知らなかったでは済まされない!下請法改正による物流業界への大激震

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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2025年5月16日に「下請代金支払遅延等防止法及び下請け中小企業振興法の一部を改正する法律」が国会で可決・成立されました。これにより改正法が2026年1月1日より施行されます。「下請代金支払遅延等防止法」とは「下請法」のことです。

この法改正は物流業界、特に荷主企業には大きな影響を与えることになります。改めて下請法の概要と、今回の法改正による変更点を見ていきましょう。

元請けも苦しむ下請け構造 ― 本当の課題はどこにあるのか

下請法とは、下請取引の公正化・下請事業者の利益保護のための法律です。物流業界では運送委託の多重下請け構造が該当します。

取引が多重になる、かつ、最下層に位置する事業者においては、元請事業者と直接取引する場合と比較して、廉価な運賃で契約せざるを得ない状況となっています。また、取引の立場上、末端にいくほど中小零細事業者が多く、価格や受託業務に関する交渉難航や不当な業務の発生などが見受けられます。

下請法は元請事業者と下請事業者を対象とした取引適正化を実現するための法律です。しかし物流業界においては、元請事業者へ各種交渉を働きかけても、さらにその先にいる荷主企業の交渉が進んでいないという実態があります。

元請事業者も下請事業者からの値上げ要請には応じたいが、元請事業者が取引をしている荷主企業から運賃改定の承諾が得られなければ、下請事業者の値上げ要請を受け入れる原資が確保できないということです。

多重下請け構造の是正は先般交付された“トラック新法”でも明示されており、同法上では、二次請けまでに制限されます。両法の施行・改正により、さらなる取引の適正化が加速されるでしょう。

下請法改正で荷主企業に課される新たな義務

サプライチェーン全体で適切な価格転嫁や取引適正化が進む体制を整えるためには、荷主企業も連携しなければなりません。

これまでは、荷主企業と物流企業(元請事業者)の取引は下請法の対象外で、独占禁止法の物流特殊指定での対応となっていました。今回の法改正により、物流業界における取引のカギを握る荷主企業も下請法の対象に含めることで、これまでより素早く法的対応ができる体制を整えることになります。

今回の法改正でポイントなのが、これまで荷主企業と元請事業者の取引は物流特殊指定の対象でしたが、下請法の適用範囲変更に伴い、荷主企業の取引も下請法の対象となります。対象範囲の変化による主なポイントは以下2点です。

  • 発注書面の義務化:物流特殊指定では「義務」ではなかった
  • 支払い期日の短縮:物流特殊指定では双方取り決めた期日での支払いだったが、下請法の改正により原則60日以内の支払い

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さいごに

法改正による取引対象の変化に伴い、荷主企業として対応すべきことを踏まえたうえで、施行に向けた準備をしなければなりません。知らなかったでは済まされません。自社の物流の責任を任された部門として、取り組むべき内容を一度整理してみてはいかがでしょうか。

※参考資料
・公正取引委員会「下請法・下請振興法改正法の概要」
・公正取引委員会「物流特殊指定本文」

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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