が偉くなってよかったわ!”という雰囲気だったので、やり易い環境でした。」

センターでは、たくさんの女性が働いています

“センター立上から一ヵ月後に生産性が倍以上に向上!”

-仕事上の成功談、嬉しかったことは何でしょうか

「2009年にインターネット通販のセンターの立上に携わりました。現場作業でのやりにくかったこと、例えば、ピッキングリストの不要な項目は削ったり、ピッキング作業をする上で照明が暗かったのを明るくしたり、道具を取りに行くのが大変だったのを取り易くするなどといったことを改善しました。
最初はうまくいきませんでしたが、みんなで頑張って、稼動から一ヵ月後には稼動当初と比較して生産性が倍以上にアップしました。生産性がどんどん上がっていくことが楽しかったです。
その後、世の中にネット通販が広く浸透したこともあり、良品計画の成長に対応すべくセンターキャパも年々拡大しております。」

“想定外の物量増加によるセンター内の大混乱”

-逆に失敗談、苦労したことは何でしょうか

「10年位前、長岡センターにいたときのことです。10月上旬頃、衣料品の物量が急激に増えた時期がありました。入荷が多すぎてロケーションが定まらないまま、出荷を迎えてしまい、翌朝の4時までたくさんの人に仕事をさせてしまいました。
今、一緒に仕事をしている人が当時私の部下でいて、その人任せの状態になっていました。自分の気持ちが全くありませんでした。」

「作業の中で、これはここまでやろうと決めた作業は社員が残ってくれました。誰も文句を言わずに作業をしてくれました。それまでは物量が多くても“みんなで頑張ればどうにかなるだろう”くらいにしか思っていませんでした。全く対策が取れておらず、私の油断があったなという反省です。
このようなことがあってから、物量が増えたときにどうするか、どれぐらいまでは対応して、それ以上に増えたらどうするかという対策を決めました。」

“「女性目線」で築きあげてきたルールや仕組みが多い”

-女性ならではの気付きはなんでしょうか

「通販業務を行っているセンターですと、商品の詰め方に特徴が出ます。女性による作業の場合、商品がお客様の手元に届いて開けたときの気持ちになって梱包されると思います。男性は“入っていればいいだろ”と思う人もいるかもしれません。お客様が色々な商品を購入される中で、“トイレ用品は端へ置いて、ビニールで包んだほうがいいよね”といった気付きがあります。
今は商品の梱包マニュアルはありますが、最初はありませんでしたので、そういうときの女性目線は非常に助かります。」

「あとは、男性だと分からないだろうなというのは、作業環境において高い場所は届かない、重たくて持てないということに対して、高い場所にはステップを設置する、重たくて持てないものは、持てる重さの基準を作るということです。どちらかというと女性目線からきたものです。
折コンに詰める重さは20kgまで、それ以上になると、お店で働いている人たちも女性が多いので、持てません。お店からも重すぎてクレームが入るときがありますので、お店の負荷にならないようにしています。」

野田様が導入された、ピンク色のネステナー

“「フォークリフトに乗りたい!」という女性がたくさん”

-センターを視察した際に、フォークリフトを運転されている女性を多く見かけました

「重たい商品の荷扱いに関しては、やはり男性にはかないません。長岡のセンターにいたとき、フォークリフトに乗っている女性がすごく多いと驚かれました。私が女性で二番目にフォークリフトの免許を取りました。女性だって普通に車に乗る、それと同じでフォークリフトに乗ることは、全く男女差が無いと思っています。
それまではフォークリフトと言うと、男性の乗り物で、男性は当たり前のように入社するとフォークリフトの免許を取りに行っていました。手作業で商品を積み卸しするより、フォークリフトで、さっと運ぶだけで済むなら、私も免許を取る!と言って、フォークリフトの免許を取得しました。それに、当時は髪が長かったので、フォークリフトを運転すると髪の毛が風になびいてかっこよかったんです。(笑)」

(郷澤様)「現在フォークリフトの免許は、パートの方でも取得を希望される方は優先的にフォークリフトの免許を取得していただいています。」と組織的に女性社員をバックアップされています。

“男性より女性トイレの数の方が多い”

-今後、物流現場で活躍する女性を増やすために企業として努力して欲しいことはありますか

「良品計画が男女差なしという方針にならい、アール・ケイ・トラックもその考えに近いとおもいます。パートさん、アルバイトさんを正社員にする間口を広げてほしいという想いはあります。経営陣もその必要性を理解しているようなので、現在社内規定等を見直しているところです。」
と非正社員側からするとなんとも心強いお言葉の野田様です。

