株式会社誠輪物流 代表取締役社長 野坊戸様
今回は、株式会社誠輪物流 代表取締役社長 野坊戸(のぼと)薫様へインタビューを実施しました。
野坊戸社長は会社の二代目であり、先代社長が急な病に伏せられ、急遽、跡を継ぐことになりました。
長年先代の社長が創り上げてきたものに対して、二代目である野坊戸社長が物流業界の仕事をかっこいいと思ってもらいたい、子供たちに魅力のある職業になってほしいという想いから、これまでにない新たなチャレンジをされてきました。
当然新たなチャレンジには向かい風が吹くものです。
二代目を継いでから、これまでのご活躍についてお話を伺いました。

目次
“トラックドライバーの仕事が子供たちの憧れの職業であっていたい”
「人手はいるのに、失業率があがっているという実態に疑問を感じています。その中でも、物流の仕事をやりたいと思う人がいないことが一番の問題であると感じています。
例えば、飛行機のパイロットは空を飛んでいてかっこいい、鉄道の運転手も子どもたちに大人気。では、トラックとなると・・・飛行機や鉄道とは同じように“憧れ”がないことに“なぜ?”と感じています。
その理由としては単純で、トラックドライバーとして働いている姿を発信していないことから、職業に対する偏見があることだと思われます。
トラックの運転席に乗ってみると、飛行機のコックピットのようにかっこよく、大型トラックの場合には視界良好で遠くまで見渡すことができ、トラックは道があればどこでも行ける、生活の第一線として社会インフラとなっているといった実態をどれだけの人が知っているのでしょうか?
私は社長でもありながら、ドライバ―のファンの一人でもあります。そのため、トラックドライバーの仕事や活躍ぶりについて発信していく必要があります。
トラックドライバーのイメージを払拭しなければ、人手不足のテーマは永遠に解消されません。
将来の夢は、“ユーチューバーになりたい!”という声はよく耳します。
しかし今時の普通免許を取得していない若い方々がトラックドライバーになりたいか?現状ではそのようにはなっていません。
トラックドライバーの仕事が憧れる職業の一つにならなければならないのです。」
“サファリトラック大作戦で子供も女性も笑顔になる?!”
「世の中のITが盛んになってきていますが、物を運ぶという仕事は絶対になくなりません。その中で、トラックドライバーという仕事を発信し、“かっこいい”と思ってもらいたい。
例えば、人気俳優やグループがトラックに乗って宣伝をしていたらかっこいいと思ってもらえるような、カジュアルなイメージで、トラックドライバーという仕事を捉えてもらいたいと考えていました。
その活動の一貫として、トラックのラッピングを行いました。一日の生活の中で、トラックと何台すれ違ったか、みなさん覚えていますか?誰もそのようなことを意識していないのが実態です。
車で道路を走っているとトラックを見かけないことはありません。身近であるにも関わらず、興味を持っていないことが大半です。まずはトラックに興味を持ってもらう、記憶に残るようなことをしなければなりません。
私たち業界人であれば、どこの会社のトラックかというのをよく見ますが、一般の人はそこまでは気にしていません。しかし、トラックが走っている姿を見て笑顔になるような、“今日こんなトラックを見た!”と話題になるようなトラックがあればよいのではと考え、ラッピングカーを思いつきました。」

「ラッピングトラックを導入したことで、納品先の女性担当者がわざわざ事務所から出てきて、写真を撮りにきてくれました。子どもたちはトラックに向けて手を振ってくれるようになりました。これまでのトラックに対する興味・関心からすると考えられないことでした。まさに人を笑顔にするトラックなのです。
トラックはどの物流会社においても、会社のイメージとして統一したものを発信している場合が多いと感じます。それは会社としてのブランドイメージもあるので、素晴らしいことだと思います。しかし、弊社においては、わざわざトラックのカラーを揃えるというのではなく、むしろ弊社を知ってもらう手段として、ラッピングされたトラックを導入しているのです。
現在稼働しているラッピングトラックは、大きく二種類あり“ラッキードット”と呼ばれている水玉模様と“サファリセイワ”です。
水玉模様のトラックは、トラックのボディにグリーンの水玉模様がペイントされています。トラックの中に“隠れセイワ”があり、ちょっとした遊び心を入れています。
もう一つの“サファリセイワ”はその名のとおり、動物のラッピングです。現在はライオン号、パンダ号、ホワイトタイガー号の3台(頭?)が稼働しています。直近では、4台(頭)目のレッサーパンダ号が稼働予定です。
最初は納品先の方も驚かれていましたが、大好評です。今ではラッピングの意見もいただくようになりました。先日は“動物にしっぽはつけないの?”と言われてしまいました(笑)。
ラッピングのデザインは私が担当しています。現在、水玉模様のトラック7台、サファリセイワは3台(増車計画中)です。次の取組としては、“ジュラシックセイワ”(恐竜のラッピング)を計画しています。」


