いい現場には気が現れている
名優、高倉健氏が、あるインタビューで「いい映画、いい撮影現場には役者やスタッフが発する気が現れています」と述べていました。
その『気』とは、何なのか?
インタビュアーがヒントを求めると、健さんは、長野県上田市の刀鍛冶、宮入小左衛門行平氏を訪ねて、日本刀を打つところを観てみることを薦めたそうです。
そこで観たのは、渾身の力で刀を打つ姿ではなく、丁寧に少しずつ叩いていく様子でした。
そして、刀鍛冶、宮入氏は、次のように話します。
「刀を打ち始めた頃は、いい刀を作りたい、 章に入選したい、たくさんお金をもらいたいと考えていました。けれども僕は今、あの仕事場に座っていることが好きなんです。毎日、あそこに座って刀を打つ行為が好きです。刀を打てることに感謝しています。僕が刀のなかに叩き込んでいる気とは攻撃的なものではなく、感謝と祈りです」
インタビュアーは、健さんの言う『気』とは、人を威嚇するような、研ぎ澄まされた精神力のことではなく、「感謝の念」だということを悟ったそうです。
いい映画は、感謝の念が満ちている撮影現場で撮れるのです。
すべての現場に通ずるルールでしょう。