「トイレの数も女性の方が多いし、休憩所も無印良品のソファがあり、きれいです。」
と仰っているとおりに、とても素敵な物流センターでした。

(郷澤様)「施設内の環境に関しては、鳩山センターを立ち上げるときにこだわってきました。」
働く人の目線を持って企業サイドが実際に職場環境を整える姿勢が良品計画グループの強みだと感じました。

休憩所は無印良品のソファでゆっくりできます

「社会の中で男女の役割があって、子育てや介護など、どうしても女性のほうに負担がかかることがあるので、休みが取りやすい環境は大事です。女性スタッフを“認めて、応援してあげて”というようなことはずっとやってきています。女性を受け入れるのはその部分ではないでしょうか。
お金をいっぱいくれる、女性には軽い仕事をさせておくよ、とかそういうことではなくて、仕事と育児・介護の両立が出来るように認めてあげるということが大事なのかなと思います。」

“「周りの人が休むときに、いやな顔をしちゃいけないよ」”

-休みが取得しやすい社風は会社設立当初からあったのですか?

「設立当初からではないです。やはり以前は休みが取りづらく、“え、また休むの?”なんて、いやな顔をされたことがありました。
アール・ケイ・トラックはパートさんでも会社へ意見を伝えられる日報を書くことができます。休みに関する意見が書かれた日報を当時の柴嶺社長が見たときに、
“考え方を変えろ。みんな同じような経験をしている子どもを持った主婦の集まりだろう。子どもの具合が悪いときに、今日も休むの?なんておかしい。3人しかいないところで休まれるのは辛いが何十人もいるのだから、残りのメンバーでそれぐらいカバーできないのはおかしいだろ !”
というようなことがあってから変わりました。
トップダウンって大事ですね。日報で声が上がらなければそうならなかったかもしれません。そういう意見が書ける会社でよかったですよね。“書くとまずい”といった会社もありますからね。ちなみに日報はパートさんより実名で記入してもらっております。」

(郷澤様)「日報を記入した翌日には、経営陣の手元に届きます。」とかなり開かれた企業文化のようです。

「今は主婦の人が多いので、お子さんの具合が悪いときは無理しないで休んでください、それに周りの人が休むときに、“いやな顔しちゃいけないよ”ということは言っています。
なぜか男性の方が休みを取得されます。育メンが増えたのですかね?当たり前のように“今日は子供の入学式なんですよ”といって休まれます。」
弊社も是非そうでありたいなと強く感じました(笑)

“物流センターに女性は多いのに・・・”

-物流業界全体に対するご意見はございますか

「私がよく経験するのが、“部長です”というと、周りから珍しがられます。でも、どの物流センターへ行っても圧倒的に女性が多い、なのに管理職はみんな男性です。もうそんな時代ではないですよね。(笑)」

“従業員が満足できる環境を創造していく”

(郷澤様)「物流業界は必ずしも社交的な人が集まる業界ではないと思います。一日中トラックに乗って長距離運転をしていたり、倉庫でもくもくと作業をしていたりする人が多いので、一日の作業にやりがいを持てるよう、会社に来るのが楽しくなるように、会社側として何か仕組みを整えているか、そうでないかでは企業の運営に大きく影響します。」

最後に野田様は「センターの中にいる人たちが働き易い、満足できる環境を創造してくというだけのことです。従業員が幸せならそれでいいですよね。」
大変頼もしい上司です。野田様の下にいることで、全ての女性が活用できる現場が明確にイメージできます。


取材後記

今回、センター視察もさせていただきました。広いセンターの中で、BGMが流れていたり、ネステナーがピンクであったりと、物流センターのイメージが変わりました。
同社はパートでも経営層へ意見を伝えることができる「日報」がありました。この「日報」の存在がなければ、今の同社はなかったかもしれません。トップダウンの効果は歴然です。
人の出入りが激しい職場では、辞めては新しい人へ指導しての繰り返しによる、教育のコストと時間がかかり、業務の習熟度に差が生じてしまい業務が安定しません。しかし、企業として従業員が働き易い環境を整えていくことで、従業員の定着率アップ、長年の勤務による業務の習熟度アップの結果、センターの生産性向上につながりますし、野田様のようなアルバイト・パート出身で、センターを支えている方々の気持ちをよく理解されている管理職が増えていくのではないでしょうか。

  • 今回取材させていただいた企業様

    会社名
    株式会社アール・ケイ・トラック
    設立
    1993年3月31日
    資本金
    3,000万
    株主
    株式会社良品計画 100%出資
    代表者
    代表取締役 小森 孝
    年商
    47億6400万(2015年2月時点)
    従業員数
    社員81名、パート・アルバイト345名(2015年2月時点)

Pen Iconこの記事の執筆者

田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 シニアコンサルタント

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