大和物流株式会社 “現場職”編

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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 今回は、インタビュー2回目の登場となる、大和物流株式会社様に再びご協力いただきました。前回は「営業職偏」、今回は「現場職偏」として浦安支店 業務課の川上 紗亜耶様にインタビューを実施しました。
 営業職だけでなく現場職でも女性が活躍している同社において、実際に働かれている女性社員の活躍や、今日に至るまでの苦労、今後同じ立場になる女性社員へ向けたメッセージを伺いました。

“必要なものを必要なときに届ける物流で、人の役に立ちたい”

-物流業界に興味を持たれたきっかけはなんでしょうか?

「学生時代にイタリア語を勉強していたので、その影響で海外に興味を持つようになりました。海外とのつながりが持てる会社で働きたいと思い、就職活動を始めた頃は商社を志望していました。会社説明会や面接を受けているうちに、自分とは違うなと感じるようになりました。商社がかっこいいと思って採用試験を受けていましたが、商社とメーカーを繋ぐ存在として、“物流”があることを初めて知りました。もともと、“人の役に立つ仕事がしたい”と考えていた中で、必要なものを必要なときに届ける物流は、まさに人の役に立つのではないかと自分なりに解釈をした結果、物流業界に絞り就職活動を再開しました。
色々な物流企業を受けた中で最終的に大和物流に決めました。他の会社は説明会に参加しても一方的な説明で、すぐ終了するような内容でした。しかし大和物流の場合は、就活生に対して質問を投げかけており、他とは違った説明会で興味を惹かれ、採用試験を受けました。
決め手となったきっかけとして、女性を積極的に採用したいという方針があり、女性も活躍しているというアピールがあったことです。他の会社はそこまで女性が働くイメージが見えなかったので、そういったところが今の会社に決めた大きな理由ですね。会社説明会では、従業員の男女比率を提示する会社が多かった印象を受けました。男性の比率が高いと女性は発言しづらいのかな、と気にしていました。私が入社したとき、同期の男女比は、男性7:女性3で、これでも比較的女性が多い年次でした。後から聞いたことですが、私が入社した頃から女性をたくさん採用しようという流れになったようです。ちょうどいいタイミングだったのかもしれません。」

“渋々、フォークリフトの免許を取りにいきました・・・”

-現在担当されている業務について教えてください

「お客様からの指示に基づき、倉庫内にある製品の入出庫・保管作業やデータ管理を行っています。倉庫内ではフォークリフトを運転して作業を行っています。入社する前に倉庫内での実作業を担当することは想像していませんでした。実作業というより、指示を出したり管理をしたりという仕事のイメージが強かったのですが、現実は現場で作業することもありました。その日の状況により、社員全員が現場で作業することもあります。結局のところ現場に出て作業をしないと分からないことも多いので、今はよかったなと思います。配属前後で仕事に対するギャップは感じましたが、いい意味でのギャップです。作業を行わず指示だけ出して、作業の説明もできないのは嫌でしたので、“こんなこともやっていいんだ!”という、プラスのギャップでした。

現場で作業を行うにあたり、フォークリフトの免許取得は必須ではありませんが、配属されたとき、私以外の全員が免許を取得していました。配属2年目頃、上司から“そろそろ取ってみる?”と声をかけられました。フォークリフトに乗らないとできない仕事も多く、人に頼んでばかりは嫌でしたので、免許を取りにいくことにしました。試験場は私以外、教官も含め全員男性でしたので、少し気を使うなと感じました。周りからも視線を感じ、どうしようと思いましたが、何もしゃべらず黙っているのも変かなと思い、隣の席の人へ話しかけると“女性は珍しいですね、私の会社には女性でフォークリフトを運転する人はいないよ”と言っていました。やはり、女性でフォークリフトを運転する人は少ないのだと実感しました。女性がいないということで逆に教官の方に親切にしていただき、得をしたのかなと思いました。」

“人の役に立てているという実感ができたことが嬉しい”

-仕事上の成功談、嬉しかったことはなんでしょうか?