“トラックドライバーに必要なのは品格”
「トラックに興味を持ってもらえると、ドライバ―も誰かに見られているということを意識します。品質は当たり前、品格をつけるようにと私はドライバ―に伝えています。このことから、ラッピングを導入する効果として、事故件数が減ることがあげられます。常に誰かに見られている意識を持つことが大事です。
私たちの会社は、鶴ヶ島という地域から、トラックドライバーが憧れる職業として発信していきたいと考えています。子どもたちが、“お父さんの仕事かっこいい”と思ってもらえたらいいですね。」
“先代の急な引退で引き継いだ会社。跡を継いでから見えてきたものがある”
「先代の社長は私の父親です。父親が倒れたときに不安もありましたが、やるしかないと思い、私が二代目として跡を継ぎました。跡を継ぐ前からトラックにも乗っており仕事に携わっていたので、事業のことは理解していたつもりでした。
それでも、私が跡を継いだあとは大変でした。社長が変わったからといって、すぐに会社の方針を変えるのではなく、遠回りかもしれませんが、二年間は体制を変えないようにしようと考えていました。
じっと社内を見ていくと、今まで見えていなかったものが見えてきました。それは、水が上からも下からも流れていないことです。
例えば、言ったことが伝わらない、聞いていないということがたくさん出てきました。
そして、ドライバ―の大半が先代の社長と話をしたことがないという実態でした。ドライバ―は個人で行う仕事のため、組織としての活動が出来ていませんでした。
そこで考えたのがグループ活動です。同じ便を運行しているドライバ―以外は、ドライバ―同士が会ったことがないということが日常茶飯事でした。そのような状態では結束も生まれないため、学校のようなグループ活動を取り入れました。」
取り入れたグループ活動とは?
“ドライバ―のグループ活動の一貫、DIY作業とは?”
「まずは研修です。例えば事故研修であれば、事故に対してどのように気を付けるのか各チームで議論します。ここまでは普通の活動のように見えますが、他に行っている活動としては、“DIY作業”です。
一例として、各グループで花や野菜を育てる活動をしています。花が咲いたら、野菜が収穫できたら、そのグループに表彰(プレゼント)をするという企画です。最初はとまどう人もいました。
しかし、そこは社長である私も一緒になって企画して取組に参加しました。野菜を育てるにも、まずはプランターを作るところから始まり、どの野菜を育てるか、飼料はどのようなものが必要かということも議論し、組織力を形成していこうというのが狙いです。
今では、ドライバ―から“次は何を植えよう?”など楽しみながら、かつ、ごく普通の活動として取り組んでいるのが実態です。
当然、中には合わない人もいるので、無理強いはしません。しかし不平不満を言う人は誰かを巻き込もうとしがちなので、このようなグループ活動がきっかけで、考えが変わるとよいかなと感じています。」


