AI活用で物流倉庫現場の未来は変わる?
近年、人工知能(以下:AI)やロボット技術での商業化が活況となっていますが、政府は物流における無人化を2030年に実現すると発表しています。
配送業務や倉庫内での作業の“完全無人化”を目指して各企業が開発に力を注いでいます。
開発技術は日々進化しており、様々な場面で活用することが可能な為、物流現場での問題点(人手不足や生産性など)を解消する糸口として注目を集めています。
今回はAIやロボット技術で物流現場、特に物流倉庫に絞ってどう影響するのか考えたいと思います。
近年、ドライバー不足が叫ばれる中、物流倉庫作業員の不足も問題の一つとして取り上げられています。
倉庫内作業は、センター長や作業長などベテランに蓄積されているノウハウが生産性を左右しているといっても過言ではありません。
属人的になっている部分が多く残っている分野でもあります。
また、実際に働いてる現場の多くはパートやアルバイトや派遣スタッフであり、人の募集や人の質の確保が極めて困難な状態となっています。
倉庫内作業とは出荷指示に基づいて、多数の作業者が指示書を手に倉庫内を歩き回り、商品を棚から見つけてピックアップする作業(以下ピッキング)があります。
このような作業についてはベテランの長年の経験や勘を頼りに、従業員にまかせっきりで作業されている物流会社も多いのではないでしょうか。
人手不足が叫ばれている以上、新人のパートアルバイトでも経験者同様に作業ができる仕組みが望まれます。
倉庫内のレイアウトや動線、出荷作業指示などにAIを生かせる場面が多く考えられるのではないでしょうか。
実際にAIを導入し、作業時間がどれだけ短縮できるのかを実験した物流倉庫があります。
過去のピッキング指示データとピッキング実績データをAIに入力し、作業時刻と特定棚の混雑の相互関係を分析し最適なピッキング方法を導きだすものです。
倉庫作業では、特定の棚が混雑すると一度に作業員一人しか 作業ができなくなります。
次の作業員に待ち時間が発生して、作業効率が悪くなります。
AIから導きだされたデータにより、同じ時間に同じ棚に行く作業員がでないように、作業員を分散させ作業順序の最適化を反映させた指示書を発行することが可能となるのです。
だれが、いつ、どこで、どんな作業をどのぐらい行っているかということを、コンピューターに学習させたのです。
これらのデータに基づき、コンピューターがピッキングのスピードが上がる手段を予測し、その後の結果を比較することで効果が発揮されるのです。
その結果、ベテラン作業員と同じレベルの指示をAIで出すことが可能となり、倉庫内作業の特定時間と特定場所における混雑を解消することに成功したのです。
このように、AIとは今まで人間しかできないと思われていたことも代替してくれるようになってきています。
それまでは、人間が考え時間をかけて必要な作業を行ってきたことでした。
今後はこれらの作業はAIが代わって自動的に行ってくれるのです。
しかし、いくら作業を自動化できるといってもコストパフォーマンスが見合わなければ導入もされないでしょう。
AIをうまく使うためには、AIがうまく動くように設計する必要があります。
これはAIではなく人間が仕事をマニュアル化して文章に落とし込まないといけません。
あくまでもAIは、人が行っている仕事のなかの、特定の作業を人よりも効率的に行うことで、人の仕事を助けるためのものなのです。
どの企業でも業界でも省人化に向けたAI対策が進んでいくことは必然です。
物流現場で働く人が消えるのも、そう遠くはない未来かもしれません。
今後物流現場で働く人の役割は、AIロボットの管理やエラーが出たときの対応など、今の物流現場での働き方とは大きく違った仕事内容になることでしょう。
「この現場の、この作業は自動化しても問題ないよね?」というのを見つけ出すことが大事です。
AIを正しく作動させるためには、データから学ばせる必要があり、そのデータを用意するのは人間なのです。
AIを効果的に活用するために、いかに人間がデータを準備するか。
その観点で言えば、AIは当分人間の助けが必要だし、データを持っている組織ほどAI時代には強みを発揮できると考えられます。
AIを使う側に回るか、AIに使われたり仕事を奪われたりする立場にされるのか。
どちらになれるかは、マニュアル化能力や教育する能力、さらには現状を疑い変えていく能力が必要になるでしょう。
今一度、自身の働き方についても見直していきたいですね。