「配属1年目から担当しているお客様がいます。最初はお客様とうまくコミュニケーションが取れず、苦戦していました。問題になる手前で上司に相談しアドバイスをもらい、対応していましたが、なかなか独り立ちできずにいました。そのお客様を担当して丸3年がたった今では、ミスもなく、対応がよいとお客様からお褒めのお言葉をいただけるようになりました。お客様に認められたというのは自分が成長できた証だと思いますし、就職活動時に心に秘めていた“人の役に立つ仕事をしたい”という想いが実現できたと実感したときは嬉しかったですね。」

“積み込み現場を見ることや、ドライバーの方とのコミュニケーションが重要”

-逆に失敗談、苦労したことはなんでしょうか?

「倉庫で必要な荷物を積み込み、お客様のもとへ荷物を運ぶときの出来事でした。私がトラックにどれぐらいの荷物を積めるのか分かっておらず、これぐらい積めるだろうという肌感覚で車を手配し、お客様へ連絡しました。当日、倉庫にトラックが積み込みにくると、ドライバーの方が荷物を見た瞬間“こんなに積めないよ”と言われてしまいました。逆の場合もあって、“一台では積みきれないので、もう一台増やしてください”とお願いすると、“いや、これぐらいなら一台で十分積めるよ”と言われてしまったこともありました。勉強不足ということもありますが、実際に積み込む現場を見て、普段からドライバーの方ときちんとコミュニケーションを取っていれば、分かっていたことだと思います。」

“まずは挨拶をしっかりと”

-ドライバーの方とコミュニケーションを取ることが多いようですが、何か心がけていることはありますか?

「倉庫へ行くと、ある程度決まった時間に毎回同じ会社のドライバーの方が来られるので、今では顔見知りの仲です。分からないことがあったら教えてもらうこともあります。“あと、○○kgぐらいであれば積めるよ”といった知識や、お客様への納品後に“お客様が納品前に連絡がほしかったと言っていたよ”といった営業的な情報を共有してもらっています。

このように、ドライバーからうまく知識を得ることや、情報収集が円滑にできるようにするために、当たり前のことではありますが、ドライバーの方に対して必ず挨拶をするようにしています。以前は、忙しいときは挨拶どころじゃないと思っていたときもありましたが(笑)今ではドライバーの方が事務所に伝票類を取りにきたときに、“荷物の準備できてる?”“今日は他に納品へいくところある?”と自ら聞いてくれます。
打合せこのような関係性を築くきっかけとしては、まずは挨拶をしないと相手も話しかけにくいのではと思い、ドライバーの方を見かけたら自ら積極的に話しかけるようにしています。最初の一言があれば、その後の会話や業務がスムーズになります。」

“私の強みは接客業のアルバイト経験とイタリア語”

-これまでの経験やスキルで、今の業務に活かされていることはなんでしょうか?

「これまでにも何度かお話ししましたが、仕事をするうえでコミュニケーションの重要さを感じています。その素地を作ったのは学生時代に経験した接客業のアルバイトです。接客業を通じて人見知りをしなくなったこと、初対面の人と話すことにさほど抵抗を感じなくなりました。社会人になり接客業の経験が、コミュニケーションが重要な倉庫での仕事に役立っているのではと感じています。倉庫で黙々と作業をするだけでなく、人との関わりも重要になるので、コミュニケーションを取れる人が活躍できるのではと感じます。

あとは、学生時代にイタリア語を勉強していたと話しましたが、実はその経験が役立ったことがありました。先日、イタリアの家具メーカーの方と話す機会があったとき、なぜか私も同席することになりました。先方はイタリア人でしたが、日本法人担当の方で日本語を話せる方でした。私が通訳することはありませんでしたが、少しイタリア語で会話したり、イタリアに留学した経験を話したりすると、先方も上機嫌になって会話が弾みました。このようなことは滅多にないことですが、よい経験になりました。」

“将来は配車業務をやりたい!”

-今後身につけたいスキル、経験はなんでしょうか?

