運送会社が荷主企業を選ぶ時代がやってきた

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亀田 剛

船井総研ロジ株式会社 DXL推進部 
部長 エグゼクティブコンサルタント

今年も早いもので、一年の締めくくりの時期になりました。

皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今回は、「物流クライシス」が叫ばれる中で、荷主企業もトラック運送事業者が現状抱えている課題と向き合い、安定的な輸配送業務を持続的な基盤とするための取り組みが必要となってきています。

まずは輸配送での課題とその原因をあげてみます。

(1)物流業界では昨今人手不足が深刻化している

今後、現状の輸配送サービス水準を維持することが困難な状況になってきています。

繁忙期の車両が手配できない、代替車両が簡単にはみつからない、増車するのに時間がかかるといったことが、おこっていると相談を受けることが多くなってきています。

その主な原因は、トラック運転手の不足が起因しています。

「自動車運転の職業」の有効求人倍率は、全職業の平均を大きく上回る傾向が続いているので、労働力不足が深刻化しています。

労働力不足になったひとつ原因としては、多くの荷主企業が推進してきた物流施策が、拠点を集約して輸送距離を伸ばしていくというものでした。

しかし、この施策は、トラックドライバーを長時間拘束することになり、結果としてドライバー職が敬遠されることのひとつにもなっていました。

(2)非効率な商習慣は、長時間労働の原因の根底になっている

運ぶモノが増えても人手が足りない中で、実はあまりにも非効率な商習慣が厳しい配送を助長しています。

非効率な商習慣の例としては、荷待ち時間が典型例と言われています。

トラック運転手の仕事は、運送だけではなく、荷物の積み下ろしや待機時間が含まれています。

ただ、実際に荷主からもらう運賃は、それらを合算した「ドンブリ勘定」でやりとりをしています。

この商習慣が長時間労働の根底にあると言われています。

この長時間労働は看過することができない状況になってきています。

長時間労働をおこなっているトラック運送事業者は、採用・定着に苦戦して、定着率も低い状態に陥ります。

また、コンプライアンスの観点からも問題となります。

このような状態を放置しておくと、企業活動の基盤となる輸配送の役割が安定的に継続することができなくなります。

このような状態は、トラック運送事業者だけの取り組みだけでは解決できるものではありません。

今や荷主企業は、トラック運送事業者に耳を傾けながら、トラック運送事業者の取り組みを理解して協力しなければなりません。

では、荷主企業として、今後どのような取り組みをおこなうべきか

(1)荷主企業はトラック運送事業者の目線で働き方改革に協力する必要があります

まずは荷主企業の意識改革がもっと進まなければなりません。

荷主企業は、トラック運送事業者の抱えている課題意識を共有した上で、パートナーシップを築いていく必要があります。

その結果、荷主企業としてもトラック運転手の労働条件改善までにも積極的に関与・協力するといった役割を果たす必要があると考えています。

参考文献(トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン・全日本トラック協会)また、荷主企業は、物流のスペシャリストやプロバイダーに相談して、今後は既存ビジネスの枠にとらわれず、まずは異業種も含めた他社と、物流に関する情報交換をする場を設けるべきでしょう。

(2)荷主企業は、価格よりもトラック運送事業者が提供している物流サービスの「価値」を重視するべきだと考えています。

トラック運送事業者が提供しているサービスのメリットは、リードタイム短縮や多頻度化の対応など船舶や鉄道と比較して輸送スピードが速いことです。

このようなメリットを享受している荷主企業が、安定的な輸配送計画を実施するにはトラック運送事業者との付き合い方を見直す必要があります。

たとえば、輸配送業務を一括する元請会社と契約している価値を考えてみてください。

元請け会社として提案力・実運送会社との調整力や管理力、経営安定度、配送ネットワークを駆使した効率的な輸配送の実効など総合的な価値を判断して契約をすることが妥当だと考えています。

また、実運送会社のオペレーション力については荷主企業にとって重要な価値を提供しています。

実運送会社のオペレーションでは、時間指定内の配達完了率の高さ、積み込み時における検品・仕分け作業の協力体制、納品時の棚入れなどの付帯業務があります。

荷主企業は、トラック運送事業者が提供しているサービス内容を把握することで、享受しているサービスの価値についても把握するべきです。

トラック運送事業者は、継続的な運送サービスの価値提供のために、働き方改革の実現に向けた取 り組みをおこない生き残りと発展をかけています。

荷主企業は、トラック運送事業を重要なパートナーであるという認識を持って、トラック運送事業者の目線に立って、働き方改革に協力する。

そして、トラック運送事業の提供しているサービスの価値を理解するべきでしょう。

トラック運送事業者は、このような協力と価値について理解してくれる荷主企業を選んでいく時代がやってくると思っています。

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亀田 剛

船井総研ロジ株式会社 DXL推進部 
部長 エグゼクティブコンサルタント

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