呼び捨ての弊害
多くの経営トップは、社員が、自主的に動くことを望むものと思います。
トップダウン一辺倒ではなく、ボトムアップの気風が育てば、会社の成長スピードが上がり、とても愉しくなります。
良品計画会長の松井忠三氏は、組織にボトムアップの気風を浸透させ、一時は大幅赤字に陥った無印良品を、V字回復に導きました。
松井会長は、上司に対しても、きちんと意見を言えるような雰囲気をつくるため、特に『上下関係のあり方』を、形から抜本的に変えることに取り組んだと言います。
その施策のひとつは、”さん付け呼称”です。
無印良品では、全員が全員を「さん付け」で呼ぶように徹底されているのです。
部下に対しても、上司に対しても、男性も、女性も、お互いに”~さん”を付けて、呼んでいるそうです。
もちろん、松井会長も、部下から「松井さん」と呼ばれています。
松井会長は、「上司を役職名で呼ぶことも壁をつくるのでよくないが、それよりも、目下の人を呼び捨てにすることの方が、弊害を生む」と説きます。
なぜなら、目下の人を呼び捨てにすると、コミュニケーションが一方的になりがちだからです。
一方的なコミュニケーションでは、部下が気づいた問題点や課題、苦情が、トップに上がっていかないという弊害を生みます。
「双方向のコミュニケーションが成立する状況があってこそ、初めて現場の情報が上がってくるのだ」というのが、松井会長の主張です。
曰く、「”さん付け”は、情報・意見の風通しをよくする」のです。