「倉庫業務における入出荷の管理と作業はできますが、配車業務は経験がないのでできません。やはり配車業務は物流事業で最もお金が動く大事な部分になりますので、重要な仕事であることに間違いありません。配車担当の上司に配車業務を教えてくださいとお願いすれば、教えてもらえると思います。ただ、日々の天候やトラブルの発生状況が配車に影響を及ぼすので、そのようなときの対応を傍で見ていると大変そうだなと思います。倉庫の仕事をしているけど、配車はできないというのは自分の中で納得ができないので、将来的に配車の業務に携わりたいです。配車を担当している上司からは、お客様の希望通りに配車をしてお届けすることができたとき、配車としてのやりがいを感じると聞いています。そういうところを見ると達成感があるのではないかと思います。今の仕事には慣れ、ほぼ決まった仕事をこなすことが多く、そういった意味では刺激が少ないのかなと。配車となると日々突発的なことが起こるので、そういったことに対応できる力を身につけたいです。トラブルには弱いですけどね。」

“現場作業で運動不足解消アピール?!”

-物流の仕事を女性にもアピールするためには、どのような情報発信が必要なのでしょうか

「物流現場というのは倉庫で力仕事をして、というイメージがあったので、業務に携わる前は不安でした。実際のところは、お客様や作業員の方とコミュニケーションを取りながら協力して仕事をしていくものです。女性は、敏感に相手の表情や状況を察知する能力があると思いますので、みんなで協力して仕事を行う中で、周囲のことを気にかけながら仕事をするということに向いているのではないでしょうか。

あとは体を動かすことが好きな人も上手くやっていけるのではないでしょうか。他の同期は運動不足だと言いますが、私は現場作業をやっているので全然運動不足だとは思っていません。この仕事でよかったなと(笑)」

“物流の仕事において女性にできないことはほぼない”

「女性でも物流の仕事の大半はできると思いました。できないことはほぼないです。女性でフォークリフトの操作をしている人も多くいますし。女性のイメージがないだけですね。過去に、ドライバーの方が荷物を運んでほしいということで、私にフォークリフトの操作ができる男性社員を呼んでくるように声をかけてきました。女性の私を見て、事務員だと思ったようです。フォークリフト作業において、男女は関係ないんですけどね。イメージがないだけで、女性ということだけでフォークリフトの操作ができないと思われてしまいました。それも初対面のときだけで二回目以降は、ドライバーの方が直接私に、“これ運んでー!”と頼んでくれます。

女性ではできないことは一つだけだと思います。それは、お客様の荷物を手で運ばなければならないときです。男性二人でやっと持てるものを運ぶ場合、女性が入ると生産性はよくないですよね。ただし、できないことはこれぐらいだと思います。それ以外のことは基本的には一度受け止めて、自分でやってみようという気持ちで取り組んでいます。」


取材後記

 今回取材をさせていただきました浦安物流センターでは川上様の積極的な声かけにより、掃除を当番制にする仕組みを導入し、整理整頓を心がけているようです。これまでは、誰も気に留めなかったことかもしれませんし、些細なことかもしれませんが、川上様が配属されたことで新しい取り組みが始まりました。それはただ掃除をするだけではなく、作業の効率化や安全品質の維持、誤出荷防止といったことから、お客様がお見えになられたときに可能な限りキレイな状態でお出迎えしたいという気持ちの表れです。自分たちの日々の作業だけでなく、作業応援としてスポットで来る社員、日々集荷・配送に来るドライバーの方、センターへ見学に来られる方々を含めて、現場は自分たちの品質をアピールする場と考えていることが、取り組みとして表れているように感じました。

  • 今回取材させていただいた企業

    会社名
    大和物流株式会社
    設立
    1959年8月
    資本金
    37億6400万
    代表者
    代表取締役社長 緒方 勇
    従業員数
    1,382名
    事業内容
    貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業、荷造梱包および解梱事業、工場・倉庫内の諸作業、倉庫業、産業廃棄物収集運搬業、建築工事業、電気工事業、宅地建物取引業、人材派遣業、売電事業
    URL
    http://www.daiwabutsuryu.co.jp/

Pen Iconこの記事の執筆者

田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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