荷主が物流事業者からよく聞かれること-“特殊作業はありますか?”
物流事業者が荷主の物流業務を受託し稼動するまでに、大きく分類すると以下のようなステップで進めていきます。
1.業務内容のヒアリング
物流事業者が受託する業務範囲(輸送、保管、構内作業、流通加工等)を確認します。
2.業務要件の設計
業務内容のヒアリングをもとに、輸送体制(路線、区域、共同配送等)、倉庫立地、マテハン導入、システム連携、必要人員の予測などの業務設計等を行います。
3.見積もり作成
物流業務受託による発生費用算出、荷主へ見積もり金額の提示1~3の確認を荷主と物流事業者で行い、最終的に合意した業務要件と見積もり金額をもって、業務開始となります。
「1.業務内容ヒアリング」のステップで、荷主が物流事業者からよく聞かれることは、“特殊作業はありますか?”という問いかけです。
そもそも、“特殊作業”とは具体的にどのようなことでしょうか。
物流事業者にとって、荷主から受託した貨物が倉庫へ入庫され、保管。出荷指示に応じてピッキングし出荷。
輸送手配し、車上受け・車上渡し。
この流れはごく一般的な物流業務の流れです。
それと比較して、“特殊作業”とは、物流作業を行うにあたり専用の荷役機器が必要であったり、有資格者でなければ作業ができなかったり、貨物に適した梱包作業が必要であったりといった、専門的な資格や経験が必要になる作業かつ、通常の物流業務料金とは別に特別料金が発生する可能性が高い業務内容のことを指します。
しかし、荷主からすると、「何が特殊なの?」「これって、どこの物流事業者でも対応してくれるのでは?」「“特殊作業”に分類されるような作業も、今までは無償で対応してくれていた」といった意見があるかと思います。
荷主と物流事業者の“特殊”の基準がそもそも異なっているのです。
荷主としては物流事業者へ依頼をすれば当然のように対応してくれると思われているかもしれません。
それが、物流事業者が変わることで、それは“特殊作業”と判断され、追加料金の発生や対応不可となる可能性もあります。
また、既存の物流事業者が対応している場合でも、物流事業者における人手不足、作業者の高齢化により今後も継続して同じサービスを提供できる補償はありません。
荷主が物流事業者へ委託している物流業務が“特殊”なのか“一般的”なのか、改めて見直す必要があります。
ただし、荷主目線では“特殊”と“一般的”の違いに気づきにくい点もあります。
“特殊作業”の例として、納品先の倉庫内に棚入れ、かつ、すでに倉庫内に保管されている貨物を棚の手前へ移動し、新しく納品された貨物を棚の奥に配置させ、先入れ先出しができるよう棚入れをするといった作業です。
一見簡単な作業のように思われますが、指定場所への納品のみであれば5分で済むことが、棚入れ作業を行うことで作業が20分以上かかると、次の納品時間に影響を及ぼし、一日の納品件数が限られ、配送効率が落ちてしまいます。
これは限られた時間で効率よく配送する物流事業者にとっては痛手です。
また、棚入れをする際、ロット、管理番号、貨物に貼付されているラベル等々、どの情報をもとに棚の奥、もしくは手前へ移動させるかという点も事前に確認をし、いつもと異なるドライバーが納品へ行く際にも対応できるよう引き継がなければなりません。
“特殊作業”としてよくあり得る事例をご紹介しましたが、“特殊作業”における他社の対応事例については、6/20開催のFunai物流オープンカレッジ「物流子会社と3PLを考察!この時代に頼れる物流パートナーは物流子会社?3PL?」にて、これまであらゆる荷主の物流業務を受託してきた、国内トップクラスの大手3PL事業者を特別講師として登壇いただきますので、そちらで、これまでの取り組み他社事例についてぜひ聴講してみてはいかがでしょうか 。