“このご時世に仕事がいただけることに感謝をする”
「お客様からのお仕事は業界問わず、多岐に渡ります。
運送に関しては関東1都6県の配送がメインで、一部長距離も担っています。ほぼ関東地区をカバーしているので、人と生もの以外は運ぶことができますと営業のときにお客様へ伝えています(笑)。
取り扱い品としては、ドライ食品、日雑、自動車関連、医療品等があります。
物流業界でよく言われる“手積み・手降ろし問題”ですが、弊社ではパレット積みのほうが多いですね。これもお客様へお願いをして、極力パレット積みにしていただいています。一部手積みの仕事もありますが、ドライバ―内で不満がでないよう、仕事をローテーションしながら回しています。
コロナ禍で事業を閉めざるを得なかった同業がいる中、無くなった会社のことを考えて仕事をするようにとドライバ―には伝えています。仕事を“取る”という言葉はあまり好きではありません。仕事を“いただいている”のです。このご時世、仕事ができること、仕事があることに感謝をしなければなりません。
そして、どこへ納品に行っても、誠輪物流のドライバ―は気持ちがいい、礼儀正しいと言っていただけることもありがたいことです。」
“受領書は両手で受け取るなんて、当たり前”
「ドライバ―は誰でもいいわけではありません。運送の仕事はスポットから始まり、困ったところに手が届くようなサービスを提案して、定期の仕事につなげていく、いわば、提案型営業です。ドライバ―には名刺を持たせて、納品先で配るよう伝えています。
納品先では、“誠輪物流です、ありがとうございます!”と挨拶しますが、下請けで入っている仕事もあるので、その場合には自社の社名を名乗ってはいけません。しかし、制服には社名が入っていますので、誠輪物流であるということはわかります。
納品先のお客様がドライバ―の制服にある会社名を見ていることも意識しながら、立ち振る舞いには気を付ける必要があります。
同業他社において、制服が乱れている(正しく着用していない)、サンダルを履いているというのを見ると、いかがなものかと思ってしまいます。制服はフォーマルでもあり、戦闘服でもあります。その戦闘服を着て、仕事をしてお金をいただいているのです。
ラッピングに関しても同じです。当初、ラッピングに乗ることが恥ずかしい、嫌だというドライバ―もいました。しかし、事故で凹んでいる車、汚れた車のほうがよっぽど恥ずかしいということを伝えさせてもらっています。
ドライバ―からは色々な意見がでます。そのドライバ―からの意見に対して、社長である私自らの言葉で直接伝えるようにしています。
また、受領書を受け取るとき、両手で受け取るようにと伝えています。当たり前のこと、些細なことかもしれませんが、このような丁寧な活動が、お客様からの安心、信頼を得ていると感じています。」

“誰も見たことがない物流業界の景色、未来へ向けてのチャレンジ~トラックパーク構想とは?~”
「現在、トラックパークを実現すべく、準備を進めています。トラックパークとは、例えば、子どものころ消防車やパトカーと一緒に写真を撮る機会があったかと思いますが、トラックに乗っている写真はほとんど撮る機会がないと思いました。そこから、テーマパークのようにトラックを身近に、楽しく感じてもらえるものを作り上げたいと考えました。
全国のドライバーの皆様からも“手伝えることがあれば手伝います!”とお声がけをいただいております。まずは、地元鶴ヶ島からトラックを身近に感じてもらえるよう、テーマパーク構想の準備を進めています。
また、最近ですが、ホームページをリニューアルしました。“これが運送会社のホームページなの?!”というものをゼロベースから作りました。ホームページを見に来た方のほとんどが30秒以内に離脱してしまいます。なんとかして、30秒以上見ていただけるようにと、ホームページもワクワクするものに変えました。会社のマスコットキャラクターも作り、親しみやすいものにしようと私が自らデザインしました。
トラックパークは夢の場所でもあり、なかなか身近で感じることができない体験をできる場として考えています。トラックと触れ合ってほしい、ドライバーの仕事をしているお父さん、お母さんの仕事の相棒を子どもたちにも見せてあげたい、そして子どもたちが将来ドライバーになりたいと思ってもらえるようなものを作っています。
ホームページも同じです。今までの物流業界のイメージを刷新できるような親しみのある内容に作り変えています。
ここから、物流業界、トラックドライバーに興味を持つ方が増えてていくことが、私の未来へ向けたチャレンジの一歩です。」

編集後記
インタビューを通じて、野坊戸社長の発想、行動力、気さくな性格が社員のみなさんの心をつかんでいると感じました。インタビューの中で、社員のことを「社員」と呼ばず、「仲間」と呼んでいるというコメントが印象的でした。
物流業界では女性経営者が少ないので、女性経営者が増えると嬉しいとおっしゃっていました。2代目として跡を継ぐ人、先代にかわいがられて跡を継ぐ人と、社長になる方の経歴が様々かと思いますが、物流業界における女性経営者が集まる会があるとまた違った意見が広がるのではと感じます。
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今回取材させていただいた企業様
- 会社名
- 株式会社誠輪物流
- 本社所在地
- 埼玉県鶴ヶ島市上広谷本村472-1
- 設立
- 1996年4月3日
- 資本金
- 2,500万円
- 代表者
- 代表取締役社長 野坊戸 薫
- 事業内容
- 一般自動車運送業、首都圏配送、引越業務、倉庫業、商品管理業務、商品仕分請負業、梱包業、販売業務
- 車両台数
- 大型15台、中型・小型60台
- コーポレートサイト
- https://seiwa-logi.com/


