発荷主と着荷主の協力による物流効率化の促進

Pen Iconこの記事の執筆者

朝比奈 実央

船井総研ロジ株式会社
ロジスティクスコンサルティング部

小売業や卸売業、製造業(自動車、化学品、機械など)といった幅広い分野におけるコンサルティングに従事。特に物流コスト適正化や現場改善、物流リスク評価などを得意としている。

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物流には荷物を出す側(発荷主事業者)と受け取る側(着荷主事業者)という考え方があり、物流業界においては双方協力のもと、持続的な物流体制構築に向けて取り組むことが求められています。近年、発荷主事業者による物流効率化に向けた取り組みは活発になる一方、着荷主事業者による改善活動はなかなか進んでいないのが現状です。

そこで本コラムでは、着荷主事業者による改善活動が進まない要因について業界構造の視点からお伝えします。

着荷主事業者とは?

着荷主事業者とは、物流において荷物を受け取る側の企業のことを指し、企業が発荷主、着荷主のどちらに該当するかは状況によって異なります。

例えば製造業A社が部品をサプライヤーから購入し、部品をA社の工場に届けてもらう場合、A社は着荷主になります。A社が卸売業B社に製品を販売し、B社の倉庫に製品を発送する場合、A社は発荷主になります。

現在の課題:物流における契約構造

発荷主事業者と比較して着荷主事業者側の物流効率化が進みにくい理由のひとつに、物流における契約構造が挙げられます。

下図は発荷主と着荷主のよくある関係性を図示したものです。登場人物は発荷主事業者である製造業A社、着荷主事業者でありA社の製品を購入している卸売業B社、A社と運送契約を結んでA社の工場からB社の倉庫に製品を届ける運送事業者C社の3社とします。

着荷主での納品サービス標準化に向けて荷主企業に求められるアクションとは
出所:国土交通省「貨物運送事業の課題(荷待ち・附帯作業等)における相関図」より船井総研ロジ作成

運送事業者C社と直接運送契約を結んでいるA社は、ドライバーの拘束時間に法的責任を問われる可能性があるため、自社工場でのドライバーの労働環境改善に取り組む明確な動機があります。例えば自社工場でドライバーを長時間待機させ、改善がない場合、A社は行政処分の対象となる可能性があります。

一方、A社から製品を購入したB社は運送事業者と直接の契約関係がなく運送事業者C社のドライバー拘束時間に法的には責任を問われないため、B社の倉庫でドライバーの環境を改善する意識や動機が生まれにくいという構造があります。

さいごに

本コラムでは、着荷主事業者の物流効率化が進んでいない現状についてお伝えしました。物流効率化は、初荷主事業者・着荷主事業者の双方の協力によって初めて実現可能です。今後も相互理解を深め、持続可能な物流体制の構築に向けた取り組みを進めていきましょう。

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朝比奈 実央

船井総研ロジ株式会社
ロジスティクスコンサルティング部

小売業や卸売業、製造業(自動車、化学品、機械など)といった幅広い分野におけるコンサルティングに従事。特に物流コスト適正化や現場改善、物流リスク評価などを得意としている。

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