「下請け管理」は元請け事業者だけでの問題ではない!

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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物流業界における課題の一つとして、「多重下請け構造」があります。荷主企業は元請となる物流事業者(元請事業者)と物流取引(契約)をしますが、元請事業者とは別に実運送会社(実際に荷物を輸配送する会社)が存在する取引形態が多くあります。

この多重構造発生の要因と、多重構造の課題を考察します。

なぜ物流取引で多重構造が発生するのか?

“様々な理由”により自社で車両手配できない場合、下請事業者へ運送の依頼をします。

経済産業省・国土交通省・農林水産省が行なった調査(※)によると、「荷主企業からの突発的な運送依頼に対応するため」「自社のトラックドライバ―が不足しているため」といった理由で下請事業者へ運送を依頼していると回答した事業者が圧倒的に多いことが確認でされています。

このことから、多重化の是正のポイントの一つとして、荷主企業から物流事業者への運送指示において今一度見直す余地があるようです。

物流取引のブラックボックス化がもたらす影響とは?

物流取引が多重構造になるほど、荷主企業の目の届かないところで、複数企業が物流取引の当事者として介在することになります。

その結果、荷主企業からの運送指示に対して末端の実運送会社までに正しく、タイムリーに伝達されない恐れがあります。これでは事故発生時や改善事項の情報共有においても、実運送会社までに伝わらず、物流取組の推進を阻む要因にもつながります。

契約内容のブラックボックス化を防ぐためには?

多重構造になるほど、契約内容も明文化されなくなる傾向があります。特に付帯作業や燃料サーチャージなど細かい要件に関する取り決めまで行き届いていないのが実態です。

実際に実運送会社が業務を請け負った際に、事前に取り決めのない付帯作業(荷役作業など)が発生しています。また、下階層にいくほど中小零細の事業者の占める割合が高くなり、仕事の依頼元の事業者に対して交渉しきれていないということも考えられます。

このような事態を防ぐためにも、取り組むべきことは以下2点です

  • ・実運送体制管理簿の作成
  • ・運送契約の書面化

実運送体制管理簿の作成

実運送体制管理簿は元請事業者が、荷主企業との物流取引において利用している実運送会社を把握するための管理簿です。作成イメージは以下のとおりです。

<実運送体制管理簿の作成イメージ>

「下請け管理」は元請け事業者だけでの問題ではない!_船井総研ロジ

実運送体制管理簿の作成は元請事業者が行うため荷主企業が関与する必要はありません。しかし、荷主企業も取引の実態を把握し、実運送会社の安全を妨げるような運送指示が発生していないか再度見直す必要があります。

運送契約の書面化

もう一つの運送契約の書面化は、荷主企業・元請事業者・下請事業者、全てに関係します。

運送取引において発注側と受注側の間で、運賃だけでなくその他料金(燃油サーチャージ、付帯作業、有料道路利用料など)について、また、付帯作業が発生するのであればその作業内容を明確にし、運送契約として書面化することです。

実態としては、運送のやりとり・指示は電話、FAX、メール等で行っており、書面化できていないことが少なくありません。

取引実態の可視化および適正化をするためにも、改めて契約書の書面化状況について確認してみてはいかがでしょうか。

※参考資料

経済産業省・国土交通省・農林水産省
「トラック輸送における多重下請け構造についての実態把握調査に係る調査結果」

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物流業界の課題は行政が注目する事案の1つとなり、荷主企業として「適正取引」「適正コスト」の観点からこれまでの物流体制を見直すことが求められています。

昨年6月に「物流革新に向けた政策パッケージ」が取り纏められ、同パッケージに基く施策の一環として、業界別の「自主行動計画」について作成・公表することとされています。

そこで荷主企業は、2024年問題対策の一つとして取引適正化や効率化への計画を実行レベルまで明確に策定する必要があります。

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